GDOが大規模システム刷新を決意したワケ事例に学ぶシステム刷新(1)(1/3 ページ)

ゴルフダイジェスト・オンラインは、オンラインゴルフ場予約やゴルフ用品販売を手掛ける大手サイトだ。今年で10周年を迎え、国内屈指のECサイトである同サイトだが、セキュリティ事故をきっかけにシステムの大々的な刷新を決意し、現在ERPパッケージ導入などを進行中だ。本連載では、現在進行形で進んでいる同プロジェクトを詳細に追いながら紹介していく。

» 2010年08月11日 12時00分 公開
[吉村哲樹,@IT]

 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)は、ゴルファー向け総合サイト「ゴルフダイジェスト・オンライン」の運営をはじめとした、ゴルフ用品のオンライン販売やゴルフ場の予約サービスなどを幅広く展開するベンチャー企業だ。

 ゴルフが好きな読者であれば、GDOの名を恐らく1度は耳にしたことがあるのではないだろうか? 中には、ゴルフ場の予約やゴルフ用品の購入などで、同社サイトを大いに活用している方もいるだろう。

 そのGDOが展開する事業は、大きく分けて3つある。

 1つは、新品・中古ゴルフ用品のオンライン販売を中心とした「リテールビジネス」。2つ目は、ゴルフ場のオンライン予約サービスを主とした「ゴルフ場ビジネス」。そして3つ目が、広告事業、モバイルサイトの運営、トーナメント速報や各種記事を扱う「メディアビジネス」だ。

 特にリテールビジネスとゴルフ場予約ビジネスに関しては、ゴルフ業界におけるネットビジネスの草分け的存在としてだけでなく、国内屈指のECサイト成功例として、ゴルフ業界以外にもその名は広く知れ渡っており、同サイトを見本にサイト構築している企業も多い。

 そのGDOが、今後数年間をかけて同社内の業務システムを刷新し、さらにその一環として大規模ERPパッケージを導入する予定だという。

 本稿を執筆している時点(2010年7月)ではまだプロジェクトがスタートしたばかりだが、2011年以降、新システムの機能をリリースしていく予定だ。多くの企業が同社のオンラインビジネスをお手本にしていることからも分かる通り、はたから見ている限りでは同社は実に順調にビジネスを成長させてきたように見える。

 しかし、ここに来てあえて業務システムの刷新とERPパッケージの新規導入を決意した背景には、どのような課題やニーズがあったのだろうか? そして、実際にどのような経緯を経てそのような決断に至ったのだろうか?

 本連載ではこういったことについて、プロジェクトのキーマンの方々に直接話を聞き、その内容を順次紹介していく。オンラインビジネスにかかわる方々のみならず、現在ERPパッケージの導入を検討している読者にとっても、有益な情報を提供できるはずだ。

 連載第1回となる今回は、まずGDOが業務システム刷新とERPパッケージ導入を決意するまでに至った背景を紹介する。

他社がうらやむ増収・増益の裏では課題が山積み

 では、GDOは具体的にどのようなビジネ上の課題やニーズを抱えていたのだろうか?

大日氏 GDO 上級執行役員・コーポレートユニット担当 兼 システム戦略担当 大日健氏

 同社で上級執行役員・コーポレートユニット担当 兼 システム戦略担当を務める大日健氏と、同じく同社でIT戦略室の室長を務める志賀智之氏に話を聞いた。

 大日氏によると、同社が増収・増益を続けていた間も、実は課題は山積みしていたという。

 「サイトにユーザーが訪問した際に、きめ細かいサービスが提供できていないという不満はずっとあった」(大日氏)

 話は2006年までさかのぼる。

 当時、国内屈指のECサイトを運営する企業としてすでに名をはせていたGDOだが、実は同社内では、サイトの機能面とサービスレベル面の両方で他社に追い付かれ、追い抜かれつつあることへの危機感が高まっていたという。

 「当時はまだ、ECサイトとしては当然持つべき、“当日発送”や“注文キャンセル”といった機能がきちんと実現できていなかった。また、顧客に対して商品やサービスを積極的に案内するためのツールもそろっていなかった。こうした問題を一刻も早く解決したいと、社内の誰もが考えていた」(大日氏)

 また、サイトの機能やサービス内容だけでなく、社内業務システムも当時のビジネスに明らかにマッチしなくなってきていた。2000年に創業した同社は、その後急速にビジネスを拡大していく中で、創業時に構築した業務フローと業務システムをほとんど変更することなく運用し続けていた。その結果、大部分を人手に頼った業務フローが数多く残っており、明らかに当時のビジネス規模とスピード感に付いていけない状況になっていた。

 そこで同社は2006年、こうした現状を打破するために業務システム刷新プロジェクトを立ち上げる。しかし、同プロジェクトでその後3年間をかけてさまざまな試みを重ねたものの、残念ながら当初期待していたほどの成果を上げられなかったという。「『あれもこれも』といっぺんに変えようとしたのですが、あまりにも当初の望みが高すぎて、結果としては変えられなかったのだと思います」と大日氏は説明する。

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