|
|||||||||||||||||||||||||
このマーケティングコラムをはじめるにあたり、まずマーケティングとは“売れ続ける仕組みつくり”であると定義しておきたい。ワンショットで売るのも確かに難しいし、そのためにももちろんマーケティングは役に立つのだが、一番大事なのは“売れ続ける”ことである。アイデア・開発力・営業力などで一発当たることはあるかもしれないが売れ続け、利益を継続的に出すにはマーケティングが必要なのである。 このようにビジネス上での成功を最も左右する存在になってきたマーケティングであるが、マーケティングとは何かを明確に理解している人は少ないようで、“何かいっぱい市場調査をすること…”や“かっこいい広告を作ること”程度に認識している人はまだ多いようである。マーケティングは製造業からサービス業まで、又消費財から産業財まですべての分野で効果を発揮する。特に“テクノロジー”系の製品・サービスを提供する企業は往々にしてヨイモノ(サービス)を作れば売れるという考え方になりがちである。確かにあまりにワルイモノ(サービス)では土俵にも乗れないが、正しいマーケティングなくして継続的成功は無いのである。 本コラムは“テクノロジー”に興味のある皆さん対象ということを、意識しながらマーケティングを語っていきたい。テクノロジー系ビジネスでよく目にするのは“初期にはモノの新規性・良さ”でスタートダッシュに成功したが、それが継続できずに失速する失敗である。初期の成功が継続できないこの現象はよく“キャズム”や“プロダクトライフサイクル”理論で説明されることが多い。これらのキーワードも今後このコラムで取り上げていく予定である。 しかし何よりもテクノロジーマーケティングで現在問題が多いのは消費者向けのマーケティングであると筆者は感じている。もちろん法人向けのマーケティングにも問題は山積しているので後段では法人向けにフォーカスした話もしていくが、前段では消費者向けマーケティングのポイントを中心に話を進めたい。 情報家電などが脚光を浴びている昨今は、これまで法人向け(又は比較的情報認知度の高い消費者向け)にビジネスをしてきた企業が、マス消費者向けのビジネスの割合が増えてきており、一気に市場を拡大するチャンスが開ける反面、マス消費者の動きを捉えきれず、または新しい競争になじめず、敗退する事例も多く見られ始めてきている。 第1回の今回では、普遍的に使用できるマーケティング戦略策定プロセスを見てみよう。通常はこのプロセスは大きくは 1)環境分析 2)標的市場の設定 3)マーケティングミックスの最適化 という3段階を経る。 1)の環境分析は、事業に影響を与える様々な要因を把握するために行う。外的環境として市場と競合状況を把握し、内部環境として自社の強み・弱みを把握する。このときに過去・現在・将来の状況をダイナミック(動的)に把握するのがポイントである。また、この環境分析ではただ漫然と事実を網羅的に整理するのではなく、自社のマーケティング施策に、どのような影響があるかのメッセージを、抽出するようにしなくてはならない。 2)の標的市場の選定はさらに A)セグメンテーション B)ターゲティング C)ポジショニング の3つのプロセスに分かれる。この3つのプロセスはよく混同されることが多いが、区分けして考えるべきプロセスなのである。セグメンテーションとは、自社にとって最も魅力的な市場を見つけ出すために市場を細分化することである。 ターゲティングは、細分化された市場のなかから、自社が狙うべき顧客層を抽出することである。 ポジショニングとは、製品をわかりやすく特徴づけるために、ターゲットとした市場において(競合と比較して・もしくは自社の他の商品と比較して)相対的に顧客に魅力的に見えるように位置づけることである。 3)マーケティングミックスの最適化とは、ターゲットとすべき顧客に対して自社の製品(Product)をどう設定し、どんな価格戦略(Price)で, どんな流通で(Place)、どんなコミュニケーション(Promotion)を行うかを考えることで、ターゲット顧客とこの4つの要素は互いに整合性を持っていなくてはいけない。 このマーケティング戦略策定プロセスで最も重要なことは、「このプロセスはスパイラルに循環する」ということである。必ずしも、確定的な環境分析の上に、絶対的なセグメンテーションを作り、絶対的なターゲティングやポジショニングが段階的に続くという一方通行のプロセスではなく、ある段階でおかしな点や、示唆に富む発見がされた場合は、より前のプロセスに戻ったりして、いったり来たりを繰り返しながら全体の戦略をよりよいものに作り上げていくのである。 極端なことをいえばマーケティングはこの“スパイラルのプロセス”と“顧客の視点”の2つを押さえておけば、ある程度の成果は見込めるのである。“なんて基本的なことを…”と思われるかもしれないが、この基本を本当に身につければ、どんな商材のマーケティングも怖くは無いのだ。 次回以降はこのSurveyチャンネルのOPINIONコーナーを借りて、消費者向けのマーケティングに軸足を置きながら、具体的にこの戦略策定プロセスを見ていきたい。 Copyright c 2003 Jusuke Ikegami. All Rights Reserved.関連リンク OPINION:ニッセイ・キャピタル [池上重輔,ニッセイ・キャピタル] サーベイチャンネルは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、ソフトバンク・アイティメディアの他、サーベイチャンネルコーディネータ、及び本記事執筆会社に提供されます。
| |
||||||||||||||||||||||||
ITmediaはアイティメディア株式会社の登録商標です。 |