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コラム
2004/03/16 00:00 更新

ITソリューションフロンティア:トピックス
オープンソースと知的財産権 ―衝突から調和への期待―

オープンソースの利用にともなって生じる法的リスクやその対応策についての議論が盛んになりつつある。なかでも知的財産に関する問題が関心を集めている。本稿では、そのなかでもとくに本質的な問題である特許に着目し、今後のソフトウェア技術の発展のために、オープンソースと特許がいかに協調していくべきかについて考察する。

オープンソースを巡る知財問題

 「UNIX のソースコードをLinux に不正に流用している」などを理由に、米国SCO Group社は2003 年にIBM 社を訴え、加えてLinux のユーザー企業1,500 社に対してライセンス契約の締結を求めている。自由を基本理念とするオープンソースといえども、知的財産権と無縁でいられないことを象徴する事件として注目を集めている。

 この事件で問題となっている知的財産は「著作権」や「秘密情報」であるが、これらの問題の解決とは別に、本質的なところでは「特許」について根深い問題が残っていることに注意しなくてはならない。オープンソースの開発と発展にとって、特許制度との調和が大きな課題となっている。

問題を内包するオープンソースの危うさ

 特許権は、排他力が強く、同じ技術を独自に開発しまたはそれを利用する第三者であっても排除できるという特徴を有する。結果として、独自に開発したソフトウェアを利用して行っている事業をも停止させ、また意図せずにした過去の利用行為に対しても損害賠償を請求し得るのである。この点で、そうした排他力をもたない著作権とは比較にならないほど強い権利である。言うまでもなく、権利者からすれば、特許のこうした力を思う存分活かして権利行使をし、研究開発投資の回収や自社商品の競争力確保を図るのはいたって正当な行為である。

 しかし一方、自ら生み出した技術をボランタリーに公開・開放しているオープンソースの開発者にとっては、特許は自分達には何の利益ももたらさず、不公平感を抱くことになりがちである。しかも、オープンソース開発は善意と互助の精神で行われることも多いため、先行する他社の権利を考慮して開発されることは稀で、潜在的に権利侵害の危険を内包している可能性も小さくない。もしもこれが表面化して、オープンソースの開発、利用について特許侵害の問題が頻発するようであれば、オープンソースの発展は急速に減速することにもなりかねない。

ソフトウェア技術の健全な発展への課題

 オープンソース支持者のなかには「知財無用論」を唱える者もいる。しかし、知財制度を敵視したところで問題が解決するわけではない。権利侵害があれば法的な責任を免れないことは、オープンソースであったとしても例外ではない。であるからこそ、いま大切なことは、健全なソフトウェア技術の発展とオープンソースの利用促進に向けて、権利の調整を図るために必要な道筋を整理することである。

(1)開発サイドの知財対応

オープンソースの開発者は、最低限の特許制度を理解し、侵害回避のための情報収集とその権利のクリアランスに向けた知恵を投入する努力が必要である。組織的にこうした動きが活発化していくことを望みたいが、無償で提供されるオープンソースについては限界があるだろう。

(2)ユーザーサイドの知財対応

オープンソースの商業的利用の場合は、権利侵害のリスクがあることを前提に、その採用において知財紛争への相応の対応力強化が求められよう。ソースが公開されているということは、同時に、技術を利用することにより生じるリスクなどについて責任負担が求められているということを忘れてはならない。

(3)インフラの整備

オープンソースを有償で販売する一部のディストリビューターが、第三者の知財侵害についての補償を提供するサービスを試みている事例がある。しかし、より大きな損害に対しては一定の限界があるのも事実である。特許侵害リスクについては特許権利者と利用者間でその調整が図られることが望ましい。

円滑な権利調整への課題と展望

 特許権を取得した者といえども、オープンソースの商用利用企業を相手どって特許侵害を追及するようなことはそう単純なことではない。特許はたしかに武器であるが、その使い方を誤り、執拗な権利主張をすればかえって反感を買い、円満なライセンス契約の機会を失うこともある。とくに、情報分野では権利関係が錯綜しがちであることや、権利の迂回も絶対的に不可能なものではないことから、権利行使のあり方は一層難しくなっている。オープンソースのユーザーを相手とするのであればなおさらである。

 このことから、権利を行使する側とされる側の双方にとって、円満なライセンス契約の締結を実現するためのガイドラインや仕組みが整備されることが必要となってくる。概ねの対価やライセンス条件が定まっていて、それに則って無理のない合意が得られるような環境を作ることは、特許とオープンソースの調和に寄与することになろう。

 従来、たしかに特許は相手を威嚇し、市場を独占するためのツールであった。しかし情報分野においては、必要とする者にいつでもライセンスを提供することでその活用を促進するという考え方のほうが、自らの投資を回収するためにも、またソフトウェア技術の発展にとっても有効であろう

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▼OPINION:野村総合研究所

[河野尚士,野村総合研究所]

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