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» 2009年08月10日 12時00分 UPDATE

BABOK 2.0を読んでみよう(1):使えないシステムをなくすBABOKとは? (1/3)

本連載では、いま注目を集めている超上流アプローチであるビジネスアナリシス体系「BABOK バージョン2」を分かりやすく紹介していく

[後藤 章一 (豆蔵),@IT]

 2009年3月末に「Business Analysis Body Of Knowledge(BABOK)」のバージョン2.0が、International Institute of Business Analysis(IIBA)からリリースされました。

 本連載では、BABOKバージョン2.0の概要を紹介しながら、いま注目を集めている超上流のアプローチ、ビジネスアナリシスがどのようなものであるかを見ていきます。

“使えないシステム”を作っていませんか?

 せっかく高いお金を払って開発したシステムが、とても使いづらかったり現場の業務にマッチしなかったりで、“現場で使ってもらえない”というケースがよくあります。

 これではユーザーにとっては無駄な投資となり、もちろん大変な損失になります。システム開発した側としても、苦労した甲斐がなく残念なものです。投資されたお金や時間は2度と戻ってきませんし、顧客からの信頼が失われ、2度と発注されなくなってしまうこともあるでしょう。

 このような話はシステム開発の業界のそこかしこで耳にします。では、どうしてこのような“使えないシステム”が作られてしまうのでしょうか。

得意なことは「How」、必要なことは「Why」と「What」

 “本当に使えるシステム”を作り上げるためには、顧客の業務内容に基づいて、発生している問題や課題、ニーズといった「背景(=Why)」をしっかりと理解し、顧客から本当に必要とされる「有用な機能(=What)が何なのか?」を明らかにする必要があります。それを怠ると、「何となくほしい」機能ばかりが満載されてはいるものの、「実は使えない」というシステムができ上がってしまいます。

 システム開発者は、システムを「どのように(=How)作るか?」にかけてはプロフェッショナルです。

 しかし、理由や原因に基づいた「真に有用な機能を明確にしていく作業」については、不得手である場合がままあるものです。一方で、顧客も自分の業務にとって本当に必要なシステムが何であるかを認識しているとはいえず、本当に有用な機能を提示できないことも多いのです。

 このように、開発者と顧客の双方で本当に必要なシステムを不明確にしたまま、「えいや!」と作業を進めていくと、結局“使えないシステム”ができ上がってしまうことになります。

ALT 図1:開発者も顧客も本当に有用なシステムが見えていない

 つまり、“使えないシステム”ができ上がってしまう原因の多くは、システムの作り方にあるのではなく、「顧客の業務を分析して背景を理解し、それに基づいて本当に必要な解決策を追求することができていない点」にあるのです。

 そのような状況を解決するために、最近注目を集めている「超上流」の活動が、ビジネスアナリシスなのです。

ビジネスアナリシス(BA)=「必要なこと」を明確にする活動

 ビジネスアナリシスとは、その企業や組織が抱える問題・課題を解決し、さらに業務を良い方向へ持っていくために、その構造や思想、業務内容を理解・共有するためのさまざまな活動や技術をまとめ、総称したものです。

 一言でいってしまえば、ビジネスアナリシスとは、顧客にとって本当に価値のあるもの、必要とされていることを業務の関係者と一緒に背景から掘り起こし、明確にしていく作業のことを指します。一般的なシステム開発の流れから見ると、具体的なシステム要件定義の手前、システム企画時などに適用される活動です。

ALT 図2:ビジネスアナリシスは「必要なこと」を明確にする活動

 ビジネスアナリシスの結果、顧客にとって本当に必要な解決策はシステムの構築ではなく、業務プロセスやルール、組織構造など、業務自体の見直しであることが明らかになるかもしれません。そうと分かれば無駄なシステムを作らずに済むため、ビジネスアナリシスは顧客に大きな価値をもたらしたことになります。システム開発者にとっては、ちょっと物足りない結果になってしまいますが……。

 とはいえ、企業の背景を理解し、真の要求を把握することが“使えないシステム”を避けることにつながるのは間違いありません。

 システム品質への要求が高まり、そもそもシステム開発への投資が厳しくなっている昨今、ユーザー企業のシステム企画担当者や、システム開発企業のシステムエンジニアは、ビジネスアナリシスのスキルを向上させる必要に迫られているのです。

ビジネスアナリシスを体系立ててまとめた「BABOK」の登場

 このように、ビジネスアナリシスの重要性がより高まりつつある状況を受け、2003年にカナダのトロントで「IIBA(International Institute of Business Analysis)」という団体が設立されました。

 IIBAは、ビジネスアナリシスの重要性と有用性を世に広め、その知識を体系立てて共有していくことを目的としています。2008年12月には日本支部も設立されました。

 そのIIBAによってまとめられ、発表されているものが「BABOK(Business Analysis Body of Knowledge)」です。

 BABOKはある単一の手法を指すものではなく、世界中のビジネスアナリシスの実践者たちが培い、その有用性が確認されたさまざまな活動や技法が、体系としてまとめられたものです。

 そのBABOKの最新版であるバージョン2.0が、2009年3月末にリリースされました。ビジネスアナリシスは比較的新しい分野であり、それをまとめたBABOKもまだまだ発展途上です。今回リリースされたバージョン2.0は、1つ前のバージョンであるバージョン1.6からさまざまな点が変更され、大きく進化を遂げています。

 本連載ではこれから数回に渡り、リリースされたばかりのBABOKバージョン2.0の概要を読者の皆さまと一緒に見ていきます。その前に、BABOKの内容が記述された「BABOKガイド(A Guide to Business Analysis Body of Knowledge)」バージョン2.0の入手方法や概要について、簡単に見ていくことにします。

 現時点(2009年8月現在)では、BABOKガイドバージョン2.0の正式な日本語訳はまだリリースされておらず、IIBA日本支部によって翻訳作業が進められている状況です。そのため、本稿での訳語が後日リリースされる正式な日本語訳と異なる恐れがあります。また、本連載は筆者たちの解釈に基づいた内容となるため、BABOKの詳細な内容を正確に知りたい方は、BABOKガイドバージョン2.0を入手のうえ、ご自身で内容をご確認頂くことをお勧めします。

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