「サマータイム実施は不可能」スライドが話題 「経済被害が兆単位」「サイバーテロをお膳立て」立命大・上原教授が指摘
政府・与党が、2020年の東京五輪・パラリンピックの酷暑対策として、夏の時間を2時間繰り上げる「サマータイム」を導入する検討に入った。導入する場合は、ITシステムもサマータイムに対応させる必要があるが、IT関係者の間では、「対応のための改修が間に合わない」「システム障害を招く」などと危ぐする声も大きい。一方で、NHKの世論調査によると、サマータイムの導入に「賛成」が51%、「反対」が12%と、一般世論は賛成が多数だとも伝えられている。
そんな中、「2020年にあわせたサマータイム実施は不可能である」と断言し、その理由を説明するスライドが「Slideshare」で8月10日に公開され、注目を集めている。執筆したのは、サイバーセキュリティを専門とする立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授。「2020年までのサマータイムを社会的な大混乱なく実施することは不可能」とした上で、必要とされる対応コストやリスクなどを説明しており、Twitterなどで広く拡散され、話題になっている。
** サマータイム実施は不可能である ** from UEHARA, Tetsutaro
スライドでは、前提として、「政府や自治体、医療、交通運輸、金融のシステムから、家庭のテレビやエアコンまで、『時間』を基準に動作しているシステムがあまりに多い」と指摘。国や自治体、企業の重要インフラの修正には「4~5年必要」と推定し、「個人家庭でも対応不可能な機器が相当数発見される」とみる。調査や対応のためには、重要インフラだけで少なくとも3000億円程度は必要と試算。対応に伴うIT企業の疲弊も計算に入れると「経済被害が兆単位に達する」と試算する。
テレビなど家庭の機器では、サマータイムに自動補正できる機能がある場合でも、想定外の不具合が出る可能性があると指摘。修正や買い換えの負担が発生する可能性がある他、手動で変更する必要がある場合、方法が分からずメーカーや役所などに問い合わせが殺到し、対応コストが発生するとみる。
サマータイムは「世論の支持がある」とされているが、こういったコストを多くの国民は理解しておらず、「実施すると絶対に、『こんなはずではなかった』になる」と指摘。海外では導入している国もあるが、それらの国では情報機器がこれほど普及する前から導入されており、多くの機器がサマータイムを考慮して作られていると説明する。
また、「セキュリティ専門家としても断固として反対」とも。サマータイム対応のために多数の機器やソフトウェアの修正プログラムが配布されると、それに便乗し、「あなたの○○は修正が必要です」などと悪意のあるプログラム(マルウェア)が配布されるリスクがあり、「攻撃者にとっては絶好の機会」「サイバーテロのお膳立てをしてしまう」ためだ。
上原教授は「サマータイムの実施がいかに困難かなかなか理解されないので取り急ぎ書いた」としており、スライドには今後、サマータイムに伴い、電波時計やテレビ、カーナビ、ETCなどが不具合を起こす例を追記していくという。
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