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» 2008年09月07日 00時00分 UPDATE

情報マネジメント用語辞典:マトリクス組織(まとりくすそしき)

matrix organization / 行列式組織 / マトリックス組織 / マトリクス型組織

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 職能別、事業別、製品別、顧客別、地域別、時間別、プロジェクト別、ビジネスプロセス別などの異なる組織構造をミックスし、指揮命令系統を多次元的にデザインした組織のこと。

 マトリクス組織は複数の目標を同時に実現するための組織形態で、例えば「職能別」「製品別」の2軸の管理機構からなるマトリクス組織であれば、職能別組織が持つ職能ごとの専門スキルの維持・向上などのメリットと、製品別事業部組織の持つ市場適応性などのメリットを同時に達成することが狙いとなる。軸の採り方は「職能/製品」に限らず、大規模な多国籍企業の場合、3次元マトリックス組織を採る例もある。

 具体的には、製品企画や製造などに重きを置く事業部部門と流通や顧客戦略に力点を置くエリアマネージャがクロスファンクショナルに事業を推進する形、職能別ピラミッドを維持しながら製品担当としてプロダクトマネージャを置いて各機能間のコーディネートをさせる形、各職能別部門から数名ずつ選出してプロジェクトチームを編成してこれを総括するプロジェクトリーダーを置く形などが該当する。

   
事業領域別
  映像・音響事業 白物家電事業 デジタル情報事業 重電事業


欧州エリア
北米エリア
アジア・太平洋エリア
マトリクス組織の組織図イメージ(例)

 この組織形態は、1960年代にNASA(米国航空宇宙局)がアポロ計画に参画した航空宇宙産業の企業に導入を推奨したプロダクトマネージャ制に由来する。これはプロジェクトごとにマネージャを置くもので、従来型の職能別組織にプロジェクトチームが横串を刺すような形に編成された組織であった。それが恒常化したものがマトリクス組織である。

 欧米ではアンリ・ファヨール(Jule Henri Fayol)の古典的組織論以来、「命令系統の一元性」が重要視されており、日本企業はメンバー(従業員)は2人以上のマネージャ(上司)を持つ現象が見られることから「後進的」と見なされていた。これに対してスタンレー・M・デイビス(Stanley M. Davis)とポール・R・ローレンス(Paul R. Lawrence)は著書『Matrix』(1977年)で、これは「ツーボス・システム(two boss system)」を原則とするマトリクス組織であり、矛盾した組織ではないと指摘した。

 マトリクス組織は1人の従業員に対して複数のマネージャが存在する。各マネージャの指示がばらばらで矛盾したものだと組織は機能不全に陥るため、マネージャ同士のコミュニケーションや調整活動が不可欠だが、それゆえに管理のためのオーバーヘッドが大きくなりがちである。これを回避するには、ITなどを活用したオープンな指示・指導・命令の仕組みを導入したり、マネージャの序列や役割を明確化したりといった策が考えられる。

 今日では欧米企業も含めて多くの企業――特に複雑なプロセスを持つグローバル企業では、何らかの形でマトリクス型のマネジメントシステムを導入している。これはグローバルに資材を調達しながら、ローカルに市場アプローチを行うといった複雑なオペレーションを実行するため、複眼的に活動できるような構造を持つようになったものである。大規模組織の問題は、このマトリクスをいかにバランスさせるかという点にある。

 「プロジェクト組織」と「マトリクス組織」はほぼ同じ組織構造を持つが、プロジェクトチームは原則としてプロジェクト完成後に解散するため、こうした一時的に設置されるものを「プロジェクト組織」、恒常的に置かれる場合は「マトリクス組織」と使い分ける場合がある。

参考文献

▼『マトリックス経営――柔構造組織の設計と運用』 S・M・デイビス、P・R・ローレンス=著/津田達男、梅津祐良=訳/ダイヤモンド社/1980年8月(『Matrix』の邦訳)

▼『マトリックス組織――その適用と運営の実際』 カンファレンス・ボード=編/日本能率協会=訳/日本能率協会/1980年9月(『Matrix Organization of Complex Businesses』の邦訳)

▼『横断組織の設計――マトリックス組織の調整機能と効果的運用』 J・ガルブレイス=著/梅津祐良=訳/翔泳社/1980年11月(『Designing Complex Organizations』の邦訳)


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