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» 2010年05月12日 00時00分 UPDATE

情報マネジメント用語辞典:MBO(えむびーおー)

management by objectives / 目標管理制度 / 目標による管理 / エムビーオー

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 企業が目指す方向を具体的な目標として設定し、これと整合性のある形で従業員個人やグループの目標と達成水準を規定して事後に評価することで、経営目的の達成と個人のモチベーション向上を体系的に統合化しようという経営管理手法のこと。今日では業績評価や人事考課などを目的とした人事制度の1つと看做されることが多い。

 一般にMBOは、従業員自身が業務の遂行にかかわる目標設定に参画し、その達成に関する責任の一端を担うことによって、勤労意欲が向上するという点が強調される。これはマネージャが一方的に作業内容やノルマを押し付けるのではなく、働く本人が自分のすべきこと、達成すべき水準などを考えることを通じて、仕事を自分のものとして受け入れるという心理的効果を基礎とする。目標は、できる限り達成度が計測可能な指標で設定されることが望ましい。目標の達成/未達成が明らかになれば、(自分で決めた)目標が達成できていれば嬉しく、未達成であれば悔しいという人間感情に訴え掛けることになる。これもMBOの特徴の1つである。

 理想的なMBOのプロセスは、次のようなものになろう。

  1. 期初に上司はその期の組織目標を説明するととも、部下とその職務に関する話し合いを行う。
  2. 職務内容について上司の合意が得たうえで、部下は具体的な目標と評価基準を決定する。目標と評価基準を文書化し、上司の承認を得て公式な目標とする。
  3. 部下は目標達成に向けて業務の遂行を行う。
  4. 上司は部下の業務状況や目標達成度の確認を行い、必要に応じて何らかの支援を行う。
  5. 期末に上司と部下は話し合いの場を設けて、目標の達成度を最終評価を行う。

 このプロセスにおいて重要なのは上司(管理者/評価者)と部下(実務者)の十分なコミュニケーションであり、業務の割り当てや目標の設定には“合意”と“納得”が不可欠である。原則として上司の役割は命令や細かい指示を与えることではなく、部下の判断や行動に必要な情報を提供し、助言や支援を行うとともに、従業員相互の調整などを行うことである。

 MBOのコンセプトは1950〜1960年代にかけて、ピーター・F・ドラッカー(Peter F. Drucker)、エドワード・C・シュレイ(Edward C. Schleh)、ダグラス・マグレガー(Douglas M. McGregor)、ジョージ・S・オディオーン(George S. Odiorne)らによって形成された。原点はドラッカーの著書『The Practice of Management』(1954年)に登場する「Management By Objectives and Self Control(目標と自己統制による経営)」という言葉である。これは部門管理者(事業部長など)を念頭に置いたものと考えられているが、事前の定義やルール化が困難な管理職の職務を「目標」「仕事の成果」「本人の自己統制」を通じて統合化することで、分権型経営の実現を説くものだった。

 マグレガーの『The Human Side of Enterprise』(1960年)ではY理論に基づいて、組織目標と個人欲求の結合を目指す「統合と自己統制による経営」が謳われた。シュレイの『Management by Results』(1961年)では具体的なプロセスにまで踏み込んだ「結果による経営」が提唱され、スタッフ部門を含めた目標設定が主張されている。オディオーンの『Management by Objectives』(1965年)ではそのものずばりの「目標管理」という名称で、“システム”としての体系的アプローチを論じている。オディオーンは目標の明確化によって(従来は個性などが依っていた)管理職の選抜や職責分担の問題が解決されると述べている。なお、マグレガーやオディオーンはMBOの業績評価と昇給・昇進に関する話し合いは別にすべきだとしている。

 MBOは米国では1950年代末、日本では1960年代半ばから導入が始まり、今日では広く普及している。上記のようにMBOは理論的には「全社目標の現場への落とし込み」「仕事に対する主体的な取り組み」「目標設定・評価を通じたモチベーションの向上」「個人の成長」などが強調されているが、実際には成果主義的な業績評価システムとして運用されていることが多く、ほとんどの会社で昇給・賞与・昇格などに連動している。

 MBOの問題として形骸(けいがい)化しやすい点が挙げられる。MBOの原理を忘れて機械的な適用を行うと「目標の押し付け」「目標の硬直化」「自己統制の喪失」「“目標による管理”ではなく“目標の管理”だけを行う」といった現象が発生する。MBOを本来的な理念どおりに運用するには、管理者/評価者への教育や意識付け、組織としての人間性尊重の確認といった対策を継続的に行うことが求められる。

参考文献

▼『現代の経営――事業と経営者』 ピーター・F・ドラッカー=著/現代経営研究会=訳/自由国民社/1956年5月(『The Practice of Management』の邦訳)

▼『結果のわりつけによる経営――リザルツ マネジメント』 エドワード・C・シュレイ=著/上野一郎=訳/池田書店/1963年9月(『Management by results』の邦訳)

▼『経営者の実行原理』 エドワード・C・シュレー=著/岩井主蔵=訳/増田米治=監修/日本生産性本部/1963年8月(『Successful Executive Action: A Practical Course in Getting Executive Results』の邦訳)

▼『企業の人間的側面』 ダグラス・マクレガー=著/高橋達男、黒田哲也、浜崎隼彦、横田光三、小松崎清介=訳/産業能率大学短期大学/1966年6月(『The Human Side of Enterprise』の邦訳)

▼『目標管理システム――新しいリーダーシップの体系』 ジョージ・S・オーディオーン=著/広田寿亮=訳/産業能率短期大学 出版部/1967年7月(『Management by Objectives: A System of Managerial Leadership』の邦訳)

▼『〈新版〉動機づける力――モチベーションの理論と実践』 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部=編・訳/ダイヤモンド社/2009年10月8日(『Harvard Business Review Anthology Motivational Leadership』の邦訳)


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