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» 2008年03月10日 00時00分 UPDATE

激変のネット広告市場で出遅れ:おいしいロングテールは後回し、MSNのネット広告戦略

[西村賢,@IT]

 「中小規模の広告主をターゲットとするロングテールのオンライン広告市場を開拓したのはグーグルで、すばらしいモデルだと思う。しかしMSNでは、まずはプレミアムな広告主のニーズに応えるのにフォーカスする。その後、買収したaQuantiveの技術を使うことでミッドからロングテールの広告市場もカバーしていく」。3月10日に都内で会見を開いたマイクロソフト業務執行役員の福徳俊弘氏(オンラインサービス事業部 マイクロソフト・デジタル・アドバタイジング・ソリューションズ)は、同社のオンライン広告市場における今後の戦略をそう説明した。

大企業からの広告出稿比率がアップ

 2008年前期の傾向を見ると、自動車、通信、家電、飲料などの大手企業、いわゆるナショナルクライアントによる広告売り上げの比率が増大。2007年前期に全体の34%だったナショナルクライアントによる売り上げは、2008年前期に60%に伸びたほか、トップ30社に占めるナショナルクライアントの数が8社から18社に増えたという。

 新しい広告商品の開発や強化にも着手する。

 1つは動画。MSNでは、動画などを使ったリッチメディア広告の売り上げが前年比で45%増、MSNビデオ広告の売り上げは28%増と伸びている。「コンテンツのキーワードは“リッチ”だと思っている。動画配信の環境が整いつつあり、3年、4年先にはネットなのかテレビなのか分からなくなってくる」(執行役 オンラインサービス事業部 事業部長 笹本裕氏)としており、動画に力を入れていく。同社は2月5日にビデオサービスをリニューアル。画面サイズを大きくしたほか、ビデオ検索機能を強化。MSNビデオだけではなく、他社の動画サービスの検索結果も合わせて表示するようにした。これまで動画クリップの開始前に15秒入れていた広告を、3分に1回の広告露出に変更。よりユーザーに受け入れやすくしたという。また、3月12日からはユーザーによる動画投稿サービス「Soapbox」を日本でも開始。イベントとの連動企画や、作品コンテストなども行う。

msn01.jpg マイクロソフト業務執行役員 オンラインサービス事業部 マイクロソフト・デジタル・アドバタイジング・ソリューションズ 福徳俊弘氏

 「25ansウェディング」「GQ」「SWITCH」などの雑誌や地方テレビ局「CBC」とのコラボレーションでクロスメディア展開を強化。4月にリニューアルを予定しているMSNのトップページでは、ファッションイベントやミスユニバースジャパンとの連動を行うなど、既存メディアやオフラインイベントを取り込むことでメディア色を強める。こうしたコンテンツ拡充で、広告主から委託を受けて広告コンテンツを作り込む、いわゆる広告タイアップへの誘導力も強めたい考えだ。また、従来の広告主から消費者への一方通行の広告と異なり、商品紹介映像と、その映像に対するユーザーのコメントによる盛り上がり自体をエンターテイメントと考える“ブランデッド・エンターテイメント”と呼ぶジャンルも拡大していく。

 従来にない広告商品として、Windows Vistaのサイドバーガジェットを広告スペースとして使うことや、Windows Live Agentで提供している対話ロボット「まいこ」を使った広告なども検討中だ。

 まいこは2007年11月のWindows Live正式版のスタート時に発表された架空のキャラクターで、Windows Live Messengerを使ってサーバ側のロボットと対話ができるもの。発表後間もない12月時点で8万ユーザーが対話ロボットとチャットしている。一般的なチャットと比べて、対話ロボットとのやり取りは6〜7倍と長いのが特徴で、すでにWindows Live Messengerの全トラフィックの0.4%を対話ロボットとチャットするユーザーのものが占めるという。こうした予想外の流行から、会話を通じて告知を行ったり、旅行先の相談をするエージェントを作るなど、新しい広告商品の開発を検討しているという。開発キットを配布することで、パートナー各社に広告エージェントの開発を促す。

バーチカル市場、検索市場では出遅れ

 さまざまな施策を展開するMSNだが、総合ポータルサイトとしてコンテンツを充実させて広告収入を得るという“マスメディア”モデルは古い。米国ではポータルサイトがオンライン広告市場に占めるシェアは減少傾向にあるとするデータもある。

 米オンライン広告大手で、2007年7月にマイクロソフトが約7000億円で買収した米aQuantiveが2月に発表したレポートによれば、同社のオンライン広告販売全体に占めるポータルのシェアは2006年の24%から、2007年には19%に減少。代わりに、コミュニティ、エンターテイメント、健康、旅行などジャンルを特定したWebサイトの広告、いわゆるバーティカル広告市場では1年間で37%から39%にシェアが向上。検索連動広告分野も28%から31%に伸びるなど、ポータルサイトのビジネスモデルは収益面で水をあけられつつある。

 マイクロソフトが買収したaQuantiveがもつ広告配信プラットフォーム「DRIVEpm」を使い、すでにMSNでは年間数億円の収益を上げているという。今後、DRIVEpmをよりオープンしていくことで、どこまでMSNが検索連動広告やターゲティング広告の比率を上げていけるのか――。オンライン広告市場で2位のヤフーも大きく引き離すグーグルの一人勝ち状態に待ったをかけられるかどうかは、従来型広告商品の拡充よりも、今後登場するDRIVEpmの成否にかかっていると言えそうだ。

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