Survey：トピックス

2003/10/15 00:10:00 更新

海外ビジネスケーススタディ分析
欧州のシリコン・バレー“ソフィア・アンチポリス”は欧州ハイテクの宝庫

仏ソフィア・アンチポリスには、欧州先端技術開発本拠地として、大企業だけでなく先端技術開発を行う国立研究所が集まっているハイテクのメッカだ。この「欧州のシリコン・バレー」ソフィア・アンチポリスに注目してみよう

　欧州のシリコン・バレー“ソフィア・アンチポリス”が大きく注目されている。ソフィア・アンチポリスは、フランス・ニース国際空港からわずか20分の所に位置し、革新的なテクノロジーの、バイタリティーある欧州ハイテクのメッカとなっている。創設以来35年、欧州先端技術開発本拠地としての評価を確立してきた当地は、IBM、テキサス・インストゥルメンツ、ヒューレット・パッカード、シーメンスなどIT業界の世界的な大企業の欧州拠点でもある。トヨタや日立など、日本の大企業もその例に漏れない。当地のトヨタ欧州デザイン開発センターではヴィッツ、カローラ、ランド・クルーザー、レクサスSC430のデザインが生み出されている。「実に好ましいこの用地で、未来のデザインプロジェクトが成功を収め続けるだろう」と同センターの平井和平社長は成果を評価している。

Copyright (c) CAD.

　ソフィア・アンチポリスには、大企業のみならず、続々とスタートアップする新生企業を輩出する可能性を持つ世界級の先端技術開発を行う国立研究所が集まっている。例えば、画像処理の分野で進境著しいLTUテクノロジーズは仏国立情報科学・自動工学研究所（INRIA）出身である。

同社が開発する画像同定技術は児童ポルノ画像取締りの有力手段として国際刑事警察機構や米連邦移民局に採用されている。また、仏特許庁が特許・商標の使用管理に利用する世界レベルの先端技術である。この技術は、大手イメージバンクや企業内の膨大な画像データを管理する検索・インデックスエンジンの分野においても巨大な市場を得ることは確実と見られている。また、仏特許庁が特許・商標の使用管理に利用する世界レベルの先端技術である。この技術は、大手イメージバンクや企業内の膨大な画像データを管理する検索・インデックスエンジンの分野においても巨大な市場を得ることは確実と見られている。

　ジオメトリー・ファクトリーは、2003年に創立されるや、東芝を初め、世界中の企業でそのマルチ・ソリューションが採用されている。仏INRIA・独マックス・プランク研究所・スイス/チューリヒ工科大学などトップクラスの研究所での基礎研究と起業精神から生まれた技術を商業化しており、現代の欧州ハイテク産業を象徴する好例といえる。同社は、三角形分割やボロノイ図などのアルゴリズムやデータ構造からなる、2D／3D、マルチD計算幾何学コンポーネント・ソフトウェアの発行・販売を行っている。卓越した機能性や相互作用性に優れ、構築デザインが首尾一貫しているため、既成のコードにも容易に統合でき、デジタル地図や医療イメージング、衛星イメージング、コンピュータ・グラフィック、構造地質学、ゲームなど多彩な分野において、企業の産業アプリケーションの機能性改善、その迅速な開発、技術養成やメンテナンスの有意義なコスト節減を実現している。専門家のサポート・養成サービスと共に、産業開発、産業研究、学術開発、オープンソースの4種のライセンス形態で提供される同社のソフトが日本のビデオゲームやカーナビ・システムに使用される日も近いとされている。

　GSM欧州標準規格を管理するETSI（欧州電気通信標準化機構）やW3C（WWWコンソーシアム）がソフィア・アンチポリスに設置されている点も多くのスタートアップ企業に有利に働いている。その理由は、最新の研究や研修セッションへのアクセスに恵まれ、XML専門技術者予備軍であるINRIAやMIT出身の貴重な人材を採用することができ、欧州の他の場所に本拠を置くのと比較すると、より迅速に好調なスタートが切れるからである。

　また、W3Cの有力なメンバーで、ERPソフトウェアの大手であるドイツのSAP AG社も、米国、ブルガリア、インド、イスラエル、日本と世界各地に研究所を設置しているが、欧州の開発研究拠点としてソフィア・アンチポリスを選んでいる。このロケーションの選択により、同社はXMLやSOAPなどのウェブテクノロジーの分野における最高の技術者を見出し、W3Cを通じた産業標準規格として、自社の技術開発の成果を提供することも可能としている。当地では、更に技術マーケティング・人材スカウト・ベンチャーキャピタル各社が技術とビジネスをつなぐ“エコシステム”を完成しており、当地は欧州中の人材を惹きつける条件を満たしている。

※Loeillot.Misaki3（ロイヨ・ミサキ・キューブ）は、ソフィア・アンチポリスに本拠地を置き、欧州・日本企業間の市場・技術・戦略情報提供及び日欧双方の市場参入へのコンサルティングを行う調査コンサルタント会社である。注目される“欧州ハイテクの宝庫ソフィア・アンチポリス”のホットな技術・企業動向情報の提供と日本企業との橋渡しのコンサルティングを行っている。

二コラ・ロイヨ（写真左・Loeillot.Misaki3）
米サンフランシスコ大学にてMBA取得。以後10年に渡ってアクセンチュア、ノーテル・ネットワークス、ガートナー・グループ、ヒューレット・パッカード、アルカテルなどIT・テレコム業界でコンサルタントのキャリアを築く。

三崎由美子（写真右・Loeillot.Misaki3）
87年渡仏、パリ第五大学社会学部博士前期過程修了。時事通信社パリ支局勤務を経て、99年よりソフィア・アンチポリス在住、Loeillot.Misaki3を設立。

※この記事は日本ストラテジック　水澤元典のコーディネートにより執筆されました。

Copyright (c) 2003 Nippon Strategic Inc. All Rights Reserved.

関連リンク
Loeillot.Misaki3

[二コラ・ロイヨ&三崎由美子，Loeillot.Misaki3]