ゆでガエルになる前に情報子会社は経営の見直しを何かがおかしいIT化の進め方(33)(1/3 ページ)

IT部門を分社化して子会社化する企業が増えている。その情報子会社をさらに他社に譲渡するケースも出てきた。このような時勢に、情報子会社は何をどうやって対処していけばよいのか。今回は、情報子会社の今後について考えてみた。

» 2007年11月14日 12時00分 公開
[公江義隆,@IT]

 ユーザー企業のIT部門が、戦略・企画機能へ特化していく昨今の情勢の中で、情報子会社の位置付けは大変重要かつ微妙になりつつある。

 IT部門を分社化した情報子会社が一般化しているのは、人員整理が容易でない日本の特徴でもあった。

 JUASなどの調査によると、現在大手企業の3分の2が、また調査全体でも2割の企業が、情報子会社を保有している。しかし、その中の2割については、すでに大手ITベンダなど他社に経営権を譲り渡している。

 つまり、情報子会社といっても一律にはとらえられない状況になった。

 その一方で、500人月以上の規模のシステム開発の半分が工期遅れ(従って予算超過)、なおかつ3割が品質に不満があるという。その背景には、システムの仕様が適切に詰め切れていないという問題がある。現行の体制に構造上の問題があるのではないだろうか。

 多くの情報子会社や親会社のIT部門では、将来の方向性について「現状どおり」としている。

 これが将来を見据えて積極的に決定した方針であり、かつ、将来へ向かって必要な施策が着々と打たれているなら問題はない。しかし、将来の展望が描き切れないまま、親会社からの業務を取りあえずこなしている、取りあえずの「現状維持」という日常なら、「現状維持」=「ジリ貧への道」ということになっている可能性が高い。

 いうまでもなく、ソフトウェアを中心とする業務(事業)のインフラは人材である。将来を見据えた人材の確保と育成のめどは立っているだろうか。企業として将来の方向が明確でなければ、人材の育成方向は定まらない。人材育成には時間がかかる故に、一刻の猶予もできない問題である。

情報子会社は経営の方向を自ら明確にすること

 情報子会社として、まず経営理念(存在の目的=何をやるための会社かをはっきりさせる)の確立、これに基づく経営方針・戦略の設定が必須である。

 多くの親会社は、例えば、子会社の外販政策などへの方針に一貫性を欠く一方で、少なくとも表面的には子会社に「自立」を求めてきた。多くの情報子会社は客観的情勢と長期的視野から見れば、いま瀬戸際に来ていると思う。自分のところが「ゆでガエル(注1)」状態でないか自問してみてほしい。

ALT (注1)一昔前にはやった例え話―カエルを低い水温の釜に入れて、釜を徐々に熱していくと、カエルは湯が煮えたぎっても外に飛び出さないで死んでしまうという話

 親会社の都合によって、その時々の方針に振り回されないよう、情報子会社は経営方向をまず自ら考えるべきなのだ(そのうえで親と調整すればよいのだ)。それが自立への道、自らを守る方法である。

 戦略や企画に特化し、経営に近い位置付けを得た親会社のIT部門は、権限の拡大を確保したかもしれないが、それに見合った真の実力を身に付けたであろうか。

 親会社の子会社に対する不満の上位に「提案力の不足」がランクされている。分野にもよろうが「提案力」=「企画力」だ。企画は親会社の機能ではなかったのか。

 親会社のIT部門に自力がなければ自己の位置付けを保持するためにも、力のない情報子会社の面倒をいつまでも見られるわけではなくなる。

 昨今の企業や役所の不祥事を見るまでもなく、問題が起これば現場の問題にして、トカゲのしっぽ切りで済まそうとするのは権力側によくある行動パターンだ。

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