ブランド力をけん引する「サムスン・デザイン」の秘密とは?(2/2 ページ)

» 2005年09月21日 00時00分 公開
[ITmedia]
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――日本のデザインセンターでは、どのような製品がデザインされているのでしょう。

吉田氏: 代表例としては液晶テレビ、デジタルオーディオプレーヤー、携帯電話などです。日本では携帯型の小型製品のデザインを行うことが多いですね。携帯電話は数ある工業製品の中でも、デザインで選ぶ顧客が多いカテゴリーです。ユーザーアンケートを見ても、デザイン最優先で購入している人が多い。サムスンの携帯電話は欧米でベストセラーになっていますが、それを支えているのは、IDEA(Industrial Design Excellence Awards)の受賞ランキングで首位の座にあるサムスンのデザイン力です。

photo 日本でデザインされたポータブルオーディオプレーヤー「YH-820MCB」

――ここ数年で、サムスン製品のデザインはどのように変化したと自己評価していますか?

吉田氏: 2000年までは各製品を開発する事業ごとに、デザインコンセプトを独自に作っていました。しかしデザインセンターとして戦略的な活動が始まった後は、“サムスンならでは”のアイデンティティを持つようになっています。サムスン全体のデザインコンセプトを持つようになったことで、2003年以降は明確なデザインイメージが形成されました。

――デザインコンセプトは、デザインを任された各デザインセンターに一任されているのでしょうか?

吉田氏: サムスンが製造している製品をいくつかの分野に分け、各分野ごとに核となる製品をソウルのデザインセンターで作ります。このとき、世界中のデザインセンターからデザイナーが選抜され、チームに加わりデザインコンセプトを練り上げていきます。こうして完成したデザインコンセプトを元に、そのほかの製品群を開発します。

――サムスンならではのデザインとはどのようなイメージなのでしょう?

吉田氏: 欧州や日本のデザインセンターで作られたデザインでも、最終的にいくつかの候補から採用するものを決めるのはソウルの本社です。グローバル企業としての目で選びますから、そこで日本でも欧州でもない、サムスンらしいデザインが選ばれます。具体的には、シンプルでありながら、エモーショナルな感覚が残るデザインがサムスンのデザインです。

 よく、感覚的か知的かといったスケールでデザインのタイプを測りますが、サムスン製品はわりと広い範囲に分布します。サムスンは非常に多くの製品を生み出す総合エレクトロニクス企業ですから、デザインのイメージを統一するための枠は決めていますが、細かな部分では製品ごとに異なります。

――先日発表された液晶テレビも、同様のデザインコンセプトが流れているのでしょうか?

吉田氏: 新型の液晶テレビは、かなりシンプルな方向のデザインに仕上げています。シンプルなデザインは美しさを引き出しますが、シンプルだけでは“冷たさ”が面に出てしまいます。そこに情感を込めたのが新しい製品です。デザインはソウルで選抜チームが担当しましたが、そこには日本のデザインセンターからも参加しました。

photo シンプルながらも情感を込めたデザインの新型液晶テレビ「LN32R51B」

――サムスンにおいてデザイン改革が企業イメージ向上につながったのは、何故だとお考えでしょうか?

吉田氏: テクノロジーとデザインの両方がうまくかみ合っているからでしょう。サムスンでは必要な機能や製品コンセプトを絞り込んだ後、まずはデザインを先行させ、それを技術部門が現実の製品にするというプロセスで製品開発を行っていくケースが多いのですが、それが非常にうまく機能しています。技術力があるからこそ、デザイナーの意図も具現化できるのです。また、開発スピードが猛烈に速いため、時代に即したデザインを素早く市場に投入できます。

――世界中にデザインセンターがあるとのことですが、日本サムスンのデザインセンターは、その中でどのような特色を持っているのでしょう。

吉田氏: 世界中で日本の工業デザイナーほど、もの作りに精通したデザイナーはいません。もの作りを知っているが故に、実現可能なギリギリのデザインを狙える。それが特色といえます。欧米のデザイナーは日本のデザイナーほどもの作りの経験がないため、技術的、コスト的に無理なデザインを要求し、結果的に製品としての魅力が失われたり、製品開発に時間がかかりすぎてしまう側面が多い。対して韓国のデザイナーは、もの作りのインフラが日本ほど発達していないため、やはりギリギリのデザインを追えません。

――もの作りに精通していると、どのような特徴が出せるのでしょう?

吉田氏: 各国のデザインセンターは、それぞれ各地域の特徴を生かしたデザインを行っていますが、ここ日本でも日本でしかできないことがあります。例えば、高品位の仕上げを行うための金型、あるいは質感の高いメッキ処理や塗装などは、日本企業が先行しています。日本のデザイナーはこれらに多く触れてきていますし、そうした技術を持っている企業との関わりも深いですから、それらをきちんと生かしたデザインをサムスンが使えるようになるというメリットがあります。製品にプレミアム性を感じさせる要素を探し、反映していくことも我々の仕事です。

――今後の課題として、テーマにしたい要素についてうかがえますか?

吉田氏: サムスン製品は、イメージをひとつに固定化する事は狙っていません。もっと緩やかな枠の中でデザインを生み出しています。“サムスンコンセプト”がユーザーに対して押し付けになってはいけないと考えているからです。サムスンのデザインを押し通すのではなく、ゆるやかな枠の中で世界に通用するハイクオリティな製品を今後も提供し続けていきたいと思います。

photo 吉田氏の隣にあるのは、スタイリッシュなハイビジョン対応DLPリアプロTV「HL-P5085W」。リアプロTVの概念を覆したそのデザインには、各方面から高い評価を集めている
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提供:日本サムスン株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2005年12月31日