CEDEC 2024
“AIキャラクターによるゲーム実況”の裏側 バンダイナムコ研究所が解説 AI生成コンテンツの“5つの落とし穴”とは(3/3 ページ)
落とし穴4 表現の多様性:Chain of Thoughtの応用
4番目の課題は多様性の確保だ。LLMは同じような表現やフレーズを繰り返し使用する傾向があり、これがゲームコンテンツの単調さにつながる可能性がある。この問題に対しては、生成パラメータの調整やプロンプトの工夫、さらには「Chain of Thought」(思考の連鎖、CoT)と呼ばれる手法を用いることで、より多様な出力を得られるよう取り組んでいる。
Chain of Thoughtは複数のAI(LLM)を連携させて行うアイデア創出と評価の方法だ。まず、1つのLLMが大量のアイデアやたたき台を生成する。次に、別のLLMがこれらを評価し、重複を避けつつ多様性を確保するよう修正することで、表現のバリエーションを増やすという仕組みだ。
落とし穴5 キャラクター性の維持:RAGの活用
最後の課題は、キャラクターらしさの維持だ。ゲームに登場するキャラクターの個性や設定を正確に反映したテキストを生成することは、LLMにとって難しい課題の一つである。これに対してバンダイナムコ研究所では「RAG」(特定のデータベースをAIに参照させ、回答精度を高める手法)を採用している。同社では、キャラクターに関連する情報を事前に用意し、それをLLMに参照させることで、より設定に沿ったテキスト生成を可能にしている。
しかし、RAGを使用する際にも課題が存在する。例えば、RAGを使うと口調のブレが生じたり、検索されたせりふが必ずしもキャラクターの特徴的な話し方を反映しなかったりする場合がある。これに対しては、テキストを検索用のベクトルに変換するAIモデルを再学習させ、キャラクターの話し方と内容の両方を考慮した検索を可能にする対策を取っている。
また、RAGではメタ情報、つまりキャラクターに関する現実世界の情報(声優など)が生成テキストに含まれてしまい、漏えいするリスクもある。この対策として、RAG用の知識リソースを準備する段階で、フィクション情報とリアル世界の情報を分離し、フィクション情報のみを使用するように対策する必要がある。
RAGによる最後の課題として、知識のブレがある。LLMが与えられた設定を無視し、一般的な知識に基づいて回答してしまう問題だ。これに対しては、LLMにキャラクターを直接演じさせるのではなく「キャラクターのせりふを創作するシナリオライター」としての役割を与えるようプロンプトを調整する対策を取っている。
これらの話の締めくくりとして、頼さんは「今日紹介したベストプラクティスが必ず明日のベストプラクティスとは限らない」と述べ、技術の進化の速さを強調。その上で「開発者としてはAIのことを過小評価も過大評価もせず、自社にとってのベタープラクティスを目指して、落とし穴を恐れずに見極め続ける姿勢が大事」だと結論づけた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
FANZAで「成人向けAIコンテンツ制作サービス」開始 8月24日から先行体験
-
2
「ほんだし」のラベルがAIでぐちゃぐちゃに…… 味の素、公式Xの投稿画像について謝罪
-
3
Anthropic、「ミュトス 5」を脆弱性スキャンに開放──「Claude Security」経由でEnterprise顧客が利用可能に
-
4
「たった14人」の挑戦から7兆円の逆転劇へ ラピダス小池社長の「TSMCとは戦わない」2ナノ半導体の勝算
-
5
「孫さんはOpenAIだが、僕はAnthropic」 SBI北尾会長が語る「AI投資5億円→増収27億円」の勝算
-
6
エイベックス松浦会長、noteの“バズり記事”を「ほぼAI」で作成 「僕の60年分のデータを入れた」
-
7
「Gemini Notebook」で利用者10倍 シニア社員をAIヘビーユーザーにした首都高の考え
-
8
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
9
現役組み込みエンジニアがAIを業務利用して分かったこと――期待と限界と現実解
-
10
中国の人型ロボ、自然すぎる歩き方に「中に人いる?」と話題に→開発企業が“中身”を公開、結果は……
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR