損益分岐点図表(そんえきぶんきてんずひょう)情報システム用語事典

eak-even chart / 損益分岐図

» 2009年05月19日 00時00分 公開

 企業や事業、製品の売上高・販売数量と収益、原価の値から損益分岐点(注1)を求めるグラフのこと。企業や事業、製品の利益構造を明らかにする。

 営業量(売上高・販売数量など)の変動に応じて利益が変動する関係を、その事業や製品が持つ固定費(注2)と変動費(注3)(変動費率)の構造と関連付けて示した図である。短期的な利益管理などに用いられる。

 一般に横軸に営業量(売上高・販売数量など)、縦軸に収益と原価を置いた2次元の座標に、対角線として表される営業量線(売上高の場合は売上高線)、固定費と変動費の合成である総原価線を記入して作図する。営業量線と総原価線の交点が損益分岐点である。

損益分岐点図表のイメージ

 一般的な損益分岐点図表では上図のように、固定費線をグラフの下部に横軸と並行に描く。これは、固定費が営業量(売上高)の増減に関係なく、一定額であることを示す。縦軸の目盛が固定費額である。変動費は営業量(売上高)の増減に比例して発生するため、傾き(変動費率)を持つ線として表現する。固定費額の目盛を起点として固定費線の上に描くことで、固定費と変動費の合計額を表す線となるので、この線を「総原価線」「総費用線」という。

 他方、営業量は対角線で表わす。これは傾きが変動する総原価線に対する基準となることから、「営業量基線」「売上高基線」ともいう。

 この売上高線と総原価線の交わる点が損益分岐点である。損益分岐点が低いほど、その企業・事業・製品は利益が出やすい体質(利益構造)を持つといえる。上図から明らかなように、損益分岐点を下げるには固定費を下げる、変動費率を下げる(すなわち限界利益率を上げる)ことが求められる。

 なお、損益分岐点(売上高)にまで売上を上げるために、値引きして販売数量を増やす――という策を考える場合、値引きすると限界利益率が下がる(変動費率が上がる)ために損益分岐点が移動するので、値引いた場合の損益分岐点図表を作成して再検討する必要がある。

 損益分岐点図表を考案したのは、米国の能率技師・経営学者であるチャールズ・E・ノイッペル(Charles E. Knoeppel)とされる。1908?1909年の間、ペンシルバニア州のボイラー製造会社で工場改善に取り組んでいたノイッペルは、ヘンリー・ヘス(Henry Hess)の論文に掲載されていたクロスオーバーチャートを参考に、最初の損益分岐点図表を作り出した。これは彼の著書『Graphic Production Control』(1920年)に転載・公表され、1930年ごろにはすでに米国の多くの企業で広く利用されるようになっていたという。

(注1)損益分岐点

(注2)固定費

(注3)変動費

参考文献

▼『利益図表の展開??短期利益管理目的を中心として』 末政芳信=著/国元書房/1979年2月

▼『損益分岐点論??費用補償に関する研究〈増補改訂版〉』 国弘員人=著/中央経済社/1953年4月

▼『プロフィット・マネージメント??トップ・マネージメントの扱う利益図表』 朝川乕二=著/ダイヤモンド社/1952年9月


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