寄り道テック
筋肉を模倣した電動アシスト付き義足「SuKnee」
2017年3月に米国テキサス州のオースティンで開催されたインタラクティブテクノロジーの総合カンファレンス「South by Southwest 2017」(SXSW)で日本初のアワード(Student Innovation)を受賞したのが、ロボット技術を応用した電動アシスト付きの義足「SuKnee」。さらに10月には「ジェームズ ダイソン アワード2017」の「国際TOP20」にも選出された。有名なテック系アワードで高く評価されたSuKneeとはどのようなものか。
SuKneeを開発したのは東京大学の大学院生や若手研究者で構成される開発チーム「BionicM」だ。リーダーで中国出身の孫小軍さん(東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻)も子どもの頃から義足を利用しており、その運動性能については多くの課題があると実感していた。現在の義足は動力を持たないものが主流で、膝関節の自律的な屈伸ができず、つまずいたりすると転んでしまう場合もあるという。きれいに歩く、楽に歩く、早く歩く、そして走る――利用者の期待に応える義足はまだ登場していない。
SuKnee開発のきっかけは、同大学で30年にわたり研究されてきたヒューマノイド型ロボットの技術。人間に近い歩行を実現しているロボットの仕組みを利用すれば高性能の義足ができるかもしれない。しかし、モーターとギアで駆動するロボットの膝関節は電力消費が大きく、バッテリーが大きくなると義足自体も重くなってしまうデメリットがあった。
そこでBionicMが考え出したのが、ロボットに使われるアクチュエーターを応用すること。人間の膝関節は、主に大腿四頭筋と大腿二頭筋という2つの筋肉によって屈曲や伸展をしている。その筋肉を模倣するアクチュエーターを開発し、人間の歩行に合わせた制御を行えば、自然な動きの義足ができる。
3Dプリンターなどを駆使してプロトタイプの1号機を作り上げたが、同時にさまざまな課題も浮き彫りにした。問題が生じるたびに設計からやり直し、試作も繰り返す。試行錯誤の末に完成したプロトタイプ2号機が現在のSuKneeだ。
人は平地を歩くとき、膝を0度から60度まで曲げ、60度から0度まで延びて振り出している。SuKneeは、こうした歩行プロセスを再現し、膝の屈曲や振り出しをアクチュエーターによってアシスト。センサーで障害物を検知し、例えぶつかっても“膝折れ”しないように膝が伸びるまでパワーを出し続ける。椅子から立ち上がる時には、義足の伸展動作でアシスト力を加え、体が傾くことを防ぐ。膝を曲げていても体重を支えることができるため、交互に足を出して階段を上ることも可能になるという。
今後は、歩行中のエネルギーを電力回生(余剰エネルギーを回収して電力として再利用すること)して高効率化を図り、バッテリー駆動時間の延長につなげるほか、ロボット義足の制御をブラッシュアップするために機械学習を用いて歩行パターンや特徴を蓄積、義足の制御にフィードバックする。さらにユーザーがスマートフォンで設定をカスタマイズする機能も盛り込む。
SuKneeが選出された「ジェームズ ダイソン アワード 2017」の「国際TOP20」は、同時に同アワードの最終審査に進むという意味でもある。日本からはSuKneeを含む3作品がノミネートされており、Dysonの創業者で最終審査委員を務めるジェームズ・ダイソン氏が「国際最優秀賞」1作品と国際準優秀賞2作品を決定する。結果は10月26日に発表予定だ。
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IT・ネットの最新事情を日々追いかけている編集部が少しだけ“寄り道”。記者がいま気になっているテクノロジーのあれやこれやを独断で紹介します。
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