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コラム
2004/03/02 00:00:00 更新

ITソリューションフロンティア:視点
観察力

「質問力」という能力が注目されている。これは、「質問するという積極的な行為によってコミュニケーションを自ら深めていく力」であり、これからの社会で間違いなく重要な力とされている。

 我々NRI(野村総合研究所)のビジネスの上では、コンサルティングにしても、システムの設計・開発・運用にしても、顧客企業・官公庁の経営・業務の現場で起きている問題を解決することが使命である。そのためには、よい質問をするための質問力はもちろん必須だが、私は質問を考える前提となる「観察力」も重要であると思う。とくに、質問力は年齢と経験を重ねるとともに高まる傾向にあるが、観察力は肉体的にも精神的にも年齢とともに衰えがちである。この観察力をいかにして維持したらよいのか考えてみたい。

 年の初めから暮れのことを言うのもおかしいが、年齢を重ねるにしたがい、1年が経つのが早くなるとよく言われる。1年を振り返ったときの体感時間は、その1年間に記憶した新鮮な情報の量に比例するそうである。若い頃は、見るもの、聞くものなど経験することすべて新鮮であり、すべて脳に記憶されるので、その1年の記憶は脳内の大きな容量を占める。これにより、その1年を長かったと感じる。歳をとると、見るもの、聞くもののうち、以前に経験したことがあるものの割合が増え、経験のない新鮮なものは少なくなる。これにより新しく記憶される量も少なくなる。そのため、1年を振り返っても新しい記憶は少なく、1年を短く感じるそうである。暮れになって、この1年が短かったと思うことは、それだけ新鮮な経験、観察が少なかったということである。

 人は同じような経験を続けると、新鮮な経験量が減ってくる。これは肉体年齢に関係ない。私も中年になってゴルフを始めたが、最初の数回のゴルフ場はコースもプレー内容も鮮明に覚えている。しかし回を重ねると、ゴルフの内容について思い出すのが難しくなった。また、恥ずかしいことに、面白そうだと思って読んだ小説が、最後のほうになって、以前読んだことがあったと気付くこともある。しかし観察力の高い人は違う。同じ映画を意識して何回も何十回も見ても、そのたびに新たな発見ができるという。同じ音楽を聴いても、毎回新たな発見ができるそうである。もちろんゴルフを何十回とやっていても、すべてコースとプレーを覚えている人もいる。

 高い観察力を維持することで、新鮮な経験を増やすことは、ビジネスの上だけでなく、心の若さを保つためにも有効そうである。

 では、いかにして高い観察力を維持することができるのだろうか。

 観察のプロセスには「気付き」と「記憶」の2段階がある。「気付き」とは、五感を駆使して、自分の周囲で起きている事象がどこかおかしい、これまでの経験・記憶と何か違うと気付くことである。「記憶」はそれを覚え、いつでも取り出せるようにしておくことである。

 気付きの力をつけるためには、何か違うはずである、以前と違うことが起こっているはずであると、疑いの気持ちをもって見ることと、自分にはその違いを見つけられるはずだという信念をもつことだと思う。その違いを見つけるためには、視点を変えてみることが有効である。物理的に前から見たり、上から見たり、下から見たりという視点変更もあれば、心理的に、主人公の視点、脇役の視点、観衆の視点と立場を変えることにより違いを発見できることもある。ビジネスにおいて、自分の視点以外に、上司、部下、顧客と視点を変え、違いがあるはずだという意思と信念により、新しい気付きがみえてくるはずである。

 記憶の力をつけるためには、気付いたことに対して、なぜなぜを繰り返し、因果関係を見つけて覚えることが有効である。なぜ、この映画のこの場面で、主人公はこの発言をしたのか。主人公の後ろに配置された絵画はなぜこの絵なのだろうか。なぜ、このバイオリンの次にフルートのソロが入るのだろうか。なぜこのコースではフェアウェイ左200ヤードの位置に1本の杉を植えてあるのか。このように、なぜなぜを繰り返しながら観察し、自分で因果関係を見つけることで、新しい記憶に留めることができる。

 毎年、毎月、毎週、毎日、同じようなことが起きてもその原因は一つひとつ違うかもしれない。それを見逃さないように、なぜなぜを繰り返し、途中であきらめず、仮説でもよいから因果関係を見つけることが、観察力を維持し続けるために必要である。記憶ができるということは、脳内のニューロンという神経細胞どうしの連結ができていくことである。なぜなぜの追求をあきらめて、因果関係を見つけられないままにしておくことは、漫画の火星人のようなタコの形をした神経細胞の足の部分が、にょろにょろと動き、つながり先を見つけようとしていたのに見つけられないまま、引っ込まざるを得ない姿を想像させる。

 このような自分の脳内神経細胞の足の動きを思い描くと、なぜなぜを繰り返して因果関係を考えながら観察することを、中途半端で終わらせることができないようになる。神経細胞の足がつながり先を見つけ、接合が完了される姿を思い描き、観察を実践することが記憶を定着させるこつだと思う。

 本年の12月を迎えたときに、あっという間の1年だったと言わないように、今年はたくさんの視点で気付きを作り、ニューロンの動きを意識ししっかり記憶することで、高い観察力を維持し、新しい発見、学習を毎日獲得していきたい。

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▼OPINION:野村総合研究所

[椎野孝雄,野村総合研究所]

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