「米Brightstarの物流網をフル活用」――スマホアクセで世界に羽ばたくソフトバンクC&S:Mobile World Congress 2015
スマホアクセサリーブランド「SoftBank SELECTION」を展開するソフトバンクC&S。世界中に物流網を持つ米Brightstarとのシナジー効果で、海外展開を加速していく。
国内ではスマートフォンケースや充電ケーブルなど、モバイル関連アクセサリーブランド「SoftBank SELECTION」の事業で大きなシェアを誇るソフトバンク コマース&サービス(以下、ソフトバンク C&S)。同社は2015年3月2日〜5日にスペイン・バルセロナで開催されたモバイル関連見本市「Mobile World Congress 2015」の米Brightstarブースに出展した。ソフトバンク C&Sは、モバイル業界において海外で巨大な物流網を持つ米Brightstarとどのような関係を築いていくのか。ソフトバンク コマース&サービス取締役 倉光哲男氏に、今後の戦略について聞いた。
国内最大規模のアクセサリー事業の2割を海外ODMに
ソフトバンク C&Sが注力する分野の1つに、先述したSoftBank SELECTIONの海外展開がある。同社はモバイルアクセサリー事業を展開してすでに8年目。国内で蓄積してきたノウハウは海外でも通用するフェーズに入ってきたといえる。
SoftBank SELECTIONの事業は、ディストリビューション(流通)とメーカーという2本柱で「両者の割合は4:6」だという。流通分野ではモバイル関連アクセサリーの取り扱い3万6000点以上、販売チャネルは全国1万1000店舗以上という実績を持つ。スマホケースや液晶保護フィルムにはじまり、モバイルバッテリー、イヤフォン、活動量計、スマートトイなど世界各地の幅広い製品をラインアップしているのが特徴だ。
また、メーカー分野では製品の累計出荷数が3600万点を超えている。周辺機器を販売する競合他社はほかにも多数存在するが、「製品の企画、製造、販売、流通までを一気通貫で担っているのが他社との大きな違いです」と倉光氏は説明する。
SoftBank SELECTIONのブランドコンセプトは「Function=Beauty」で、すなわち機能美を実現すること。倉光氏は「キャリアブランドとして品質の高さや安全性は当然保証すべきもの」と前置きした上で、そこから新しい付加価値を与えるための切り口が「機能と美しさ」だと話す。そんなブランドコンセプトを体現するのがiPhone向けケースを展開する新シリーズ「EQUAL」だ。同シリーズでは、折りたたんでスタンドになるiPhone向けケースをはじめ、機能美を追求した製品を展開している。
MWC 2015では、国内で2015年4月下旬に発売予定のiPhone 6/6 Plus用ケース2種「EQUAL Privacy」「EQUAL Air Shock」と、開発段階の薄型リチウムセラミックバッテリーを内蔵したiPhone用フリップケースが展示された。
EQUAL Privacyは、のぞき見を防ぐアクリル製スクリーンとフリップケースが一体になった保護ケースで、EQUAL Air Shockは、二層のハード素材と衝撃を吸収するエアークッションを搭載し、米国で人気のあるディフェンダータイプのケースだ。「ディフェンダータイプを出すのは初めてに近い試み」と倉光氏は話し、日本での反応を見ながら海外販売も視野に入れていることを明かした。
薄型リチウムセラミックバッテリー内蔵型のケースは参考展示の段階だが、「実用化のめどは立っている」という。セラミックバッテリーの特徴は、バッテリーの発火点である40度まで熱が上がることがなく、変形もしないこと。まだリチウムバッテリーに比べて価格が5倍から10倍高いが、「市場が形成されれば、リチウムに代わる存在になるはず」と倉光氏は期待している。
そんな同社が掲げる目標は「アクセサリー事業の2割を海外ODM(委託者のブランドで製品を設計、生産すること)事業にする」こと。Brightstarとの提携が海外展開の鍵を握っているという。
米Brightstarの巨大物流網の活用方法
ソフトバンクグループとなったBrightstarは、携帯電話の卸売り、物流、在庫管理、買い戻しや下取りなど、携帯電話流通に特化した事業を担っている。拠点の数は世界50カ国以上で、サービス提供国は100カ国以上に上る。
倉光氏は、「ソフトバンクC&Sの製品とサービスを海外へ、Brightstarのサービスを国内に取り入れることで、お互いにシナジーが生まれる」と説明。具体的には、海外ブランド製品を国内に輸入し、ソフトバンクC&Sの製品を海外に輸出する際に、米Brightstarや現地キャリアとのつながりをフル活用しようという考えだ。
ソフトバンクC&Sは現在、「mophie」や「speck」などの海外ブランドメーカー製品500点以上を国内向けに販売しており、今後も拡大を続けていくという。また、2014年にiPhone 6/6 Plusが発売されて以降、Brightstarを通じて米Sprintや豪Telstraといった現地キャリアへiPhoneケースなど約30アイテムをODM展開している。倉光氏は「ケーブル部材の共同調達などにより、品質の向上と開発コストの削減に成功しました」と説明する。
ただし、各国で需要のある製品には違いがあるという。
「欧州は日本と傾向が似ていて、薄型ケースや見開き型のフリップケースが人気です。逆に、米国は見た目がごつくても頑丈なディフェンダータイプのケースが人気です」。
世界共通で広く使ってもらえる汎用(はんよう)性が高いモデルと、各地域の傾向に特化したモデルをどう展開していくかは、ソフトバンクC&Sがマネジメントしていく必要がある。
2014年に準備段階としてグローバルのアクセサリーチームを立ち上げた同社は、2015年は本格的な製造販売に向け、米国で戦略を練り、日本で企画、開発を進めていく方針だ。「今後はケーブルやイヤフォンといったケース以外の製品のラインアップも拡充していきます」と倉光氏は意気込みを語った。
モバイルアクセアリー市場のメインは先進国
ソフトバンクC&Sが今後注力する地域は「先進国」。端末メーカーやアプリベンダーなどは人口の多いアジア新興国に照準を定めてきているが、平均所得や生活水準の違いにより、製品単価も10倍以上異なることから、まずは単価の高い先進国を中心に地固めを行う構えだ。
その中で特に注力するのが、圧倒的なシェアを誇るAppleの「iPhone」と、それに次ぐSamsungの「GALAXY」シリーズのアクセサリーだ。主要2モデルを軸に、Brightstarの物流網を通して豪州ナンバー1キャリアのTelstraや米国のSprintなど、協力関係にあるキャリアに対して引き続き製品の供給を行っていく。「BrightstarやSprintとヒアリングを続けながら、現地のニーズに合った製品を提供していきます」と倉光氏は海外市場への思いを語った。
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