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2004/03/12 00:00 更新

ITソリューションフロンティア:システム
Linuxを採用した大規模オンライントレードシステム

個人株式委託売買代金シェアで71%(2003年度上期)を占めるまでに成長したオンライン証券の最大手であるイー・トレード証券株式会社(以下、イー・トレード証券)は、基幹プラットフォームのサーバーOS(基本ソフト)にLinuxを採用した新オンライン取引システムをリリースした。本稿では、安定運用が必須のオンライン証券システムにLinuxを採用した事例について考察する。

Webシステム再構築の背景

 イー・トレード証券のシステム戦略は、親会社である米国最大手オンライン証券会社のノウハウを活用し、Webシステム(フロントシステム)は米国にて管理運営し、バックオフィスシステムは各国で管理運営するという方針の下で展開されてきた。

 しかし、オンライン証券の競争が激化するなか、イー・トレード証券はこの方針を転換し、フロントシステムからバックオフィスシステムまで一元化したシステムの開発・運用管理体制を日本国内に構築することとした。そのため、数社からの構築提案を検討した結果、従来ミドルオフィスシステムからバックオフィスシステムの開発・運用管理を担ってきたNRI(野村総合研究所)がWebシステムの再構築を行うことになった。システム開発は、2002年4月に現状調査およびシステム化計画の策定から開始し、2003年7月のリリースとなった。

Webシステムに求められる要件

 イー・トレード証券は、オンライン証券最大の約30万口座(2003年10月末現在)を有し、業界で最も安いクラスの手数料体系を採用している。現物取引、信用取引、約300の投資信託、カバードワラント取引、新規公開株、個人向け国債など広範囲にわたる商品を取り扱い、初心者からアクティブトレーダーまでの幅広い投資家を顧客としている。

 こうしたオンライン証券のWebシステムに求められる要件は次のとおりであった。

  1. システム基盤の信頼性・安定性
  2. 性能(スループットおよびレスポンス)の向上
  3. 低コスト
  4. 拡張性
  5. 24時間365日稼動

 オンライン証券会社のWebシステムの特徴として、投資家からのアクセス件数が時間帯および相場状況によって乱高下することがあげられる。そのため、とくに取引開始時(寄付き)および取引終了時(大引け)に安定した環境を提供することがオンライン証券会社の優劣を決定すると言っても過言ではない。一方で、今後のアクセス件数増大に備え、システムの拡張性を確保した上でTCO(総管理コスト)を低く抑えることも重要である。

 この厳しい要請に対して、どのようなシステム基盤を採用するかがWebシステムを構築する上でのポイントとなる。

Linux採用の理由

 上記の課題を解決するため、まずサーバーOSとしてUNIX、Windows 2000、Linuxについて比較検討することとした。

 Linuxについては、オンライントレードシステムへの採用事例は国内ではまだなかった。そのためシステム構築実績および安定性ではUNIXが採用されるケースが一般的であるが、低コストという観点からはWindows 2000とLinuxが有利であった。そこでWindows 2000とLinuxの安定性について、プロジェクト開始直後約2カ月間、ラッシュテスト(ピーク時テスト)およびヒートラン(連続性テスト)を実施することにより比較検証した。

 その結果、機能、性能、信頼性およびコストについてはほとんど差が認められなかった。最終的に、維持管理の容易性およびシステムの透明性の点でLinuxに優位性が認められたため、Linux(レッドハット社のRedHat AS2.1)を採用することとなった。また、Linuxを採用するサーバーは、Webサーバーとアプリケーションサーバーとし、DBサーバーについては、実績の観点からUNIXを採用した。

Linuxによるシステム構築時の問題と対応

 2カ月間のヒートランを実施したにもかかわらず、アプリケーション開発が佳境に入った段階でLinuxを採用したことによる以下のような問題点が明らかとなった。

  1. サーバーをフェイルオーバー可能とするために必要なNIC(ネットワークインタフェースカード)用デバイスドライバーが存在しない。
  2. RedHat AS2.1上でのSunVM(サンマイクロシステムズ社の提供するJava仮想マシン)とWebLogic(日本BEAシステムズ株式会社提供)の動作保証問題。
  3. 上記(2)の問題解消のため採用したBEA・WebLogic・JRockitが、高負荷状態が続くとガベージコレクション(断片化されたメモリ領域・バッファ領域の集約化)でハングアップすること。

 これらの問題に対して、各ベンダーに対応を依頼し、一つひとつ問題を解決していった。なかでも苦戦したのは(3)の問題で、海外ベンダーの開発部隊を日本に招へいして対策を協議し、問題の解決を図った。

 本プロジェクトでLinuxを採用しシステムを安定稼動させることができたのは、並々ならぬラッシュテストとヒートランの繰り返しによりシステムの安定性を検証したことによる。このように、オープンソースを採用する場合に重要なことは、綿密なテストと、発生するであろう種々の問題を解消するためにベンダー各社と連携したサポート体制を構築しておくことである。

Copyright (c) 2004 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission .

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▼OPINION:野村総合研究所

[山野修一,野村総合研究所]

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