ストラテジ策定はサービスストラテジの要ITIL V3から知るITサービス管理(4)(1/2 ページ)

今回は、サービスストラテジの中でも特に重要なサービスストラテジ策定を中心に説明する。

» 2008年11月17日 12時00分 公開
[中 寛之(アクセンチュア株式会社),@IT]

サービスストラテジ策定の重要性とは

 サービスストラテジ策定はサービスストラテジというライフサイクルの中で最も重要なプロセスです。前回の「ITIL V3でいうサービスストラテジとは何か」で触れたサービス戦略の根幹、そしてそれを支える4P(パースペクティブ<観点>・ポジション・計画<プラン>・パターン)を具体的に定めるには、以下の項目に取り組む必要があります。

マネジメントからの方向性を提示(Direction Provided By Management)

 ITサービスの提供を実際に行っているのは現場のスタッフですが、誰に対してどのようなサービスを提供し、どのように運用していくか、という方向性や大まかな仕組みを決定するのはマネジメント層の役割です。

 単にマネジメント層が方向性を提示するだけでは不十分です。現場スタッフの意見を取り入れたうえで、実行に必要な予算枠を確保し、PDCAによる継続的な改善に努めることが望まれます。

 確かな方向性を示すには、そもそも短期および中長期のサービス戦略を持つ必要があります。この戦略は事業計画やそのほかのIT戦略と相互に関係し合うものであり、スコープには技術的な観点だけはなく、機器の調達、財務、サービスのマーケティング、ソーシングまで含みます。

 サービスストラテジ策定が有効に機能しているかを判断するためには、評価指標とそのレポーティングルールも定めます。理想的なのは、自組織だけなく他組織まで含めた競合評価が定期的に実施され、それがサービスポートフォリオ、つまりどの業務サービスに対して優先的に予算を与えるかという組み合わせについて意思決定をサポートしているというレベルです。このレベルに到達するには、顧客満足を中心に考えた評価指標の測定および改善が行われ、その情報が関係者に報告される仕組みが継続的になされていることが要求されます。

ITサービスの提供対象となる市場の定義(Defining The Market)

 マネジメントの方向性を意識し、具体的にITサービスを提供する領域を特定するのがこの活動です。顧客が求める成果を積極的に理解し、どのようにすればITサービスで支援することができるのかを考え、効果的にサポートできる対象領域を選定します。

 顧客のIT資産とITサービスが事業に対してどのように関連しているかを理解するためには、サービス戦略の4Pのうちポジションに関するマトリクスで分類と可視化を行います。既存のITサービスがどこをカバーしているかが分かるだけなく、まだサポートしていない領域からITサービスによるサポートが望ましい領域も把握できます。

ALT 図1 顧客のIT資産とITサービスが事業に対してどのように関連しているかは、この図のようなポジションに関するマトリクスで分類して可視化すると分かりやすい

 ITサービスを提供する領域の特定ができたら、具体的な中身の作成に取り掛かります。重要なのは、リスクとコストの適正バランスを考慮した全体戦略に沿ってサービスが開発されているかという点です。

 マーケット分析が直接サービス戦略に影響を与え、業績ベースでのサービス定義(Outcome-Based Service Definition)を実現できるようになったとき、本連載第1回の 「ITIL V2をめぐる課題とV3の誕生」で紹介したユーティリティ(機能面)とワランティ(品質面)のバランスが取れたITサービスを提供できるようになるでしょう。

 これらITサービスは、サービスポートフォリオに組み込まれます。サービスポートフォリオとは、ITサービスの内容や利用状況、コストを一元管理したものであり、サービスパイプラインとサービスカタログで構成されています。ITサービスを設計から運用へ移行、および運用終了までの流れも含め、詳細な説明は「サービスポートフォリオ管理」で行うため、ここでは割愛します。

ALT 図2 ITサービスは、サービスポートフォリオに組み込まれる。ちなみにサービスポートフォリオは、ITサービスの内容や利用状況、コストを一元管理したもの
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