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» 2007年11月29日 12時00分 UPDATE

キーワードでわかるシステム開発の流れ:第6回 RFPの書き方:要件を確実に伝える表現のコツ (1/3)

[高田淳志,株式会社オープントーン]

前回「RFPの書き方:どんなインターネットショップなのか?」では、「何を作りたいか」「何を目指すのか」など頭に思い描くシステムの完成イメージをRFPという形で文書にまとめて表現することの大切さや、およそどのようなことを書いたらよいのかという点について話を進めました。今回は、「どのように表現するか」ということについて、書き手の立場で注意すべき点について説明していきます。

どこまで詳細なRFPを作成すればよいか

 RFPを作成するのに当たり、まずはどこまで詳細に記述すべきかを明確にしておく必要があります。例えば、日曜大工仕事が得意なあなたの元に、友人から「本が増え過ぎたので机の横に置く本棚を1つ作ってくれないか。必要な費用は前もって払うから」という依頼があったとしましょう。当然、あなたはどのような本棚を望んでいるのか確認をすることでしょう。しかし、その友人は忙し過ぎて満足に説明する時間も取れず、やっとの思いで聞けた情報が次のようなものでした。後は任せた……、とばかりに。

1. 机の横に置くから天板がちょうど机の高さと同じぐらいが良い

2. 間に仕切り板を置いて3段くらいに分けて使いたい



 さて、情報不足が明らかなのが一目瞭然の極端な例になってしまいましたが、この情報だけを頼りにあなたは友人の思い描く本棚を作ることができるでしょうか? また、仕事の前に必要な金額をほぼ正確に友人に示すことができるでしょうか?

 この指示内容には、大きな問題点が2点含まれていそうです。

問題点1:決定的に情報が足りていない

 忙しい友人から苦労の末に手に入れた情報ですが、必要な情報があまりにも足りていません。

  • 材料は木材を使うのか、スチールのようなものを使うのか?
  • 木材だとしたなら、どのような塗装にするのか?
  • 仕切り板は固定式なのか、可動式なのか?
  • ひょっとして本棚の下にはキャスター(車輪)が付いていることを期待していないだろうか?

などなど。ひょっとしたら友人は目の前にある別の本棚を見ながら、その特徴を伝えることで目の前の本棚とほとんど同じ形状の本棚ができあがってくることを想像しているのかもしれません。その逆に、家具店で立派な本棚を購入するまでの一時的な代用品だから、本が並べられれば十分ぐらいに考えているのかもしれません。いずれにしても、この情報だけで友人の願望に必要十分な本棚を作ることは、奇跡や妥協なしには実現が難しいのは確かです。

問題点2:暗黙知に頼る情報が含まれている

  さまざまな分野の製品において、その仕組みや内容を共通の理解とするために「規格」と呼ばれるものが存在します。そのような共通の物差しがない状態では、「普通は……」「一般的に……」といった、各人の知識や感覚によって基準値が異なるような表現だけで関係者の共通理解を得ることは難しいことです。

 本棚の作成指示内容では、「机の高さと同じくらい」とか「3段くらいに分けて」とかの表現が取られていて、これには友人の頭の中での「一般的」な世界が織り込まれているように感じられます。おそらく、この友人は「机の高さといったらおよそ高さ○○cmくらい」「本棚の1段といったらA4サイズの本が入る高さ」のような自分世界での標準的な考えを持っていて、そのため、わざわざそれを伝えようとも思い付かなかったのでしょう。しかし、こうした無意識に起こる説明の省略こそが、書き手と読み手の大きな誤解の原因となります。また、それぞれ自分の世界の中でこれが正しいと思っているために、何かのきっかけがないとお互いの認識の違いには気付きにくいものです。

 それらの問題点を抱えた友人からの本棚の作成指示内容。料金後払い完全お任せコースだったら気軽に材料を購入しながらのんびり作っていくのですが、作り終わってから「えー、こんなに高いのならお店で買うよ」とか、「あんまり遅いからもう購入しちゃったよ」なんていわれたくない。そこで、概算費用と作成期間を見積もって伝えなければならないのですが……、皆さんならどのように伝えますか?

 作成対象がシステムやプログラムになるとさらに専門的で複雑な思考が必要になりますが、RFPに記述する際に意識する点として、「情報を十分に伝えること」と「暗黙知が招く誤解を減らす」の2点は同様に大切な要素です。システムに置き換えて考えるとどのような内容になるか、RFP作成を始めた青木室長と赤井君の2人のやりとりを眺めてみましょう。

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