グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。
※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年4月24日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。
PCメーカー各社から「夏モデル」の発表が相次いでいる。注目は小型低価格の「ネットブック」と呼ばれるカテゴリーだ。各社の戦略とその覚悟はいかなるものだろう。
日経トレンディネットの最近の記事を並べてみると、その傾向が見えてくる。
「東芝、6万円の新ネットブック『dynabook UX』など夏パソコン発表」
「富士通がネットブックを国内投入、夏モデルはA4を強化」
「シャープがネットブック参入、手書きで文字入力できる光センサー液晶を搭載」
各社とも、ネットブックの投入が顕著になっている。しかも、驚くべきことに、それらの機種には各社のメインブランドの名前が冠されているのだ。例えば、東芝は自社のネットブックには、「NB100」という名を付けて販売していた。それが、「dynabook」ブランドを初めてネットブックに付けたのだ。富士通も海外だけで展開していたネットブックを国内市場に投入。メインブランドの「FMV-BIBLO」を付けた。シャープは約1年間沈黙を守っていた「Mebius」を投入。それが、ネットブックの形で現れるとは多くの人は予想していなかっただろう。ネットブックにメインブランドの冠を付けるということはどういうことか。
ネットブックの価格は5〜10万円と、メインブランドのノートPCとの価格差は非常に大きい。買い換えを考えていたユーザーが、「こっちでもいいか!」と、同ブランドのネットブックを選択したら、自社内のカニバリゼーション(食い合い)が発生し、安い機種のシェアが伸びてしまう。カニバリを避けるために、各社はこれまで、メインブランドの冠を付けなかったり、ネットブックの投入を見送ったりしてきたのだろう。
だが外部環境が変わった。不景気の影響で財布のひもは異常なほど固い。PCが売れない。当面売れ行きが回復する気配もない。一方でネットブック市場は伸長している。こうなったら売れているネットブックを売るしかない。そう考えたのではないだろうか。だが、そううまくいくのだろうか。
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