「CIOいらない」、経営者の6割強が回答JUAS、「企業IT動向調査2009」を発表

» 2009年04月09日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は4月8日、「企業IT動向調査2009」を発表した。2008年11月のアンケート回答時点では、2009年度のIT予算予測について「増加」とする企業と「減少」とする企業はともに35%だったが、昨年秋口以降の急激な景気後退を受けて、今年3月に追加調査を行ったところ、「増加」は20%、「減少」は実に55%を記録した。特に年間売上高が1000億円〜1兆円未満の企業で「10%以上の増加」を見込むのはわずか11%、50%が「10%以上の減少」と回答しており、大企業、中でも製造業が深刻な打撃を受けている状況が浮き彫りとなった。

 調査は2008年10月24日〜11月21日まで、一部上場企業を中心に、IT部門長宛に4000通、経営企画部門宛に4000通の調査票を送付。前者は864社(有効回答22%)、後者は746社(同18%)から回答を得た。

 このうち、2008年度のIT予算額について、2007年度に比べて「増加」と答えた企業が57%、「減少」は29%にとどまった。1社当たりの平均予算額も2007年度実績の21億5300万円から23億3200万円に約8%向上し、2008年はおおむね「旺盛な投資意欲に満ちた年」といえた。

写真 今年3月4日〜11日に行った追加調査では、2009年度のIT投資予算について「増加」を予測する企業は20%、「減少」を予測する企業は実に55%を記録した。

 だが、2009年度の予測については、「増加」「減少」がともに35%。「増加」と「減少」の割合を指数化した「DI値」がゼロとなり、「ITバブル後の2004年度以来の大幅な悪化」だという。さらに、その後の景気悪化を受けて今年3月4日〜11日に行った追加調査(723社のIT部門長当てにメールで追加調査を依頼、270社が有効回答)では、「増加」を予測する企業は20%、「減少」を予測する企業は実に55%を記録。追加調査前、「1社当たりの平均予算額」は2008年度計画の23億3200万円から23億200万円と、約1.3%の減少を示していたが、こちらもよりいっそう落ち込むと見られている。

 なお、「09年度のIT予算編成に当たって苦労した点」についてのインタビュー調査では、「生き残り施策への優先的な投資」「年度内での効果刈り取り」「不要不急の開発案件の中止・延期・規模縮小」「IT予算の聖域なしでの見直し・削減」といった声が挙がった。「09年度のIT予算で継続したもの」については「サーバ集約などのコスト削減に効果がある案件」「緊急性の高い老朽化施策」「コンプライアンス系」といった意見が目立ち、余裕がない状況の中、社内調整に奮戦しているIT部門長の姿が浮き彫りになった。

写真 コスト削減と、短期間での投資対効果の獲得が迫られる中、サーバ仮想化をはじめとするコスト削減施策が多くの企業の関心事となっている

 一方、「IT部門がIT投資で解決したい中期的な経営課題」としては、「業務プロセスの改革」が59%、「経営トップによる迅速な業績把握・情報把握(リアルタイム経営)」が44%、「業務透明性の確保」が44%という結果となった。

 こうした中、「IT投資評価を実施している」企業も大幅に増え、「事前評価を実施している」企業は75%と前年度より10ポイント増加。「事後評価を実施している」企業も70%を記録し、厳しい経営環境でIT投資も削減傾向が続く中、より厳しい目でITの投資対効果を見定めようという動きがうかがえた。

CIOの認知度の低さが明白に

 IT投資評価がシステム開発の品質向上に影響を与えていることも分かった。「500人月以上の大規模プロジェクトにおいては、IT投資評価を実施している企業は、実施していない企業よりも総じて品質に対する満足度が高い」という。具体的には、事前評価実施で19ポイント、事後評価実施で28ポイント、実施していない企業より「品質の満足度」が高い結果となった。

写真 日本ではCIOの認知度がまだまだ低いことが分かった

 一方、「IT部門が経営層から期待されている領域」としては、「ビジネスプロセスの変革」が約8割、その期待に答えている企業は約7割という結果が出た。ただ、大企業の8割がCIOまたはIT担当役員を設置していながら「CIO」という役職を明確に定義している企業はわずか14%にとどまった。

 その理由としては「経営者がCIOを必要としていない」とする大企業が実に65%を記録。今後のCIO設置希望についても「社内に適任がいれば設置したい」が39%、「社外に適任がいれば設置したい」「外部コンサルタントなどにCIOの役を担わせたい」とする回答は極めて少数であり、CIOという役職そのもの、またIT経営におけるCIOの重要性に対する認知度の低さが浮き彫りとなった。

 JUASの専務理事 細川泰秀氏は「ベンダ、ユーザー企業ともに、IT関連コストについてはまだまだ精査の精度が足りない。例えば製造業が生産コストを精緻に分析し、投資に優先順位を付け、常に最大の効果を狙うように、IT関連コストについても、明確な指標・基準を持ち、各社が徹底的に投資評価を行うべきだ。CIOについても、その役職を通じてきちんと成果が出せる人材を今後育成していく必要がある。JUASでは今後もそうした課題を明確化し、各種研究会やプロジェクトを通じて、IT業界の課題解決とレベルアップに貢献していきたい」と話している。

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