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2004/04/16 00:00 更新

ITソリューションフロンティア:海外便り
欧州におけるアジャイル開発

アジャイル開発というシステム開発手法の新しい考え方が、既存のシステム開発の課題に対処するものとして日本でも注目されている。本稿では、アジャイル開発を成功に導くポイントを考察するとともに、欧州におけるアジャイル開発プロジェクトにおいてどのような取り組みが行われているかを紹介する。

アジャイル開発とは

 日本に限らず欧州においても、多くのシステム開発プロジェクトで予算やスケジュールの超過、機能不足、低品質、低い顧客満足度という問題を抱えるケースが少なくない。アジャイル開発(俊敏で柔軟かつ効率的な開発手法を指す)とは、既存の手法とは大きく異なるアプローチによりこれらの問題に対処するものである。NPO(非営利組織)のアジャイルアライアンスは、その考え方を以下のようにマニフェストという形で宣言している(参照)。

  1. プロセスやツールよりも人と人の相互作用を重視
  2. 包括的なドキュメントよりも動作するソフトウェアを重視
  3. 契約上の交渉よりも顧客との協調を重視
  4. 計画に従うことよりも変化に対応することを重視

 アジャイル開発では詳細な仕様書によってではなく、顧客と開発者、開発者どうしの密接なコミュニケーションによって、システムに対する共通認識が速やかに形成される。また顧客には開発プロジェクトの早い段階で動作するソフトウェアが提供されるため、システムのイメージがつかみやすいというメリットがある。開発側にも、システムに対するフィードバックを早期に得てシステム全体の機能と品質を向上させることができるというメリットがある。

アジャイル開発を成功させるポイント

 アジャイル開発は上記の考え方に基づく開発手法の総称で、1990年代後半から注目され始め、おもに欧米でシステム開発に適用されてきた。また日本でも近年アジャイル開発の事例が紹介されるようになってきた。アジャイル開発は新しい手法であるため総体的にはまだ事例は少ないが、開発を成功に導くためには以下の4点が重要であると考えられる。

(1)コミュニケーション

 アジャイル開発の成功に最も欠かせないのは、顧客と開発側のコミュニケーションである。そのため、ビジネスサイドとシステムサイドとの間で絶えず十分な量と速度のコミュニケーションが行えるための枠組みを構築することが重要である。また、システム開発は顧客との共同作業であることを顧客側と開発側の双方が認識する必要がある。

(2)フィードバック

「システムの提供→顧客からのフィードバック→システムの改善」というサイクルは、アジャイル開発の成功に欠かせないもうひとつの要素である。このサイクルを失うとシステム機能の拡張と品質の向上が停止してしまう。つねに顧客からのフィードバックをくみ取り、次につなげていく必要がある。また各々のサイクルを十分速いスピードで完了させてシステムの新陳代謝を高めることも重要である。サイクルはシステム機能の規模にもよるが、数週間程度が適切とされている。

(3)変化への対応

 要件は変化するものとして扱うことが必要である。新しい要件に対応することにより、顧客側から新しい視点でのニーズを引き出すことができる。この際システムに不具合が起きないように要件を管理することが重要であり、より高度なプロジェクトマネジメントが必要とされる。

(4)チーム編成

 アジャイル開発は顧客と開発メンバーのコミュニケーションを開発のより所としている。そのため、個人の能力やチーム全体としての能力がより重要視される。したがって、各メンバーの資質と役割を理解して要員計画を立てることが重要である。

欧州におけるアジャイル開発の事例

 アジャイル開発における取り組みの実際を、欧州の事例によって紹介する。欧州の顧客は一般に負担を回避しようとする傾向が強いので、開発担当者は、開発プロセスに関わることは顧客自身の利益につながることをつねにアピールし理解を得るようにしている。また、顧客との距離を近くして頻繁に連絡がとれるように、開発メンバーのほぼ全員が主要ユーザー部門のすぐ脇に席を置いている。要員については、欧州では日本と比べて人材の移動が盛んであり、プロジェクトの立ち上げ時点でスキルを積んだ要員を確保しやすいという利点がある。とは言うものの、要員の採用と教育を注意深く行って、全メンバーが顧客とのコミュニケーションからコーディングまでを一定の品質以上で行える体制をとっている。

 なお欧州では、顧客側システム部門によるインハウス開発という形態をとっており、継続的にシステムのメンテナンスと拡張が行える体制になっている。ただし、期間限定型の開発やパッケージによるシステム導入にアジャイル開発を適用する場合には、要件変化に対応する工夫が必要となっている。

 上記の欧州の事例であげた取り組みには、日本での開発にそのまま適用できないものもあると思われる。日本でアジャイル開発を行う際には、文化や環境の違いを考慮し、日本に合った開発手法を確立していくことが重要であろう。

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▼OPINION:野村総合研究所

[塚原尚彦,野村総合研究所]

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