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» 2011年09月01日 12時00分 UPDATE

スマホ時代、SIPの可能性を再考する(2):マルチメディアでの一貫性ある対応がCS向上のカギ (1/2)

“満足度向上とコスト低減という矛盾”を収益向上に昇華する芸術的業務、コンタクトセンター。そこに今求められている役割を考えると、市場のトレンドとSIPの効用がはっきりと見えてくる。

[平野 淳(日本アバイア ),@IT]

 私事ではあるが、第1回の掲載後、東京から米国・シリコンバレーに勤務地を異動したことをお伝えしたい。従来のコンタクトセンター関連業務に加え、ユニファイドコミュニケーションやデータネットワークに関わる業務も担当することになったので、今後は欧米のトレンドや事例なども紹介していきたいと考えている。

 さて、第1回ではSIPが企業の社内外コミュニケーションにおいて、「効率的なマルチメディア対応」「コスト削減」「新サービスの構築が容易」といったメリットをもたらすことを紹介した。今回はコンタクトセンターにおけるSIP活用の意義を解説したい。まずは簡単に、コンタクトセンターの意義と課題をおさらいしておこう。

コンタクトセンターの意義と課題

 欧米では、しばしば「コンタクトセンター運営は、論理的なオペレーションというよりむしろ芸術だ」(Contact Center operation is more art than science)と言われる。これはコンタクトセンターが「いかにも矛盾するかに見える課題を満たしつつ、企業が目指す目標を日々達成しながら運営されている」ことを表している。コンタクトセンターの運営や設計・構築にかかわっている人なら、この言葉が日本のコンタクトセンター業務にも当てはまると実感できるのではないだろうか。

 「いかにも矛盾するかに見える課題」とは、言うまでもなく「コストを削減しながら、顧客満足度を向上させ、売り上げの向上にも貢献する」ことを指す。これらは多くのコンタクトセンターに共通するテーマだ。コスト削減というKPIを考慮しないまま顧客満足度向上を優先させれば、コンタクトセンターは単なるコストセンターになってしまう。プロフィットセンター化を優先させて売り上げ向上に貢献したとしても、運営にコストを掛け過ぎてしまっては、やはり経営陣からコストセンターとみなされてしまう。

 コンタクトセンターの運営とは、「削減するものと向上させるものを天秤に掛けつつ、“芸術的とも思える手法やノウハウ”を生かしながら、ITイノベーションを駆使して、企業が掲げる目標を達成すること」に他ならないのだ。

顧客満足度向上の3つのポイントとITシステムの意義

 では顧客満足度向上のために重要と考えられる要素は何か? それは「VOC(Voice of Customer)を取り入れる」「迅速かつ正確に顧客が求める情報を提供する」、そして「顧客にとって都合の良いコミュニケーション手段の選択肢を与える」ことだ。

 これらはコンタクトセンターに限ったことではない。例えば店舗を訪れたときに心地良い対応を受け、製品・サービスに要望が反映されており、必要な情報をスムーズに入手でき、店員が付きっ切りで一方的に説明するようなこともなく、こちらが起こすコミュニケーションを尊重してくれるようなら、誰でもその店に対する満足度は上がる。だが、3つのポイントのうち、どれが欠けても顧客満足度に悪影響を及ぼす。

 コンタクトセンターも基本的には同じである。例えば、いかに心地良い対応をされても、必要な情報が提供されず、問い合わせや必要な手続き、やり取りが完結されなければ意味がない。かといって、1人の顧客に多くの対応時間を費やしてしまえばコストが掛かり過ぎてしまうし、顧客も必ずしもそれを喜ぶとは限らない。

 では短時間で心地良い対応と迅速・的確な情報提供を行うためにはどうすれば良いのか? 店舗への来客数にもよるが、運営や品揃えの在り方を考え、店員に十分な教育を施せば基本的にはカバーできるはずだ。だが、多数の顧客の多種多様な質問に“心地良く”、また手際よく回答しなければならないコンタクトセンターの場合、オペレータ教育だけで実現できることには限界がある。よって、システムレベルでオペレータに迅速・正確に必要な情報を提供し、可能な限り顧客からの最初の連絡――いわゆるFCR(First Contact Resolution)で、問い合わせや取引、手続きを完結できるよう、オペレータをサポートする仕組みが必要となるのだ。

マルチメディア化に伴い進化する消費者

 ただ、そうしたことを認識し、顧客対応をサポートするシステムを整備したとしても、まだ顧客満足度向上に影響を与える要素の3つ目、「顧客にとって都合の良いコミュニケーション手段の選択肢を与える」という問題が残っている。そして昨今は、これが特に重要なポイントとなっている。

 もちろん、これまでも現在も、コミュニケーション手段としてはやはり電話が主役だ。CallCentres.netという調査会社をはじめ、多くの市場調査会社でも、「消費者が必要な情報を迅速に企業から得たい時、電話を利用する傾向が高い」という統計結果を発表している。確かに、電話でリアルタイムに必要な情報を得られるのなら、電話による問い合わせは有効だ。だが問題は今後だ。果たして本当に電話のみで、年々進化している顧客ニーズに対応できるのだろうか?

 インターネットや携帯電話の普及に伴い、メールやインターネット経由の問い合わせは年々増える傾向にある。米国のある調査によると、若い世代の約43%は「インターネットを利用した企業とのやりとりを好む」という結果もある。そして近年、iPhoneやAndroidベースのスマートフォンの登場によって、消費者のコミュニケーション手段は劇的に進化している。いわゆるマルチメディア化だ。

 SkypeやMSN/Windows MessengerなどのVoIP、ビデオやインスタントメッセージといったマルチメディアを、同時に1つのパソコン端末から利用するユーザーや、スマートフォンが市場に浸透する以前の携帯電話(Featureフォン)を使ってマルチ・モード・コミュニケーションを行うようなユーザーも、以前からいた。だが、極めてまれな存在だった。

 ところが、スマートフォンは1つの端末で音声、ビデオが簡単に使えるほか、GPS経由で位置情報を取得することもできる。特に東日本大震災が発生した際、安否確認に役立ったとして、昨今急速に利用者が増えているソーシャルネットワークも手軽に利用可能となっている。ごく一部のユーザーのものだったマルチモードコミュニケーションが、誰にとっても身近で簡単なものになりつつあるのである。

 そして重要なことは、コンタクトセンターにもそうしたスマートフォンから連絡をしてくる顧客が着実に増えているということだ。彼らはオペレータと電話で話をしながら、ビデオやインスタントメッセージ、ソーシャルメディアなど、複数のメディアを同時に利用することも可能な端末を持っている。つまり、教育によって電話対応のレベルを引き上げ、迅速・的確かつ心地良い対応ができるようシステムを構築しても、3つ目のポイント「顧客が利用するコミュニケーション手段のニーズに応える」ことができなければ、販売機会損失や顧客満足度の低下を招きかねない時代になっているのだ。

 では、マルチメディアを扱うためにはどうすれば良いのか? 音声は公衆交換電話網、ビデオはビデオ専用回線、それ以外のデータはインターネットという具合に、個別開発を駆使して複数のメディアを連携させ、管理し、運用することもできるが、コスト的にも運用的にもスマートなアプローチとは言えない。

 そんな中、通信キャリア業界では、“マルチメディアを扱うべくして開発されたプロトコル”、SIPを利用するIMS(IP Multimedia Sub-system)の利用が始まっており、この流れが製造、流通など他業種のコンタクトセンターにも及びつつある。いわばテクノロジがサービスをけん引する格好で、マルチメディア対応端末の普及がコンタクトセンターの在り方に再考を促しているのである。

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