どうやって業務の見直しを進めたらいいんだろう?総務部門のためのIT解説 「内部統制」編(2/2 ページ)

» 2007年08月07日 12時00分 公開
[小林秀雄,@IT]
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どのように、そしてどれだけの量の文書を作ったらいいのだろうか

 では、その文書はどのようにして作成したらいいのだろうか。また、どれだけの文書を作ったらいいのだろうか。内部統制対応にアサインされた担当社員が悩むのはそこだ。この2つは実は関連している。

 内部統制に取り組み始めた社員の気持ちは、以下のような感じだろう。

 新聞などを見ると、大量の文書を作成しなければならないそうだ。すると、チャート作成に利用されているMicrosoft Visioや表計算ソフトではパワー不足。業務の流れ図を作成して、その流れ図と業務記述およびリスクコントロールマトリックスを埋め込んで連携させるツール、つまり、内部統制にフォーカスした文書管理ツールを使った方が効率よく文書が作成できるだろう。

 実際、内部統制対応をうたった文書作成ツールに注目が集まっている。また、文書の量についても、どれくらい書いたらいいのか見当がつかないために、「業務の流れ図を細かく書こう」という考え方が支配的で、数百枚の業務の流れ図を書く企業もあった。

 しかし、金融庁から実施基準(草案)が発表された2006年11月にその考えが変わった。第1回で述べたように、実施基準は、「内部統制で大切なのは全社的な内部統制=企業の気風だ」と企業風土の重要性を鮮明に打ち出した。大切なのは全社の気風。業務の流れ図を細かく大量に書くことではない。それが現在の考え方だ。現在は、業務の流れ図は100枚程度というのが一般的なボリュームだ。

 そこには、実際的な理由もある。それは、監査法人は、細かく大量に書かれた業務の流れ図を必要としていないということだ。何しろ、監査法人にとっての業務の流れ図は、対象企業の業務を「俯瞰する」ことにある。大量に書かれても、俯瞰できないので簡素にしたものに書き直してほしいというのが監査法人の要求だ。業務の流れ図は簡素でいいのである(それは、実施基準の例で示されているレベルだ)。

 そして、業務の流れ図のボリュームが100枚程度なら、内部統制専用ツールでなくとも、Visioでも対応可能と話すコンサルタントもいる。専用ツールは利便性が高いが、文書作成そのものの負荷はそれほど大きくないので、社員は自分が使い慣れているツールを利用するという選択肢もありだ。

 業務プロセスに関する文書の3点セットのボリュームは、はじめにいわれたほどたくさん作る必要はない。また、専用ツールを使った方が文書作成を効率よく行えるだろうが、専用ツール使わなくともよい。まずは、経理や営業、物流などカネとモノの出入りを管理する部門とともに業務の流れ図を作成し、そこにどんなリスクがあるかを洗い出すことが大切だ。

「そうか。業務プロセスに関する文書って、会社にとってのリスクを発見するためのものだったんですね、社長!」

「うん、私も文書作成というのは日々の業務を書き写すようなことだとばかり考えていたよ」

「それは目的じゃなかったんですね」

「むしろ文書作成は手段だね。業務プロセスに潜んでいるリスクを発見し解消するための」

「そうすると、僕は業務プロセスの文書作成を任されているから、いってみればリスクマネージャですね」

「そうともいえるな」

「じゃ、追加手当がいただけるとか?」

「むむ。ま、そのことは、ボチボチ考えておこう」

「ガクッ」

著者紹介

小林 秀雄(こばやし ひでお)

東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌「月刊コンピュートピア」編集長を経て、現在フリー。企業と情報技術のかかわりを主要テーマに取材・執筆。著書に、「今日からできるナレッジマネジメント」「図解よくわかるエクストラネット」(ともに日刊工業新聞社)、「日本版eマーケットプレイス活用法」「IT経営の時代とSEイノベーション」(コンピュータ・エージ社)、「図解でわかるEIP入門」(共著、日本能率協会マネジメントセンター)、「早わかり 50のキーワードで学ぶ情報システム『提案営業』の実際」(日経BP社刊)など


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