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» 2011年05月11日 12時00分 UPDATE

身の丈BCPのススメ(1):身の丈に合ったBCPをつくるために (1/2)

「世の中の事業継続管理論は大掛かりなものばかりで、自社ではとてもできそうにない」。そう考えるあなたは、BCPというものを誤解しているのかもしれない――事業規模の大小を問わず、今すぐ取り掛かれる“現実的なBCP”とはどんなものなのか? リスクマネジメントに豊かな知見を持つニュートン・コンサルティングの副島一也氏がBCPの本質をひも解く。

[副島 一也,ニュートン・コンサルティング、構成:@IT情報マネジメント編集部]

企業活動をめぐる状況と事業継続の必要性

 東日本大震災を機に、事業継続管理(BCM)事業継続計画(BCP)への注目が高まっている。筆者が事業継続に関するコンサルティングを生業(なりわい)としているからではなく、これが一過性の「ブーム」に終わってほしくないと強く思う。

 今回の大震災に際しては、地震および津波が根本原因であることは言うまでもない。しかし、この事がさまざまな事象につながり、多様な事業継続リスクとして現れた。

 地震と津波による企業の設備および人員への直接的な被害のほか、交通網の分断、電気、ガス、水道、通信の停止や供給不足、取引先の被害による部品供給不足などが大きな問題となった。また、これは直接的な被害に属するが、事業を支えるITシステムへのダメージが事業継続に大きな影響を与えた例も今回は多数見受けられた。

 “事業継続を脅かすきっかけ”も非常に多様だ。今回のような大震災以外の例としては、少し前に話題となった新型インフルエンザもある。自然災害や疫病の流行のように大規模なものの他には、風評被害や進出国の政情不安などもある。さらに“きっかけ”は外部から訪れるものだけとは限らない。社内要因としても、大震災直後、ある銀行で発生したような重要システム障害や、知的財産権の侵害などもあり、枚挙にいとまがない。

 こうした中、“予想できるリスク要因”はあまりにも多い。しかし教科書的な事業継続管理論としては、大掛かりな(に聞こえる)議論ばかりが目立つ。このために、BCP/BCMに対して腰が引けてしまっている企業が多いのではないか。

 本連載は、こうした心理的な障壁を取り除くために企画された。事業規模の大小を問わずに取り掛かれる“現実的なBCP”とはどういうものかを、事例とともに探っていきたいと思う。

「BCPが機能しなかった」というおかしな論理

 今回の東日本大震災を受け、「BCPは本当に機能したのか?」という議論が持ち上がっている。しかしながら、その議論は“BCPに取り組むそもそもの目的”を見失っている可能性がある。

 BCPに取り組む本来の理由・目的は「有事に適切に事業継続できる対応能力を高めること」である。そして「有事」とは「事業継続を脅かす全ての事象」だが、これを完全に予測・想定することは不可能だ。しかしながら、一定の被災想定を行う??自社にとって重要なリスクを洗い出し、リスクを予防・低減する策を実施する??わけだが、“それでもリスクが顕在化した際の行動手順や代替策を作り備える”のがBCPなのである。

 ここで気を付けたいのは、その「被災想定の精度を上げる」ことだけがBCPの要点と考えることである。しかし、それも間違っている。BCPで策定するのは「手段」に過ぎない。あくまでも「想定以外の事の方が実際は多く起きること」を認め、“それでも起きた事象”に対して対応する能力を高めることが重要なのだ。

 精度の高い優良なBCPを策定し、どんな被災であれ、BCPを手に取れば社員全員が適切に行動できる??そんな夢のようなBCPを求める気持ちは理解できる。人が判断する余地が少ない方が、楽で、責任も取らなくて済むからだ。しかしながら、BCPはどこまで行っても一つの道具に過ぎない。それを使って対応するのは人間であり、「道具を使う人間の対応能力を上げること」がBCPと言われる活動の真の目的なのである。

 そうとなれば、今回の震災対応の課題として「BCPは本当に機能したのか?」などとBCPに責任転嫁するのは間違いだと理解できよう。「対応能力を高める取り組みが不足していた」ことこそを認めるべきであろう。

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