Windows 8.1に機能が“退化”した標準アプリがある?──その理由を探る:鈴木淳也の「まとめて覚える! Windows 8」
機能が大幅に強化される「Windows 8.1」だが、一部アプリには「退化」してしまった? と思わしきものもある。その理由を考察する。
Windows 8.1で機能“後退”したアプリ、その理由を探る
Windows 8.1では、サービス連携が進んだという例として「SkyDrive統合」の話を紹介したが、一方で逆にサービス連携が解除されて標準アプリの使い勝手が大きく変化したという例も見受けられる。賛否両論あると思うが、今回はこのあたりの事情に少し触れてみたい。
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画像ビュワーからフォトレタッチに変化した「Photos」アプリ
Windows 8.1においては、ユーザーが参照先のストレージとして直接SkyDriveのクラウドフォルダを選べたり、指定ファイルをオフラインでも活用できたり、あるいはユーザー設定を自動同期したりと、SkyDriveを使ったオンライン連携がかなり強化される。
もともとWindows 8はFacebook、Twitter、Googleといった外部のオンラインサービスと接続してOSや一部標準アプリ(People、Calendar、Photosなど)からデータを参照したり、あるいは直接投稿を行ったりといったようなOSへのサービス統合をウリにしていた。このコンセプトを継承しつつ、さらに強化したのがWindows 8.1だといえる。
だが一方で、仕様変更によりアプリのコンセプトそのものが変化したものもある。それが「Photos」だ。
Windows 8.1 Previewの一般公開直後、Microsoft Communityのサイトでも話題になり、The Vergeなどのメディアでも報じられたが、新たなPhotosアプリでは、従来まであったFacebookやFlickr上にある写真の参照ができなくなっただけでなく、SkyDriveやネットワークドライブの参照も行えなくなった。
前述したThe Vergeの記事でMicrosoftのコメントが掲載されているが、8.1のPhotosアプリはローカルフォルダの画像しか参照できず、もしこれら外部サービスやネットワーク上のデータを閲覧するには、いったんローカルフォルダに画像をダウンロードしてくる──しかない。複数ある画像をまとめて表示し、素早く切り替えつつ参照したり、あるいはスライドショー形式で表示させて楽しむユーザーもいたと思うが、ネットワーク上のデータに対してそれは今後行えなくなる。
代わり──というわけではないが、Windows 8.1のPhotosアプリで、トリミングや赤目修正、回転、色味調整や強調、オートフィルタなど、主に画像編集機能が大きく強化された。
こちらはどちらかといえばフォトレタッチが中心であり、あくまでローカルのデータを整理・参照するのがその役割になった感じだ。操作ボタンが大きく、さらに値の微調整は円形スライダーで行えたりと、以前に比べてもタッチ操作への親和性は高くなったと思う。だが、画像ビュワーだったアプリが、閲覧機能を大幅制限するかたちでフォトレタッチアプリとして生まれ変わったとなると、これまでWindows 8を活用していたユーザーにとって少しとまどうポイントかもしれない。特に、ストレージ容量の少ない一部のWindows 8/RTマシンでは、積極的に画像をSkyDriveなどの外部サービスにアップロードして管理する人も多いと思われ、前述したサービス連携強化の推進とは……なんというか逆行する改善(?)になった印象である。
なおMicrosoftによれば、2013年7月現時点においてはPhotosアプリに外部サービス参照機能を付けるか否かは明言しておらず、筆者の推測では、おそらくこのままの仕様で正式リリースされると思う。
Windows 8.1のPhotosアプリでFacebookとFlickr連携が外された理由としては「ユーザーは“Photos”アプリ経由ではなく、直接サービスから画像を参照することのほうが多い」とMicrosoftが判断したためだからだろう。同社はテレメトリーなどのデータで利用者の動向は把握しており、実際にこの機能の利用頻度は低かったというデータを得ているものと思われる。一方で、SkyDriveとネットワークドライブ参照が行えなくなった理由としては「負荷が大きく、使い勝手もそれほどよくない」といった理由が考えられる。
足りないものはサードパーティ製品や情報共有で補完
もう1つ、これはMicrosoftが原因ではないのだが、Googleサービスの仕様変更により、例えばGoogle CalendarがWindows 8/8.1標準のカレンダーアプリと連携しなくなっている。ExchangeサービスやOutlookを主に使っているユーザーには影響はないと思うが、Google Calendarにデータを入力し、これをサービス接続機能を使ってWindows 8で参照していたユーザーは、以後はこの方法でGoogle Calendarを参照できなくなっている。Facebookのカレンダー情報をGoogle Calendarなどに転写して利用している人もいると思うが、こちらも同様だ。対策としては、Google CalendarをWebブラウザで、あるいは同データを直接参照できるアプリを別途導入するのが近道だ。
PhotosアプリとGoogle Calendarの件で見えてくるのは、サービス連携をうたいつつも「Windowsの標準アプリを強化しても、そのコンセプト変更や外部環境の変化により、従来のユーザーのニーズとは乖離してしまうケースがある」ことだ。現在は充実度が不足しているが、今後は標準アプリで対応できない事柄はサードパーティアプリで補完するスタイルが確固たるものとなっていくだろう。プラットフォームのエコシステムとしてはある意味で健全であり、今後こうした不足分を補うアプリや解決ノウハウの共有が重要になってくるはずだ。
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