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» 2007年07月20日 12時00分 UPDATE

キーワードでわかるシステム開発の流れ:第3回 データセンターを上手に使うとこんなにお得

今回は、システムをデータセンターに預ける際に話題となるキーワードに触れます

[高田淳志,株式会社オープントーン]

前回までのおさらいと今回の内容

 老舗和菓子製造・販売A社で初めてのインターネットビジネス立ち上げの命を受けた青木室長 。インターネットビジネスの立ち上げ、ましてやITシステムの立ち上げなんて初めての青木室長でしたが、部下でソフトウェア開発経験のある赤井君の説明を通して、

  • 「システム化する」とはどういうことか
  • システム化に向けて準備すること(もの)は何か

ということを、何となく理解したのでした。

 今回から数回にわたり、前回までの話に引き続き、

  1. 機器はすべて自前で調達しなければならないのか
  2. ソフトウェア(システム)はすべて1から開発しなければならないのかというテーマについて解説していきます。

機器はすべて買いそろえなければならないか?

青木室長 「えーと、えーと……(手には脂汗)」

社長 「……」

青木室長 「インターネット上でビジネスを始めるに当たり、ネットワーク回線、ルータ、ロードバランサ、サーバを2〜3台購入する必要があるみたいです。あ、あと……、えーと……、ソフトウェアを購入する必要もあるみたいです」

社長 「そうか、分かった。必要なものなのだから経理に伝えておこう。ところでいくらぐらいだ?」

青木室長 「ソフトウェアの開発委託費用を除いて、1000万円ぐらいあれば十分だと思うのですが……」

社長 「最低で、1000万ーーーーーっ!!」

 システム化するのに必要なものについては、「第2回 Webサイト構築の初歩:ハードウェア構成はどうする?」の中で解説しました。一般的なシステム構成を想定した場合には、ルータやロードバランサなどのネットワーク機器、Webサーバやデータベースサーバとして利用するためのサーバ機器、さらには各種ソフトウェアなど多くのものが必要になるということでした。

 そうしたものをすべて購入するのだとしたなら、前出のやりとりの中で青木室長が社長に伝えた「1000万円」という数字は決して非現実的な金額ではありません。これからの詳細検討を通して、今回のインターネットビジネスに見合った機能や性能が確定し、最終的な機器構成、および、それに応じた費用コストが決定していくはずです。ただし、『24時間365日停止せずに動き続ける仕組み』なんてものを考えるのであれば、きっと1000万円なんてアッという間に超過してしまうことでしょう。システムに求める願い(要求)が多ければ多いほど、当然にコストは上がっていくのです。

ALT コストは要求に応じて

「買う」のではなく、「借りる」という選択肢

青木室長 「(かくかく、しかじか……)というわけで、社長が驚いていたよ」

赤井君 「そうですか。普段扱うIT関連の商品といえば、社員のパソコンとかOA機器とかでしょうから、急に1000万円なんていわれたら驚いてしまうのも無理ないですね」

青木室長 「1000万円分を利益として取り戻すのに、インターネットショップで何個のお菓子を売ればよいのか、私も頭が痛いよ。実際、どうなんだい? 世の中の会社は皆そんなに費用を掛けているものなのかい?」

赤井君 「そんなに珍しい金額ではないと思いますが……。あとは、サーバ業者とホスティング・サービスを契約して、レンタル・サーバを利用することにし、機器購入コストを減らす、という選択肢がありますね」

青木室長 「赤井君、いつものことで申し訳ないが、その、ホスティングとかレンタルとかの片仮名言葉を説明してくれないかね?」

赤井君 「分かりました。それでは……」

 読者の皆さんの中にも、ご自身でサーバを借りて個人でホームページやブログなどを公開している方も多いのではないでしょうか? そのような方々の多くは、わざわざ公開用の高性能なサーバ機器やネットワーク機器を購入するのではなく、次のような方法で情報を公開しているのではないかと思います。

  1. 決められたログインIDで公開サーバに接続し、自分で作成したファイル(HTMLファイル)をサーバへアップロードする
  2. タイトルや本文などを入力するためのページがサーバ業者によって用意されていて、その画面で入力&保存を行う

 サーバ業者は、複数のユーザーが同時に使用できるよう、1台のサーバの記憶領域などを(内部的に)分割して個々のユーザーに提供できるような仕組みを用意しています(例えるなら、賃貸マンションのようなものです)。このような形態で提供されているサーバまたはサービスが、一般に「ホスティング・サーバ」とか「レンタル・サーバ」などと呼ばれるものです。1台の物理的なサーバで複数ユーザーへのサービス提供が可能なため、1ユーザー当たりの利用料を安く抑えることができます。

 こうして費用的なメリットを享受できるホスティング・サービスですが、良い面ばかりではありません。例えば、サーバを共用しているほかのユーザーが非常に負荷の掛かる処理などを連続的に行っていると、ほかのユーザーが迷惑を被ってしまうことがあります。

 前述と同じ賃貸マンションに例えてみると、ある部屋へ一気に1000人の来客があったら、皆で共用している入り口も通路も大混雑でほかの住人にとって、他人事とはいえない事態を招きますよね。感覚的にはそれと同じで、限られたサーバの性能を共用しているために、誰か1人がその性能のほとんどを占有してしまうと、ほかのユーザーは残された性能分を利用するため処理が遅くなったり、不安定になることが発生し得ます。

 そのような事態を回避するサービスとして、1ユーザー専用に1サーバを提供するサービスも多く提供されていて、それらを区別するために「専用サーバ」「共用サーバ」という表現が使われます。もちろん、ユーザーとしては、「共用サーバ」より「専用サーバ」の方がうれしい気がしますよね? 利用に関してのメリットは確実なのですが、一方で、サーバ業者にとっては、1台のサーバを1ユーザーだけのために提供するわけですから、結果的に「専用サーバ」の方がコスト高になってしまいます。

ALT 共用サーバと専用サーバ

青木室長 「そういうことかぁ……。買うより断然安いのなら、検討の余地は大いにあるな」

赤井君 「初期コストに関しては、おそらく安く済みますね。ただし、専用サーバにしたとしても、欠点がないというわけではありません。専用サーバをサービスとして提供する業者は多数ありますが、よくよく内容を確認してみると細かい点でサービス・メニューが異なり、それによって、私たちが構築しようとしているシステムに制限が加わることがあります。専用だからといって、何でもかんでも好き放題に利用できるわけではないのです」

青木室長 「そんな気はするよ。何だかんだいっても、借りているわけだからな」

赤井君 「そうなんです。サーバ業者にとってみれば、サービス全体が正常に稼働するよう必要な管理は続けなければならないわけですから」

青木室長 「そうだね」

赤井君 「さらに自由度を高める形態として、ホスティングではなく、ハウジングという方法もあるんです。ハウジングというのは、簡単にいうと、サーバなど自ら購入した機器を、データセンターで預かってもらう契約です」

青木室長 「結局購入するなら得した気がしないけど、何が得なんだい?」

赤井君 「ハウジングはですね、……」

 前回まででお話ししたとおり、Webサイトの構築に必要なものはサーバ機器だけではありませんでした。ネットワーク回線も必要ですし、いざ、運用を開始すれば、インターネットを介して悪意のユーザーがサーバ乗っ取りを狙って不当な攻撃を仕掛けてくることもあるでしょう。

 赤井君が「データセンターで預かってもらう」と表現したために、青木室長はそのメリットを感じることができなかったようですが、十分なセキュリティ対策や対災害対策が取られている場所に機器を設置することができ、さらには、24時間365日体制でネットワーク監視サービスや障害時対応を行ってもらえるサービスを提供している場合もありますから、会社の一室に置くよりは望ましい姿といえます。イメージがわかないようでしたら、銀行の「貸金庫」サービスを思い浮かべていただくといいかもしれません。

ここまでのキーワード

【ホスティング・サーバ/レンタル・サーバ】 サーバ業者がデータセンター等に設置しているサーバ機をインターネット経由でユーザーへ貸し出すサービス、または、そのサービスを実現するために使用している実際のサーバのこと。サーバ業者自身が自らのサーバ機器を貸し出す場合と、そうして借りたサーバをさらに再貸し出し(再販)することも可能なため、いまや全国各地で山ほどの業者がサービスを提供している。

 

 利用の前提として個人利用/法人利用のいずれかに限っている業者といずれも可とする業者があるが、法人利用の場合は、多くの場合、個人利用より高い性能が必要となるため、性能面を基準の1つとして選定されることが多い。

 

 法人で利用する場合は、所属社員のメールアドレスの管理などの管理業務が発生するため、そのような管理業務を画面から容易に実行できるような機能の充実も、競争の激化に伴って目覚ましい。

 

【専用サーバ/共用サーバ】 1サーバを1ユーザーで占有するか、それとも複数ユーザーで共用するかを表現する用語。ただし、「専用サーバ」と表現されていても、どこまでが専用なのか、または、どこまでを専用とできるのかの定義は若干異なるようだ。

 

 例えば、インターネット上の悪意のユーザーによる不当なアクセスからサーバを守るために「ファイアウォール」という役割を果たす機器を利用することが多い。この「ファイアウォール」については、そもそも共用でしか利用することができなかったり、専用で利用することはできても、その設定手段や設定内容に制約がある場合などがある。

 

 一方、共用サーバの方は名前のとおり、複数ユーザーの共用を前提にしているため、1ユーザーが望んだとしても実現することのできないような制約が多い。

 

【インターネット・データセンター/IDC(Internet Data Center)】 各種サーバ機器を収容して利用することができるように、ネットワーク回線やネットワーク機器・セキュリティ機能・対災害機能・無停電電源装置などの各種機能を取りそろえた建物。まさしく、コンピュータを稼働・運用するための最適な環境をそろえた場所といってもよい。

 

 たいてい、有人の受付を通り、セキュリティ・キーで入室する。中に入れば、山ほどの機器を格納するラックがあり、死角ゼロといってもいいくらいに監視カメラが室内を見回している。配線は二重床の下に隠れるため整然とラックが並んでいる。ちなみに、室温はコンピュータに最適化されるため年中冷房状態で、長い時間作業をしていると人間には寒く感じられることが多い。また、何十台・何百台ものサーバ機が動いているため非常にうるさい。

 

 大切なサーバ機器はこうしてデータセンターに預けることにより、セキュリティや稼働安定性を高め、よりダウンしにくくすることが可能となる。このように、データセンターに場所だけを借りて自前の機器を設置することを「ハウジング」という。

 

【ラック】 通常の意味と同じで『棚』のこと。サーバなどコンピュータ機器用のラックは規格が決まっているため、日常生活で使用する棚ほどに、いろいろな種類の大きさがあるわけではない。

 

 データセンターへのハウジングでは、自前で購入したラックを運び込んで使うことはもちろん、貸してもらって利用することもできる。1台丸々を「ワン・ラック (1ラック) 」、半分を「ハーフ・ラック (1/2ラック)」という。また、ラックにサーバ機器を設置することを「ラック・マウントする」といい、実際にボルトで固定する。

 

 1ラック内に格納可能なサーバ台数は、サーバの大きさに依存し、ラック内の1区画(縦横19インチ、高さ44.5mm)にちょうど収まる機器の大きさを「1U(ワン・ユー)」と表現する。もし、「4U」の機器があったとしたら、高さ4台分の機器だと思えばよい。



青木室長 「なるほどね。君はうちに入社する前は、そんなことばかり考えていたのかい? 何だかすごく賢い人に思えてきたよ」

赤井君 「賢いなんていうのは、背中がかゆくなるのでやめてください。それに……」

青木室長 「それに……?」

赤井君 「大変なのはまだまだこれからです。だって、これから構築しようとしているWebサイトの中身については、まだなーんにも決めていないじゃないですか」

青木室長 「う……」

 今回は、システムをデータセンターに預ける際に話題となるキーワードに触れてみました。会社内にサーバを設置して運用するのであれば比較的気軽に決めて先に進めるのですが、データセンターに置くとなれば機器のサイズも意識しなければならないし、ホスティング・サービスを利用するのであればOSやソフトウェアなどの制限事項をあらかじめ調査しておかないと、最後の最後になって「これじゃ動かない!」ということにもなりかねません。

 幸いにも私自身は、そうしたサービスの利用側・提供側のいずれにもかかわったことがあり、確認時の要点みたいなものが何となく頭に浮かびますが、それでもパンフレットやWebサイトの情報だけでは十分に確認し切れません。

 もし読者の皆さんが、こうした選定作業などにかかわる機会があれば、ぜひ、サーバ業者の担当者を呼んで、実現したいと思うことを説明し、詳細に実現可能性の可否や、サービスにかかわる制約の有無を慎重に確認することをお勧めします。

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