可視化とプロセス整備が仮想化を生かす必須条件──富士通特集:仮想環境はここまで管理できる(4)(1/2 ページ)

仮想化のメリットを引き出すためには、サーバだけではなく、ストレージ、ネットワークも含めたインフラ全体の仮想化が大切――富士通はこうした考え方に基づき、物理/仮想が混在したシステム環境全体の運用管理の効率化を目指した。

» 2010年02月15日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]

複雑な物理/仮想の混載環境を一元管理

 富士通では「仮想化のメリットを引き出すうえでは、システム全体の仮想化が大切」という考えに基づき、サーバだけではなく、ストレージ、ネットワークを含めた仮想化の提案を行っている。運用管理製品も、「可視化」「自動化」に焦点を当てつつ、物理/仮想が混在した環境全体を効率的に管理できる各種製品を用意している。その軸となるのが次の4製品だ。

  • 統合運用管理ツール「Systemwalker Centric Manager
  • サーバ運用支援ツール「ServerView Resource Coordinator VE
  • 業務サービス管理ツール「Systemwalker Service Quality Coordinator
  • サーバ運用自動化ツール「BMC BladeLogic Operations Manager

 以下では各製品の機能を紹介しよう。

ネットワークも含めて仮想環境を可視化

統合運用管理ツール「Systemwalker Centric Manager」

 統合運用管理製品 「Systemwalker Centric Manager」は、システム全体の構成可視化と、一元的な監視を実現するツールだ。

 物理/仮想が混在した環境になるとシステム構成が複雑化し、「システム全体の稼働状況が把握できない」「障害があった際、原因個所や影響範囲の特定に時間がかかる」という問題が生じる。「Systemwalker Centric Manager」は、監視対象ノードにエージェントをインストールすることで、ネットワーク、サーバ、アプリケーションなどシステム構成要素を認識し、構成をマップで可視化する機能を持つ。また「監視対象サーバを停止させたくない」といったニーズに応えるために、エージェントレスでの検知も可能としている(エージェントを使う場合はIPアドレスやホスト名のほか、ベンダ名やOS種別、インターフェイスの詳細情報を取得できる。エージェントレスの場合はIPアドレスとホスト名のみとなる)。

 VMware、Hyper-V、RedHat仮想化機能などの仮想化ソフトウェアに対応しており、物理/仮想の混在した環境でも、仮想サーバとその上で稼働するアプリケーションまで含めて、システム全体の構成を可視化できる。

ALT 図1 「Systemwalker Centric Manager」のコンソール画面。エージェントでシステムの各構成アイテムを検知し、物理/仮想の混在した環境でも、システム全体の構成をマップで可視化できる。ほかの運用管理ツールの画面もこのコンソール上に呼び出すことができる。画面イメージはサーバの監視画面(クリックで拡大)

 また、ネットワーク管理製品「Systemwalker Network Manager」や、性能管理製品「Systemwalker Service Quality Coordinator」などと情報連携することで、ネットワークのトラフィック情報や、物理サーバのCPU使用率、物理/仮想サーバの死活状態など、各構成アイテムの稼働状況や、各種エラーメッセージを単一の管理コンソールで監視できる。ソフトウェアやパッチの一斉配布機能や、ほかの運用管理ツールの画面を呼び出して操作できる機能もあり、システム全体を管理する中央コンソールとしての活用が可能だ。

サーバ運用支援ツール「ServerView Resource Coordinator VE

 「ServerView Resource Coordinator VE」(以下、SRCVE)は、管理対象とする物理サーバにエージェントをインストールすることで、各物理サーバとその上で動く仮想サーバの情報を収集、簡易ビューア画面で物理/仮想サーバの依存関係を可視化し、サーバ運用の効率化を支援するツールだ。操作性は、ユーザーのITスキルを問わずに簡単操作ができるよう心掛けてデザインされているという。2009年度のグッドデザイン賞を受賞している。

 VMware、Hyper-V、Red Hat仮想化機能、富士通のPCサーバ「PRIMERGY」の仮想化機能に対応しており、各仮想化ソフトウェアの専用管理ツールと連携することで、仮想サーバの起動/停止/リブートといった操作を管理画面上で行える。もちろん、仮想サーバの追加や、VMotion/ライブマイグレーションといった仮想サーバの移動を行っても自動的に検知、管理画面に反映する。

ALT 図2 「ServerView Resource Coordinator VE」のコンソール画面。物理/仮想サーバの依存関係を可視化する。枠の1つ1つが物理サーバを示し、その中にハイパーバイザーの名称と、その上で稼働するゲストOSが担当する「業務名」が表示されている。「電源ボタン」を押せば物理サーバのON/OFFが行える。「連絡先」にはサーバが故障した際に対応を依頼する情報システム部門の担当者、あるいはSIerなどの連絡先を登録できる

 また、仮想環境で最も悩ましいのは、障害があった際の原因個所の発見だ。中でもネットワークが特に難しいといわれている。その点、SRCVEは、仮想サーバとスイッチのネットワーク結線をマップで表示する機能も持つ。複雑なネットワーク構成でも、見たい部分にフォーカスして詳細表示できるため、スイッチが故障した際も、その影響範囲をビジュアル化された画面で迅速に確認できる。

ALT 図3 「ServerView Resource Coordinator VE」は仮想環境のネットワーク結線も可視化できる。これにより、何らかの障害があった際も原因となった個所をビジュアルに把握できる

 各物理サーバの死活状態、ハードウェア障害の有無を監視できるほか、複数の物理サーバで予備サーバを共有し、障害があった際、自動的に予備サーバに切り替える「N+1コールドスタンバイ」もサポートしている。業務停止を未然に防止できるよう、物理サーバの稼働状況を監視し、障害の予兆を検出すると、仮想サーバを正常な物理サーバに自動的に移動させる機能もある。

 なお、「Systemwalker Centric Manager」と「SRCVE」は、どちらかを選択するというより、両者を組み合わせて利用することが多いようだ。同社によると、「SRCVE単体で導入する企業もあるが、業務システムまで含めたシステム全体の稼働状況をSystemwalker Centric Managerで監視し、日常的なサーバの運用管理や、障害があった際の問題個所の特定には、物理/仮想サーバの依存関係が詳細に把握できるSRCVEを使うというケースが一般的だ」(富士通 第2プラットフォームソフトウェア事業部 プロジェクト課長の鈴木久智氏)という。

ユーザーへの影響を把握、サーバ運用も効率化

業務サービス品質管理ツール「Systemwalker Service Quality Coordinator

 仮想環境では、「仮想サーバが期待するパフォーマンスを発揮できず、業務が遅延してしまう」といった障害も起こり得る。これに対応するのが、業務サービス管理製品「Systemwalker Service Quality Coordinator」だ。

 各物理/仮想サーバのCPU使用率や応答速度、ネットワークのトラフィック量、ストレージのスループットなど、各構成アイテムの稼働状況を収集、さまざまな角度から分析してグラフで可視化する。前述の「Systemwalker Centric Manager」でも各構成アイテムの稼働状況を監視できるが、こちらは収集した情報を分析し、「ITシステムがエンドユーザーに提供するサービス品質にどんな影響があるか」を把握することを目的としている。

 例えば、「Systemwalker Service Quality Coordinator」で業務システムの応答速度を監視し、速度が低下した場合、その業務システムを支えている物理/仮想サーバのCPU使用率をグラフで可視化することができる。これにより、「物理サーバのCPU使用率は75%で問題ないが、その上で稼働する仮想サーバのCPU使用率が100%近い」といった具合に、レスポンスが悪化した原因をビジュアルに特定できる。

サーバ運用自動化ツール「BMC BladeLogic Operations Manager

 2009年10月にラインナップに加えた「BMC BladeLogic Operations Manager」は、サーバ構築をはじめ、ミドルウェア/アプリケーション/パッチの配布といったサーバライフサイクル全体の管理作業を効率化するツールだ。

 具体的には、OS、ミドルウェア、アプリケーションのインストール手順、設定情報などをパッケージ化してサーバ構築を自動化する機能や、物理/仮想サーバの構成情報を取得して修正パッチの適用状況を検出し、未適用サーバにそのパッチを一斉配布する機能などを持つ。

 SRCVEの連携により、「BMC BladeLogic Operations Manager」で作ったサーバのマスタイメージを、新しく追加する物理/仮想サーバにSRCVEで配布して、サーバの設定作業を効率化することもできる。

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