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» 2009年11月30日 00時00分 UPDATE

[Analysis]:日本が部署間の壁を取り払えるチャンスかも

[大津心,@IT]

 salesforce.comは、年次イベント「dreamforce '09」にて新しいコミュニケーションサービス「salesforce chatter」を発表した。chatterはFacebookとTwitterを融合させ、エンタープライズ向けにさまざまな機能を付加させたイメージに近いサービスだ。

 例えば「営業案件A」というグループを作成すると、その案件関係者はTwitterのようなつぶやき形式でコミュニケーションを取れるほか、その営業案件Aに関係する売上情報や進ちょく情報などの各種関連情報が、関係するアプリケーションから“つぶやき”として上がってくるため、その案件を進ちょくさせるうえで必要な情報を集中的に取得できる。また、部外者であっても営業案件Aに興味がある社員は、そのグループをフォローすれば、同様の情報を得ることができる。

 従来、このような情報はメールなどで受動的に受け取ることが多かったが、chatterのフォローやフィルタリングの機能を利用すれば、ほしい情報だけを能動的に受け取ることが可能になる。その点でエンタープライズ向けとしては、画期的なコミュニケーションツールだといえる。ただし、日本で普及するかというと、いくつか疑問が残る。

 そもそも、chatterの開発背景について、同社CEOのマーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏は「いまや、FacebookとTwitterはかなり浸透してきている。私もFacebook上に5000人の友人がおり、例えば『今期の広告戦略をどうすればよいか?』と疑問を投げかけると、あっという間に50件もの意見が寄せられ、非常に生産性が高い。また、私自身がFacebookとTwitter経由で見ず知らずの人が昨日観た映画のことは知っているのに、自社の社員のことを全然知らないことに気付いた。これはおかしい。社内コミュニケーションを充実・改善するべきだと感じた」と説明している。実際に、chatterはUIから機能までかなりFacebookとTwitterを意識した作りになっており、両者のユーザーであれば、違和感なしに使い始めることができるだろう。

 実際、米国ではFacebookとTwitterはかなり浸透しており、ベニオフ氏が米サンフランシスコの会場でFacebookを利用しているか聞いたところ、8割近くの来場者が手を上げていた。dreamforceのユーザー事例でも、化粧品販売などを手掛ける米AVONが、Facebook上で口コミマーケティングサイトを構築したケースが紹介されているなど、ビジネス用途でもかなり浸透してきている。その点、日本でもTwitterを利用したマーケティングは浸透し始めているが、mixiをビジネス用途への利用はまだまだという印象だ。この、「ソーシャルコミュニケーションのビジネスへの浸透度」が、chatterが日本市場で普及するかどうかの懸念材料の1点目だ。

 もう1つの懸念材料が、「事業部の壁」だ。chatterはビジネス用途であるため、各種セキュリティ機能を持っている。権限のない者が情報を見れないようにする機能もある。先ほどの例であれば、誰でも営業案件Aをフォローすれば情報を見れるようにすることも可能であるし、権限のないものは見えないようにすることも設定次第で可能だ。この機能は、逆にいえば“部外者お断り”の状況にしやすく、内輪だけのコミュニティを作りやすい環境だともいえる。

 このセキュリティ機能は、「権限のないものに不必要な情報を見せないことで、情報漏えいのリスクを下げる」というのが、本来の目的だ。しかし、日本のように縦割り意識の強い企業が導入した場合には、例え全社的にchatterを導入したとしても、実際のコミュニケーションの内容などは基本的に小さい単位でしか公開されず、chatterの機能的な魅力が半減されてしまうのではないか、と筆者は懸念している。この点は、リスクの問題でもあるので、利便性とセキュリティのバランスが非常に重要だ。一方で、chatterのようなサービスが普及すれば、事業部間の壁を崩す大きな要因になり得る可能性が高く、筆者は大いに期待している。

 セールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長は、「日本はセキュリティへの意識が高い企業が多く、“mixiやTwitterなどの基本的に万人向けに公開されたサービスはセキュリティへの懸念から会社としては取り組めない”という企業が多い。そのような企業からは、最初からエンタープライズを意識して作成したchatterは非常に歓迎されている」とコメントし、日本におけるセキュリティの重要性とchatterの可能性をアピールしていた。

 このような新しいサービスは、実際に触れないと理解できない部分も多い。同社では年明けのサービス開始後、無料のお試しサービスも検討しているという。一度chatterを試してみて、その良さが分かれば部署の壁を壊すチャンスが生まれるのではないだろうか。

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