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気象庁の大雪予報が外れた日、ウェザーニューズはなぜ、「雨」を予報できたのか(1/2 ページ)

気象庁の大雪予報が外れ、首都圏の交通が混乱した2月6日。ウェザーニューズは「サポーター」と呼ぶ400万の一般ユーザーとともに、「雨」の予報を的中させた。

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1月14日は都内でも大雪となった

 「東京23区で、10センチの降雪の恐れあり」――気象庁は2月6日、首都圏で大雪になると予報。これを受け、JR東日本が山手線などで間引き運転を実施するなど交通は混乱した。

 だが実際の雪は予報を大きく下回る量で降りやみ、午後には雨に変わった。気象庁は1月14日の大雪の際も予報を外しており、「国民のみなさまに迷惑をかけた」と担当者が陳謝する事態に。南岸低気圧がもたらす雪予報の難しさが浮き彫りとなった。

 一方、民間の気象予報会社・ウェザーニューズは2月6日の天気を「雪ときどき雨」と予報。1月14日は大雪を予報しており、気象庁より精度の高い予報を実現している。

 同社の予報の精度を支えているのは、「サポーター」と呼ぶ全国400万人の一般ユーザーだ。

400万人の「サポーター」が支える、精度の高い天気予報

 ウェザーニューズの予報は、気象庁から配信されたデータ、KDDIと共同で全国3000カ所に設置している気象観測システム「ソラテナ」、700台のライブカメラ、そして、サポーターから投稿された情報を基に作られている。

 サポーターは、スマートフォンアプリ「ウェザーニュースタッチ」などを通じて現地の気温の体感、雲行きなどを報告したり、カメラで空の写真を撮影して届けてくれる一般ユーザーのこと。サポーターからの投稿は晴れの日で1〜2万件、雨の日では4〜5万件に上り、雪など荒天の日には急増。2月6日は20万件もの報告があったという。

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2月6日午前7時、サポーターから届いた天気の報告。雪だけでなく、雨も多いことが分かる

 2月6日の予報では、前日の5日正午までは同社も気象庁と同様、翌日の東京は大雪になると予報していたが、午後2時、予報を「雪ときどき雨」に変更。「コンピューターの予想結果だけでなく、これまでのサポーターデータを客観的に解析し、独自の気象予想モデルに取り入れたことによって雨の可能性が見えた」と、気象予報士で、同社WITHステーションコンテンツ運営本部チームリーダーの喜田勝氏は話す。

 気象庁は6日午後になっても大雪への警戒を呼びかけていたが、ウェザーニューズは午前中に都心の雪がピークを超えたと判断。これも、サポーターが今の天気や雪の状態をきめ細かく報告してくれたおかげだ。「サポーターからの報告がなければ、昼過ぎまで『この後も雪に注意してください』と言わなくてはならなかっただろう」(喜田氏)


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1月14日、雪が積もりそうかサポーターに聞いた結果を、雪のピーク超えの判断に生かした

 大雪となった1月14日、当初は雨が昼ごろから雪に変わると予報していたが、サポーターからの報告を基に、午前中から雪になると予報を修正。雪が雨に変わるタイミングを正確にとらえられたのも、サポーターのおかげだった。

 「データ上では、雨に変わらないのではと考えていたが、雪が降りやみそうなタイミングで1通、『雨に変わりました』という報告が届いた。その後も『雨に変わった』というリポートが増え、『雪がピークを越え雨に変わる』という見解をお伝えできた」(喜田氏)

サポーターは「天気予報の常識を大きく変えた」

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積雪計が搭載されたアメダスは関東地方に16カ所しかなく、サポーターの報告と重ねると観測点の少なさは一目瞭然だ。ウェザーニューズは以前、気象庁に、「サポーターを使いませんか?」と提案する上申書を持って行ったこともあるが、「お断りされてしまった」(森田氏)そうだ

 同社がサポーターの情報を予報に生かし始めたのは2004年。当初はケータイサイトの有料会員でサポーターに構成していたが、2012年8月に実施した、スマートフォンアプリの刷新に合わせ、無料会員でもサポーターになれるように変更。サポーターの数は30万人から400万人に、投稿数は1日数千件から万単位に拡大した。

 「今までの天気予報の常識を大きく変えた、革命的な感覚があった」。喜田氏は、サポーターからの報告を得るようになってからの変化について、こう語る。

 従来の気象予報は、観測データをコンピューターに入力し、物理モデルを用いて予報を行うが、レーダーに雨雲が映っているのに実際は雨が降っていないなど、観測データと実際の天気が異なるケースもあった。また、アメダスは20キロおきにメッシュ状に設置されているが、観測点と観測点の狭間の天気は、気象予報士が想像で補完するしかなかった。

 だがサポーターは「1キロおきにいて、実測してくれる」(気象予報士で同社取締役の森田清輝氏)ため、「実際どうなっているのかが目に見えてリアルタイムで分かるようになった」(喜田氏)のだ。

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