コラム
2004/01/13 01:03:00 更新
ITソリューションフロンティア:不確実時代のITマネジメント
IT投資効果を極大化するための仮説検証型思考
IT投資の目的は、業務の効率化から、情報の共有や情報の戦略的活用に変わってきた。それにともなってIT投資による効果をとらえることが難しくなってきた。その要因は4つの不確実性にある。これらの不確実性を明確にし、IT投資効果を極大化させるためには、仮説検証型思考を徹底することが重要である。
困難なIT投資効果の推定
コンピュータが企業で利用されるようになってから近年まで、IT投資の主たる目的は業務の効率化であった。この場合、投資効果は、人員削減、人員抑制効果として推定、計測することができた。
1990年代以降のIT投資の主たる目的は、情報の共有、情報の戦略的活用に変わってきた。この場合、投資効果は、人員削減、人員抑制効果に加えて売上拡大への寄与が想定されているが、このなかの売上拡大効果を推定、計測することが困難なのである。
困難さの要因としての4つの不確実性
この困難さの要因は、次に示す4つの不確実性にある。
- 売上拡大仮説そのものに起因する不確実性
- 仮説を行使できる機会の有無に起因する不確実性
- 仮説を行使する動機付けの成否に起因する不確実性
- 経済環境や市場、競合他社の動向など環境に起因する不確実性
これを順に、仮説不確実性、機会不確実性、仮説行使不確実性、環境不確実性と称する。
仮説は、蓄積された顧客情報や取引履歴の範囲でのみ有効なのであり、その精度は分析手法によって左右される。
仮説が正しいとしても、仮説を使う機会がなければどうしようもない。
また、仮説のとおりに実際に従業員が行動するかは動機付けの成否による。
経済環境や市場の動き、競合他社の動向などは、自社では管理できない。
仮説検証型思考による不確実性の克服
IT投資と売上拡大との関連を明確化することを困難にしているのがこれらの不確実性であるとすれば、その不確実性をなくしていくために必要となるのは、以下のような仮説検証型思考であると思われる(図1参照)。

(クリックで拡大表示)
仮説不確実性を極小化するためには、異なる情報ソースからデータを購入したり、分析手法やツールを複数試してみたり、仮説検証を繰り返したりすることが有効である。
機会不確実性を極小化するためには、仮説を行使できる機会の種類や頻度を設定することが有効である。
仮説行使不確実性を極小化するためには、必須作業として業務へ組み込んでしまう方法と、動機付けの仕組みを構築する方法の2つの解決方法がある。
環境不確実性を明確化し、その要因や対策を議論するためには効果の波及過程を視覚化する戦略マッピングが有効である。戦略マッピングはバランススコアカードを検討、作成する際に利用する道具である。戦略マッピングは、IT投資に関連する諸施策と、最終的な目標である財務的な効果の関連性を視覚化してくれる。その結果として、業務改革や制度革新が必要になる場合もある。
このような、不確実性を取り除く施策を考え、実行することにより、IT投資効果を極大化することができる。
求められる仮説検証型思考
仮説検証型思考は、業務部門と企業内IT部門にともに求められるが、IT投資による効果が発揮されるのはシステムができてからであることを考えれば、仮説検証型思考はとくに業務部門にとって大きな意味をもつ。業務部門はIT投資の効果を把握・評価し、新たな投資の必要を判断し、場合によってはシステムの廃止を意思決定しなければならない。また、IT投資の効果を発揮させるために、必要に応じて業務改革や制度革新の実行可否を決定しなければならない。
企業の経営者にとっては、以上のような仮説検証型思考を徹底させるために、効果実績の継続的な評価制度や監査などの仕組みを確立しておくことが必須である。
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