これからは企業の動画配信もクラウドの時代へ楽天やアサヒビールが採用する動画配信サービス

» 2010年01月29日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 YouTubeやニコニコ動画など、動画コンテンツが人気だ。また、自社サイトに動画コンテンツを置いてアピールするケースも多くなってきた。しかし、自社サイトに動画コンテンツを置く場合には、コンテンツ管理や、サーバやネットワークなどのインフラ面にも配慮が必要になってくる。そんな中、SaaS形式で動画配信サービスを提供している米ブライトコーブのマーケティング担当シニアバイスプレジデント ジェフ・ワトコット(Jeff Whatcott)氏に話を聞いた。

ワトコット氏写真 米ブライトコーブ マーケティング担当シニアバイスプレジデント ジェフ・ワトコット氏

 米ブライトコーブは、2004年創業の動画配信サービス提供会社。現在、本社のあるボストンのほか、ニューヨークやロンドン、東京、北京など世界6カ国にオフィスを設置。月間30億回以上のサーバトランザクションと、1億3500万人以上のユニークユーザーを抱えるという。日本では、静岡朝日テレビや新聞社などのメディア企業だけでなく、楽天やアサヒビールなどのBtoC分野でも採用が広がり、現在40社が利用中だという。

 同社が提供する「Brightcove」は、SaaS形式の動画配信サービス。2009年11月16日には最新版となるバージョン4が発表された。ユーザーは、動画コンテンツをWebブラウザ経由でBrightcoveへアップロードするだけで、エンコーディングからプレイリスト管理、プレーヤーの作成やカスタマイズ、広告サーバ連携、レポーティングなどが行えるのが特徴だ。

 小規模配信向けの「Basic」と、中〜大規模配信向けの「Pro」の2つのバージョンを用意しており、価格はプラットフォーム利用料に加え、視聴数に応じた月額従量課金で構成される。プラットフォーム利用料はBasicの場合で年間120万円、Proが同420万円となる。

 ワトコット氏は、「Brightcoveの特徴は、視聴者が使用している回線の帯域に合わせて、最適な画質に自動的に変換して配信している点だ。通常の動画サイトだと、回線品質が悪いと動画が止まったり、ブロックノイズが出たりするが、Brightcoveでは、リアルタイムに帯域を監視して調整しているので、このような問題が発生しない。また、SaaS形式なので提供側もインフラ面を気にしないでよい点や、管理が容易になるメリットは大きいだろう」と説明した。

 最新版のバージョン4では、動画視聴解析ツール強化、ライブストリーミング対応、iPhone SDKの提供、エンコーディングなどの機能が追加された。

 動画視聴解析ツールでは、1日当たりの閲覧数や閲覧者数などだけではなく、離脱率や新規ユーザー数、地域別視聴分析なども解析可能となった。また、秒単位での視聴率も測定可能で、「前半部分だけ閲覧されている」といった傾向も解析可能だ。

 ライブストリーミング対応では、サッカーの試合や音楽ライブなどのライブ映像をBrightcoveのプレイヤでストリーミング配信が可能になった。ライブストリーミングながら、広告挿入なども可能だという。

画面イメージ iPhone SDKを利用してiPhone向けに開発したプレーヤーイメージ。この画面はプレイリストを表示しているところ
画面イメージ iPhone向けBrightcoveプレーヤーのイメージ。iPhoneが使用している帯域に合わせて自動的に画質を調整するため、途切れなどが少ないという

 iPhone SDKでは、iPhone向けのBrightcoveプレーヤーコンポーネントや、Brightcove Media API用Objective-Cライブラリなどを提供。これらを利用して開発することで、ユーザー独自にiPhone向けの動画配信サービスを開始できるとした。

 クラウドエンコーディングでは、通信環境への対応を広げた。使用帯域を200kbpsから2.6Mbpsまで拡張したほか、さまざまなフォーマットの動画エンコーディングに対応。前述のようにユーザーの視聴環境に合わせて帯域を自動的に管理するほか、同一コンテンツをストリーミングとダウンロード視聴の両方で配信することもできるようになった。

 ワトコット氏は「エンタープライズの次の波は間違いなく動画配信だ。従来から、企業側も視聴者側も動画配信に対する期待は高かったが、ネットワーク帯域の問題や動画作成コストの高さからなかなか難しかった。さまざまな環境が整ったいまこそエンタープライズ用途でも利用が広がるだろう。さらに、投資効果を高めるために、自前で提供するのではなく、Brightcoveのようなサービスを利用する企業ニーズは高いはずだ」と説明し、SaaS型動画配信サービスの将来性を熱く語った。

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