ハイレゾを最も手軽に楽しめる一体型ヘッドフォン(前編)――ソニー「MDR-1ADAC」を聴く:DACもアンプも“全部入り”(2/2 ページ)
今回はハイレゾ再生がとても手軽に楽める、本体にDACとアンプを内蔵した「一体型ヘッドフォン」に注目、ソニー「MDR-1ADAC」を取り上げよう。気軽にハイレゾのリスニング環境を整えたいという方にオススメだ。
ケーブルを交換してさまざまなハイレゾ対応機器とつなげる
それでは「MDR-1ADAC」の実践的な活用方法を紹介しよう。本機の特徴として、ハイレゾ再生も含めて実に色々な使い方ができるので、それぞれ自分の聴きたい音源や使いたいシチュエーションをイメージしながら参考にしてもらえれば幸いだ。
まずは「ノートPCでハイレゾ」を聴く方法から。接続は5本の添付ケーブルのうち、microUSB/USB-Aタイプのケーブルでつなごう。Windows PCの場合はドライバーソフトが必要だが、Macでは不要だ。ソニーのハイレゾ再生用プレーヤーソフト「Hi-Res Audio Player(Win/Mac対応)」もWebから無料でダウンロードして使うことができる。
ソニーのスマートフォン「Xperia」のハイレゾ対応モデルはUSB Audio Class 2.0に対応しているので、USB経由で最大192kHz/24bitのFLAC/WAV/ALAC形式のファイルが再生できる。該当するモデルは「Xperia Z3/Z3 Compact」「Xperia Z3 Tablet Compact」「Xperia Z2/Z2 Tablet」だ。接続にはヘッドフォンに付属するmicroUSB/microUSBタイプのケーブルを使う。端子に突起が付いている側をヘッドフォンにつなごう。あとはXperiaの音設定から「USB経由のハイレゾオーディオ」にチェックを入れて、プリインストールされているWalkmanアプリでハイレゾの音源ファイルを再生するだけという簡単なステップでハイレゾが楽しめる。
なお、Android OSの最新バージョンである「Android 5.0 Lollipop」からはOSが標準でUSB Audio Classに対応するので、あとはオンキヨーのハイレゾ対応プレーヤーアプリ「HF Player」のAndroid版などを投入すれば、「NEXUS 6」等の端末との組み合わせでもハイレゾが聴けるはずだ。
ソニーのポータブルオーディオプレーヤー“ウォークマン”のハイレゾ対応機である「NW-ZX1」「NW-F880」「NW-A10」の各シリーズのオーナーであれば「MDR-1ADAC」とのハイレゾ接続が利用できる。この場合は付属のmicroUSB/WM-PORTケーブルでつなぐだけで、ウォークマンのアンプを経由せずに、ヘッドフォンで直接信号を増幅させて高品位なサウンドが楽しめる。
iPhoneに関してはmicroUSB/Lightningケーブルを利用するのだが、残念ながらiPhoneによるハイレゾ再生には対応していない。iOS7以降を搭載する端末の場合、一部のDAC内蔵ポタアンとの組み合わせでは、間に「Lightning-USBカメラアダプター」を介して、バスパワーで給電しながらハイレゾ再生ができる場合もあるが、本機ではその手も使えなかった。だが、それでも手軽にケーブル1本でプラグインして「S-Master HX」を通した高品位なデジタル再生が楽しめる魅力は大きいと思う。
「MDR-1ADAC」の音質レビュー
ハイレゾ再生の音質をXperia Z2とUSB接続して聴いてみた。ミッドレンジはクリアさと音の定位感が上がり、高域の伸びやディティールの表現力がぐんと高まる印象だ。低域は段違いに力強さを増しながら、アタックがだぶつくことなく鋭く正確なリズムを刻んでくる。徒に強調されている感じはないのだが、ロックやポップス系、ダンスミュージック系の楽曲では、特にそのメリハリがはっきりとしたベースの持ち味が活きてくるように思う。
低域の深さが増して、中高域の広がりが豊かさを増すことで、音場感はより広く立体的なステージが目の前に展開される。クラシックのピアノコンチェルトなどを聴くと、主旋律を奏でるピアノは繊細な指のタッチや鍵盤の動きまで見えてくるほど鮮度が高まる。ブラスやストリングスの高域は階調表現もきめ細かく、楽器の音色も濃厚だ。微弱音からフォルテッシモまでのコントラストをクッキリと描き分けるタイプのサウンドだが、それぞれのつながりに不自然さはなく、一体感と迫力に満ちたオーケストラの演奏が楽しめた。
本機とiPhone 5sとの組み合わせで聴いても基本的な傾向は一緒であり、ビビッドで濃厚な聴き応えのあるサウンドだ。またUSBケーブルを外して、付属のヘッドフォンケーブルをつないだ状態で聴いてみると、全体のバランスがフラットなり、少し落ち着いた音調に整う。本機の場合、USBデジタル接続時の再生周波数帯域は4Hz〜40kHzとなるが、実はイヤフォンケーブルによるアナログ接続時には4Hz〜100kHzまで拡大するので、そのぶん高域の鮮明さや情報量が高まる印象が得られるのかもしれない。デジタル接続の場合とそれぞれの違いが味わえる面白さもある。
また「MDR-1Aシリーズ」が共有する「エンフォールディングストラクチャー」機構により、イヤーパッドが少し内側に倒れ込んで耳を覆うことで、密閉感が上がり音漏れも低減される。前シリーズの「MDR-1R」と比べると特に低域のロスが減り、音像のタイトさが増したように感じられるのはこの新しい構造にも要因があるのだろう。イヤーパッドも形状や装着感に工夫を凝らして、耳への優しい肌触りを実現。長時間音楽を聴いても快適な装着感が保たれる。
デザインは「MDR-1A」と同じく、ブラックのモデルはハウジングの表側に「プロット印刷」による模様を配置して質感も高めている。本体にDACとアンプを内蔵している分だけ「MDR-1A」の約225グラムに対して、本機は約300グラムと少し重くなるが、頭部に装着して負担になる質量ではなかった。
後編ではオーディオテクニカ「ATH-DN1000USB」のレビュー、そしてアンプ一体型ヘッドフォンの最新動向をお伝えしたい(→12月5日追記:後編掲載しました)。
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