業務フローリファクタリングの具体的な実現法特集:業務フローリファクタリング(後編)(1/3 ページ)

今回は前編に引き続き、業務フローリファクタリングの具体的な方法を実例を交えて解説する。

» 2009年09月24日 12時00分 公開
[今田忠博, 菅野裕,@IT]

 前編に引き続き、業務フローリファクタリングの具体的な方法を実例を交えて解説する。

暗黙的な終了パターンとは?

 ここでは、前編の例で登場した暗黙的な終了パターンについて説明します。

暗黙的な終了(Implicit Termination)パターン

 それぞれのパスが独立して終了します。暗黙的な終了パターンでは、あるパスが終了しても並列して実行されているほかのパスは終了しません。

別名:なし

ビジネスプロセス図

ALT 図10 暗黙的な終了パターンの表現(BPMN図)

 BPMN(Business Process Modeling Notation)では終了イベントの到達結果として、Message(メッセージ)、Error(エラー)、Cancel(キャンセル)、Compensation(補償)、Link(リンク)、Terminate(終了)、Multiple(複合)の7種類があります。しかし、このうちのTerminate(終了)についてはすべてのパスを終了させる意味を持ちますので、このパターンでは使用できません。それ以外の6種類を使用することができます。

 図10ではAの後、パスが2つに分かれます。これらのパスは独立して終了され、片方のパスが終了に到達しても、もう片方のパスが途中で終了されることはありません。

実例:

 ある組織の月末処理のフローを例にとります。

ALT 図11 暗黙的な終了パターン例『月末処理』 (クリックで拡大)

 月末処理には交通費の精算と勤怠実績集計の処理があります。これらは月末になると自動でバッチ処理されます。

 どちらも独立して並列処理されます。片方の処理が終了しても、もう片方の処理を強制的に終了させることはありません。また、両方の終了を待ちあわせてから行う作業もありません。そのため、2つのフローは暗黙的に終了させています。

注意点: 終了イベントにTerminate(終了)を使わないようにしてください。Terminateはワークフロー全体が終了することを意味します(Terminateを使った場合は「明示的な終了(Explicit Termination)」パターンと呼ばれます)。

関連するパターン

・並列分岐(Parallel Split)

暗黙的な終了パターンは、並列分岐したパスを終了させるパターンです。

・明示的な終了(Explicit Termination)

パスごとに終了されるのではなく、フロー全体を終了するパターンになります。

業務フローリファクタリング例:番外編(ECサイト)

 次は少し趣向を変えて、「図を簡潔に表現する」ことにフォーカスを当ててみましょう。

 あるECサイトのフローでは、顧客からの注文を受けると、商品の出庫、商品の梱包、商品の出荷、そして決済と流れます。商品の出庫や梱包、出荷には担当の部署があり、それぞれのタスクは各部署へ指示出しと、その部署からの完了の通知を受けることで実行されます。

 このECサイトの特徴は、そのキャンセルポリシーにあります。

 ある条件に従って注文のキャンセルを許すサイトはいくつかありますが、このECサイトでは、「商品の出荷指示が出されるまではキャンセルを許可する」というポリシーにしています。実際には梱包作業にかかっているときにキャンセルされるのは少々無駄が発生するのですが、そこは顧客サービスの向上を選んだのでしょう。

ALT 図12 キャンセル可能なECサイト『リファクタリング前』 (クリックで拡大)

 業務フローは図12のようなものになりました。キャンセルポリシーを反映するための苦心の跡が見られます。

 顧客からの注文のキャンセルイベントを受ける2個所で、「遅延選択(Deferred Choice)」パターンを利用しています。最初に、出庫担当からの「出庫完了の通知」と顧客からの「注文のキャンセル」を待ち、その次には梱包担当からの「梱包完了の通知」と同じく顧客からの「注文のキャンセル」を待っています。商品の出荷指示を出すまでの間はキャンセル可能ということを表現するために、いささか複雑なフローになってしまいました。

 確かにこれでも業務的には問題のないフローです。しかし、複雑な図であると読む者に誤解を生む恐れがありますし、業務の改善を考える際にノイズとなる可能性もあります。もっと簡単に表現できないのでしょうか。

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