制作期間2年以上、「三国志」LINEスタンプにかけた“原作厨”の情熱 “狂気の企画書”420ページ 「あのコマ」入らなかった理由は……(1/4 ページ)
「これが世に出せないわけがない」――何年も前からそう確信し、1人で準備を続けていたという。
横山光輝作の漫画「三国志」全60巻。同作に心を奪われたソニー・デジタルエンタテインメント・サービスの原寅彦さん(27)は、「いつかこれをデジタルコンテンツにしたい」と構想を練っていた。
企画が通るずっと前から、インパクトの強いコマを選び出してはスキャンし、集めていた。全1万2419ページから2年以上かけ、4100ものコマをストック。この1月、「LINE」のスタンプになったのは、その中から厳選した40コマだ。
恐怖に満ちた表情で叫ぶ「げえっ」、敵の心理戦に焦る「待てあわてるな これは孔明の罠だ」、山盛りのみかんを差し出す「温州蜜柑でございます」……ネットでも人気のコマを網羅したスタンプは圧倒的な支持を受け、公開直後の売り上げで「アンパンマン」「ふなっしー」に次ぐ3位にランクイン。三十年近く前に連載終了した作品のスタンプが現役の人気キャラと肩を並べるという、異例の事態となった。
「横山先生の三国志はエバーグリーン。時が経っても色あせないんです」――原さんは、横山作品の魅力を語り出すと止まらない。スタンプ化への道のりは平坦ではなかったが、原作への愛と情熱で乗り越えてきた。
「三国志」の魅力、社内で理解されず コスプレでアピールも
同社はソニーグループで携帯電話向けのデコメ素材やメッセージアプリ向けスタンプ開発などを手がけるコンテンツ企業だ。漫画をベースにしたコンテンツも多数あり、原さん自身も「楳図かずお 恐怖スタンプ」「あしたのジョー」「ゴルゴ13」などのLINEスタンプを手がけてきた。原作の持ち味そのまま生かしたコンテンツ作りがポリシーで、自称「原作厨」だ。
中でも横山光輝「三国志」には特別な思い入れがあった。学校図書館などで小さいころから読み込み、横山作品のファンに。「横山先生の作品は1コマだけで面白くてパワーがある。こんな作品は、他にないんです」と力を込める。
「横山光輝版『三国志』でコンテンツを作りたい」――LINE登場以前から、社内でそう訴えてきたが、社内には三国志を知る人がほとんどおらず、思いは空回りするばかり。そこで原さんは“実力行使”に出た。三国志の面白いコマを社内に張り出したり、自らコスプレを始めたのだ。
社内のコーヒーサーバーには、孫権が「茶でも飲みながら気楽に話をしよう」と話すコマをさりげなく張り付けた(※)。社内の業務メールにも時々、三国志のコマを添付。お礼を伝えるメールに、張飛が「ありがとうござる」と話すコマを貼り付ける――などだ(※)。自作した孔明のコスプレ衣装で社内のハロウィンパーティに出たり、その姿のままで仕事をしたこともある。
原さんのそんな努力もむなしく、社内に三国志ファンは増えなかったという。
(※)編注:著作者に無断で行った場合、著作権に触れる可能性がある行為ですが、光プロダクションからは事後承諾ながらOKをもらったそうです。
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