IIJが2018年春にフルMVNOとして訪日外国人向けサービスを開始――eSIM対応スマホの登場で、新しいビジネスが花開くか:石川温のスマホ業界新聞
インターネットイニシアティブ(IIJ)が、決算説明会で「フルMVNO」の進捗(しんちょく)について言及した。まずは法人向けのデータ通信サービスと訪日外国人向けのプリペイドデータSIMカードから開始するようだが、将来的にはeSIMへの対応が鍵となるだろう。
11月7日、インターネットイニシアティブ(IIJ)が、MVNOに関する事業説明会を開催した。そのなかで、自社で加入者管理機能を持つことで、2018年春に開始するというフルMVNOについての言及があった。
IIJでは、フルMVNOの第一弾として、法人と訪日外国人向けサービスを準備しているという。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年11月11日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
加入者管理機能を得ることで、MVNOが、課金開始のタイミングを設定できる。従来は、NTTドコモからSIMカードを借りた状態となっているため、仮に回線が未開通であっても、MVNOは毎月100円程度、NTTドコモに料金を支払う必要があった。つまり、SIMカードの在庫を大量に抱えると、それだけコストとして跳ね返って来ていたのだ。
これがフルMVNOになることで、そうした負担がいらなくなる。つまり、SIMカードを大量に調達して、ばら撒くことができる。例えば、日本行きの飛行機の機内誌にSIMカードをオマケとしてつけたり、旅行代理店が訪日外国人に日本に渡航する前にあらかじめ、SIMカードを渡しておくということも可能になるのだ。
またフルMVNOになることで、eSIMにも対応できるようになる。
将来的には訪日外国人が、eSIM対応のスマホを持って日本にやってきた際、空港にあるIIJの看板にあるQRコードを読み取って、すぐにeSIMを開通させるということも現実的になってくるのだ。
筆者はこの週末、韓国出張をしている。
今回、持参したのが、先日、購入したグーグルのPixel 2 XLだ。
契約はグーグルのMVNOであるProject Fi。この組み合わせは、実はeSIMに対応しており、アプリ上からアクティベートすることで、プラスチックのSIMカードを刺さなくても、通信が可能となるのだ。もちろん、プラスチックのSIMカードも利用可能だ。
実際、今回の出張では、韓国に到着した直後、機内でアプリからアクティベーションして、Project Fiにつなげることができた。eSIMのアクティベーションは思っていた以上に簡単で、いままで当たり前のようにやっていたプラスティックのSIMカードの抜き差しが面倒くさいと感じるほどだ。
eSIMであれば、空港でわざわざSIMカードを取り扱う販売店や自動販売機を探す手間がない。自分の国では、いつも使っているキャリアやMVNOのプラスチックのSIMカードを使いつつ、旅先ではeSIMに切り替えて、現地の安い通信料金で使うというのであれば、とても便利だ。
たしかに、IIJが狙うところは間違っていないだろう。
IIJによれば、すでにeSIM対応のスマホも中国などでは増えつつあるという。
今後、特にアジア地域は「デュアルSIM」が「シングルプラスティックSIM、シングルeSIM」という構成に変わっていくのかもしれない。
あとは、iPadやApple WatchでeSIMを採用するアップルが、本丸であるiPhoneにeSIMを採用してくるかどうか。このあたりは、iPhoneを熱心に売ってくれるキャリアの意向もあるだけに、一筋縄ではいかないだろう。
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