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» 2008年02月15日 12時00分 公開

日本のIT再検証(3):「第2情報システム部」を設置せよ

日本のユーザー企業では、基幹システムに関する考え方に最大の問題がある。情報システム部が旧来のままの認識でトラブル回避ばかりを考えているのなら、変化は望めない。この問題を解決するには、第2情報システム部を新設すべきだ。

[角田 好志,@IT]

 日本の情報処理業界では、ユーザー企業の情報システム部門が問題だ。

 プライオリティの第一にシステムの安定稼働を掲げ、これまで動いているものを守ろうとする。情報システム部長くらいになると、次は役員のポストが狙えるので、自分の在任中は何がなんでもシステム・トラブルは避けたい。本来であれば、いかに情報化投資のコストを下げるかなどに挑戦しなければならない立場なのに、もし、トラブルが発生しても、その責任を被ってくれる大手ベンダなら、保険料と思って普通よりも高い金額を払ってしまう。

 このような状況が続き、日本のユーザー企業の情報システム部門は、廉価で有効な新しい技術を徐々に避けるようになり、世の中で一番普及している技術のみを採用し続けて、活気を失っていったのである。

 SI企業が情報処理業界の中核と考えている人が多いかもしれないが、実際にお金を出しシステムをどうするかを考えるのは、ユーザー企業の情報システム部門である。

 では、これからどうしたらいいのだろうか?

 このような安全策を続けてきた根源に当たる部分が基幹系システムである。この基幹系システムをこれからどうするのか、真剣に考えなければならない。

 メインフレームを中心とした環境を維持していくには、開発およびサポートをする要員が明らかに不足してきており、トラブル発生時の対応や機能追加などができなくなってきている。話題となっていた「2007年問題」も、時期的にはすでに経過しているにもかかわらず、定年者の再雇用などで逃げていて、あまり本格的な対応が進んでいない。

 やはり、新たな基幹系システムにおいては、Webなどインターネット技術がベースとなることは間違いない。

 インターネットの商用利用が進み、大容量トランザクションや大規模データベースを安定的に取り扱えることは実証されたわけだから、これをイントラネットとして使えばシステム基盤となる。

 しかし、基幹系システムのリプレースの検討に当たって、このインターネット技術を初めから論外とすることが多いようだ。提案する側のSIベンダも新技術に疎い人が多く、レガシー・マイグレーションという言葉も、最近はあまり聞かなくなった。

これまでの組織を変えるための新情報システム部

 ここで提案したいのは、「第2情報システム部」の新設である。

 これまでの基幹系システムを保守維持していく従来の情報システム部のほかに、はっきりとした別の組織を作るべきだ。場合によっては所管役員も変えた方がよい。CIOが十分機能していない現在では、この「第2情報システム部」の担当は、システム投資削減を狙うためにCFOにするとか、技術に精通しているCTOを用意するなどが有効かもしれない。

 われわれの仕事はWebをはじめとしたインターネット技術に関するものが多いが、最近の傾向として、ユーザー側は情報システム部門ではなく、企画部門などが増えている。情報システム部門の仕事は基幹系システムに限られ、Web関連はユーザー部門というすみ分けができつつあるのかもしれない。

 これらのインターネット技術の開発を進めるためには「第2情報システム部」が必要と考える。

 当面は、これら基幹系の周辺システムの開発を行ったり、前回に触れた「新OA運動」を推進したりとなるだろうが、早速着手しなければならないのが、基幹系システムのWeb化の検討である。

 基幹系システムには、さまざまな周辺機器および駅の自動券売機や銀行のATMなどの特殊端末も多く存在する。ただ、最近はこれらの機器でも、ログデータのローカル蓄積リスクを回避するという観点から、Web化やシンクライアント化が進んできているようだ。

 これらをいつまでにどう解決するかを、しっかりとスケジューリングし着実に推進していくことだ。

 また、技術革新が速いこともあるので、固定的な内容ではなく柔軟に推進し、偏ったベンダに頼らず、いろいろな大手ベンダおよび技術力のあるベンチャー企業と話をすることを勧める。

 従来の情報システム部門のように、特定のベンダのみの技術情報で囲い込まれてしまわないようにする必要があるのだ。

 新しい流れの中で、コンピュータ利用の最前線にいるのは、ユーザー企業の情報システム部門である。何とか、ここを活性化していかないと、日本のITは中国や韓国に負けてしまい、若者に不人気の就業者数が減少する分野となってしまわないか危惧している。

著者紹介

▼著者名 角田 好志(かくた こおし)

オープンソース・ジャパン代表取締役社長 兼 PCIホールディングス取締役。

三井銀行(現三井住友銀行)にてシステム開発部や国際部などに在籍。三井銀ソフトウェアサービス(現さくら情報システム)出向時代に、黎明期のPC LAN事業やAI事業などを立ち上げ。その後、さくら銀行(現三井住友銀行)と昭和電線電纜(現昭和電線ホールディングス)、ワールドビジネスセンターとの合弁会社であるネットワークSI企業アクシオを設立し、常務取締役に就任。1997年、大塚商会の支援を受けJavaとLinuxのSI企業テンアートニ(現サイオステクノロジー)を設立し代表取締役社長に。2002年1月より代表取締役会長。2002年12月、ゼンド・オープンソースシステムズを設立し代表取締役社長に就任。2004年9月、ゼンド・オープンソースシステムズはオープンソース・ジャパンに社名変更。その後2007年7月にオープンソース・ジャパンはPCIホールディングス・グループに入り、同ホールディングス取締役を兼務して現在に至る。

著作としては、「ITマネジメントの常識を疑え!」(日経BP社)、共著として「入門NetWare」「入門NetWare 386」(ソフトバンク)がある。


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