組織IQ(そしきあいきゅー)情報システム用語事典

organizational IQ / 組織の知能指数

» 2007年09月23日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 企業などの競争的組織における能力尺度の1つ。内外の情報を迅速に取り入れ、組織内部で適切に情報共有して実行可能な意思決定を行う組織的能力を定量的に測定するもので、組織の情報活用能力・意思決定能力を表す指標となる。

 組織IQは、組織(企業)を内外の情報をインプットし、意思決定というアウトプットを行う“情報処理システム”と見立てており、外部から情報を受け取る仕組み、組織内に蓄積された情報や知識を共有・再利用する仕組み、情報を処理して迅速かつ適切な意思決定に転換できる仕組みが整っているかを判定するものである。

 具体的には、組織(事業単位)の各階層・職能で15〜20名程度のメンバーに、以下の5つの組織特性に関する複数の質問を行い、その回答を総合して数値化する。

1.外部情報認識(EIA:external information awareness)

組織の各部門がそれぞれに顧客や競合他社、技術動向など、必要な情報をつかんでいる

2.効果的決定構造(EDA:effective decision architecture)

意思決定が適切な人物によって行われるよう組織・権限が設計され、その意思決定者に必要な知識と能力が正しく配分されている

3.内部知識流通(IKD:internal knowledge dissemination)

組織内で各種意思決定に必要な情報・知識をきちんと共有し、組織の成員が業務知識や過去の失敗例などを学習できる環境が整っている

4.組織フォーカス(OF:organizational focus)

事業範囲や管理対象を限定することで、情報氾濫や過度に複雑な意思決定過程を排除し、組織内の情報処理が最適化されている

5.情報時代の事業網(IBN:information-age business network)

パートナー企業との協業、アウトソーシングの利用を通じて、より高い価値創造が可能であることを認識している

 なお、当初は上記の5原則だったが、協業やアウトソーシングの一般化に伴い、現在では第5原則として「継続的革新」が採用されている。

6.継続的革新(CI:continuous innovation)

事業遂行能力を継続的に改善していくために、組織内で新たなアイデアや知識を創出する仕組みやインセンティブが制度化されている

 綿密な組織IQの算出には業界全体や共通点のある企業群に関する膨大なデータが必要である(そのため、簡易法も用意されている)。その結果、得られたスコアの絶対値には意味はなく、他社との比較、あるいは自社のスコアを継続的に計測して時系列に比較するというような使い方を要する。

 組織IQを考案したのは、米スタンフォード大学ビジネススクールのヘイム・メンデルソン(Haim Mendelson)、マッキンゼー(当時)のヨハネス・ジーグラー(Johannes Ziegler)らである。彼らは、スローン財団などの出資によって1991年からスタートした、「スタンフォード・コンピュータ産業プロジェクト」(SCIP)という研究プロジェクトの一環として世界規模のアンケートや調査を実施し、その結果から実証的に「eビジネス時代の経営原則」と「組織IQ」のコンセプトを構築した。

 これらは1990年代末に書籍や論文で発表され、広く知られるようになった。メンデルソンらの著書『Survival of the smartest』(1999年)では、「同じ事業環境で活動している企業を比較すると『組織IQ』が高いほど成功していた」と結論付けている。

参考文献

▼『スマート・カンパニー − eビジネス時代の覇者の条件』 ヘイム・メンデルソン、ヨハネス・ジーグラー=著/校条浩=訳/ダイヤモンド社/2000年(「Survival of the smartest」の邦訳)

▼『組織IQ − 小さなチームから大企業まで――本当の実力度』 鈴木勘一郎=著/角川書店(角川oneテーマ21)/2001年

▼『日本経済 競争力の構想――スピード時代に挑むモジュール化戦略』 安藤晴彦、元橋一之=著/日本経済新聞社/2002年

▼『IT投資で伸びる会社、沈む会社』 平野雅章=著/日本経済新聞出版社/2007年


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ