業務改善には計る技術とKPIも活用せよ現場主導で進める業務改善の手法(2)(1/2 ページ)

業務改善にとって可視化と並び重要なことが定量化である。これをいかに計るかを、KPI(Key Performance Indicator)を絡めながら解説する。

» 2008年06月26日 12時00分 公開
[松浦剛志,株式会社プロセス・ラボ]

 本連載第1回「業務改善は業務の可視化から始めよう」では、「業務を変革することで、品質向上、費用低減、納期短縮を実現すること」が「業務改善」であると定義しました。そのうえで、業務改善を行うためにはプロセス思考で現状を把握することが必要であり、現状把握とはありのままの業務プロセスを見ること、計ることだと理解しました。さらに、業務プロセスを見る技術として、新しい業務フローチャートを利用した手法も紹介しました。

 この見る技術に加え、今回は、KPIを利用した、計る技術について解説します。さらに、業務フローチャートとKPIを利用して業務改善のための着眼点を見つけ出す方法を紹介していきます。

KPIで業務を計る

KPIとは何か

 KPIで業務を計る技術について解説する前に、まず、KPIとは何かを考えてみましょう。

 KPIとは、「Key Performance Indicator」の略称で、「重要業績評価指標」などと訳されます。経営用語としてはかなり広く使われていますので、業務改善に関心のある読者の中には、この言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。

 KPIの定義は論者によって若干の違いがあるようですが、おおむね「経営がうまくいっているどうかを判断するための定量的な指標」、というのが共通概念になっています。

 ただ、「経営がうまくいっているかどうかを判断するための定量的な指標」といっても、従業員の欠勤率という細かな指標から、売上高前年比増加率という大きな指標まで、レベル感はさまざまです。

 このレベル感を整える切り口として、バランス・スコア・カード(BSC)の4つの視点があります。BSCでは、財務、顧客、業務プロセス、従業員の学習と成長、という4つの視点で業務の定量化を図ります。

 本連載のテーマは業務改善ですので、BSCの4つの視点のうち業務プロセスの視点に関する指標をKPIと定義して、話を進めていくことにします。

 参考までに、これら4つの視点は、

売り上げアップ(財務の視点)

お客さま満足度の向上(顧客の視点)

納期短縮を実現する業務改善の成功(業務プロセスの視点)

業務改善に対する従業員の学習時間の増加(従業員の学習と成長の視点)



というように、一般的には下位の視点の実現が、上位の視点の実現に結び付いているという関係があります。このため最上位の財務の視点をKGI(Key Goal Indicator)と呼ぶことを推奨している文献も見受けられます。

 さて、業務プロセスに関するKPIは、どのような視点から設定すべきでしょうか。業務改善を「業務を変革することで、品質向上、費用低減、納期短縮を実現すること」とするならば、業務プロセスを判断する指標、すなわちKPIもこの3つの視点から設定することになります。

 KPIの指標化のためには、業務改善の場合と同様、対象とする業務の範囲を明確にする必要があります。対象業務の範囲が広いと最終目標を達成できたかどうかを判断するKPIをとらえやすくなりますが、実際に業務改善を進めていく過程においては、対象業務を細分化し、その細分化された業務ごとにKPIをモニタリングし、改善していくことが求められます。なぜなら、最終結果だけではその業務がなぜうまくいっていないのかが分からず、プロセスを細分化して計ることで初めて、問題をとらえ、改善策を見いだすことができるからです。

 納期短縮を目指す場合を例にすれば、お客さまから注文を受け、商品を納品するまでの時間をKPIとして設定した場合、納期短縮が実現できたかどうかという結果は、一目瞭然となります。しかし、実際に納期短縮を進めていく過程では、

  • お客さまから注文を受けて在庫を確認するまで
  • 在庫を確認してからお客さまに納期を伝えるまで

というように、業務プロセスを細分化し、細分化された業務についてそれぞれKPIを設定し、モニタリングすることが必要となるのです。

 では、このように細分化された業務プロセスに対してKPIを設定するにはどうしたらよいのかを考えてみましょう。

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