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“フィルムルック”を追求したビクター「DLA-HD750」でみる「ラスト、コーション」のつや山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.34(1/2 ページ)

» 2009年03月11日 19時25分 公開
[山本浩司,ITmedia]

 先月、自室で使用しているプロジェクターを、ソニー「VPL-VW200」からビクター「DLA-HD750」に入れ替えた。

photo 日本ビクターの「DLA-HD750」

 映画館でも使われている、昼光に近いブロードな色分布特性を持つキセノンランプを採用したVPL-VW200には、ほかのプロジェクターでは得られない、華やかで重層的な色再現能力があり、そこにほれてぼくは使い続けてきた。とくにテクニカラー風の、ゴージャスな幸福色に彩られた往年のハリウッド映画のBDなどを再生すると、唯一無二の色の魅力を発揮するのがVPL-VW200だった。

 2007年に導入したVPL-VW200、黒の黒らしさの表現やフォーカス感などに若干の不満を持つようになってはいたが、その懐の深い色に魅了され、昨年暮れの時点ではまだ使い続けるつもりだった。だが、ビクターのD-ILAプロジェクターの最新モデル「DLA-HD750」と出会い、開発エンジニアの話を聞き、何回かその画質をチェックしているうちに、どうしても自室で使ってみたくなり、VPL-VW200からの入れ替えを決心したのである。

 DLA-HD750のベースになっているのは、アイリス(絞り機構)を使わないネイティブ・コントラストで3万:1を達成した「DLA-HD100」(2007年発売)。光学系のリファインとレンズアパーチャー(絞り)を新たに加えることで、DLA-HD750はコントラスト・スペックを5万:1に向上させているが、この製品で重要なのは、輝度系の特性向上ではなく、「映画の色」への徹底したこだわりにある。

 DLA-HD750の光源には、従来通り200ワットの高圧水銀系ランプが使われている。このランプ、VPL-VW200で使われているキセノンに比べると、色分布特性にバラつきがあり、とくに赤系統の出力が低い。しかし、ビクター技術陣は、キセノンより発熱も消費電力も少ないこの汎用的な高圧水銀ランプで、なんとか映画の真実に迫ったリアルな色を出したいと考え、独自の開発手法を採ったのである。

 それが内蔵された「カラーマネージメントプロセッサー」の徹底活用。まず同社製業務用プロジェクターで使われているキセノンランプを映画の標準フィルムであるイーストマンコダックの35ミリ映画用フィルムに当て、色度図上の500ポイントでその明度・彩度・色相を完全データ化、フィルムにキセノンを当てたらどう発色するかをカラーマネージメントプロセッサーでパターン化して、本機DLA-HD750の映像モード「シネマ1」に落とし込んでいったわけである。つまり、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の「減算混合」ですべての色を表現するフィルムの色特性を、R(レッド)、B(ブルー)、G(グリーン)の「加算混合」でフルカラーをつくるビデオプロジェクターでどう再現するかを徹底的に追求したのが本機だと理解してよいだろう。

photophoto カラーマネジメントと映像モードの設定画面

 また、「シネマ1」におけるフィルム映像の解析の応用は、それだけにとどまらない。暗部と明部を寝かせ、中間調を立たせたS字を描くフィルム特有のガンマカーブを不自然な画調にならないように翻案したり、暗部に色がのらないフィルムの特性(これは画面が暗くなればなるほど色の判別能力が落ちる人間の視覚特性と共通する)に合致するように、輝度と色特性のマッチングを図っているのである。

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