未来のコンピュータ、本命は“脳組織”? iPS細胞から作り出された「BPU」とは何か(1/3 ページ)
人工で作った“小さな脳”を、新しいコンピュータとして利用できないだろうか。ソフトバンク先端技術研究所と、東京大学生産技術研究所の池内与志穂准教授らが共同で進める「BPU(Brain Processing Unit)」構想は、まさにその野心的なアイデアを形にしつつあるプロジェクトだ。
人間の脳は、わずか20Wほどの消費電力で高度な思考や未知環境への適応・学習を可能にする。この“脳の仕組み”を人工的に再現するのは困難だが、本物の脳を使うというアプローチならば、従来のCPUやGPUとは異なる学習効率や柔軟性を得られるかもしれない――それがBPU構想の核心である。
ここでカギとなるのが「脳オルガノイド」だ。iPS細胞から作り出した小さな脳組織で、神経細胞やグリア細胞が電位を発し、ネットワークを形成する。これに電気や光刺激(入力)を与え、反応(出力)を観測して制御するのがBPUの基本コンセプトだ。
研究チームは、Flappy Bird風のゲームを脳オルガノイドに解かせ、20分ほどの学習で成功率が1.5倍向上した例や、複数オルガノイドをつなぐ“コネクトイド”で外部刺激の分類精度を高める試みを公開している。
ソフトバンク先端技術研究所の湧川隆次所長は「これはあくまで2050年以降を見据えたビジョン開発。しかし、脳独自の省エネ学習能力を情報処理に応用できれば、量子コンピュータ(QPU)とは別の軸でブレークスルーを生むかもしれない」と語る。一方で、脳オルガノイドは生体由来ゆえ培養環境も厳しく、大規模化や倫理面でも課題が山積する。“赤ちゃん脳”と呼ばれる現状では意識の問題は程遠いが、少しずつ学習する兆しがあるからこそ、将来的な展望を描けるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「FDE」は常駐SEのすげ替えなのか “人月商売の死”を打破したい国内SIer、打開策は意外なところに?
-
2
引退した人型ロボ、“溶けた鋼の海”に沈む アーノルド・シュワルツェネッガー氏が提案 米企業が動画公開
-
3
総額2.3兆円、千葉市に巨大な「AIデータセンター」建設へ 発電大手JERA参画の“ドリームチーム”、勝機どうつかむ?
-
4
「まず、その業務なくせない?」 野村不動産HDが経理DXで「年間9000時間」を生み出した“引き算”の考え方
-
5
「AIを使えば早くできるでしょ」と言われがち――エンジニアを困らせる"勘違い"の正体とは?
-
6
「Gemini 4 Argon」とは 性能評価にみるAstra/Fable/Opusとの違い 一般提供は年内?
-
7
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
8
Rails作者DHH「Pencils Down、もう手でコードは書かない」 それでもソフトウェア開発の未来は明るい理由
-
9
Autodesk、FusionなどのAI機能を発表 設計作業の自動化や設計資産の再利用を支援
-
10
「デジタルスレッドとAIで動かす」 富士ソフトがスマート工場で10%成長狙う
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR