生成AI×フローでレポート作成業務を半分以下に LayerXの“企業向けAIワークフロー”を使った三井物産クレジットコンサルティングに聞く(2/2 ページ)
AIを業務に組み込む上で重要なのが、AIの出力結果を人間がレビューする仕組みだ。Ai Workforceでは、AIが処理した結果と参照元のドキュメントを左右に表示し、人間が必要に応じて修正できる専用の画面を提供している。この修正内容はデータベースに記録され、次回以降の精度向上に活用される。
「業務マニュアルを最初から100%完璧に作るのは無理なので、70~80%でリリースして、実際にAIが間違った結果を出したら『違う、こういうケースではこうしてください』と教えることで、業務マニュアルがアップデートされる仕組み」(中村氏)
「完全にド文系」と自称する瀧澤氏。「コードとかは全くわからないんですけど、なんとなくできちゃう」とAi Workforceを評価する。
結局人間がチェックするなら作業負荷はあまり変わらないのでは? そんな質問に中村氏は「AIは人に比べてミスのばらつきが少なく、同じパターンで間違いやすいため、チェックする側もポイントを絞れる」と説明。また、「人間が間違えると『何度も言っているだろう』と腹が立ちますが、AIならしょうがないという気持ちになる」──そんな心情変化もあるという。
業務効率化の成果
Ai Workforceの導入により、レポート作成にかかる時間は「物によるが、半分になったり、もっと短くなったりしている」という。
「作業そのものの削減時間もありますが、それを他のことに当てられる、もっと生産的なことに時間を割けるという、単純な削減時間以外のメリットも得られている」(瀧澤氏)
課題と改善プロセス
すべてがうまくいっているわけではない。現在も試行錯誤が続いているという。
「大きく分けて2つの処理がありまして、一つは定性的なものを取ってくる部分は割とすんなりいきました。もう一つは決算書の情報を厳密な基準で取ってくる部分で、そこがまだうまくいっていません」(瀧澤氏)
この課題に対して、LayerXとMCCは共同で改善を進めている。具体的には、プロンプトの改良やAIのフィードバックプロセスの最適化などだ。
「基盤モデルの性質として仕方のない部分もあるのですが、それ以外については、人間のミスは疲れていたりなどさまざまな原因で生まれるのに対し、AIの場合は原因が明確なので、間違いやすいパターンを特定して対応していけます」(中村氏)
AI活用の今後をどう見る?
MCCでは今後、国内企業の分析にも同様の仕組みを適用していく計画だ。さらに、クライアント企業の業務効率化にもAi Workforceを活用したいという。
「当社が業務効率化したような悩みは、どの会社も持っていると思います。大量のドキュメントをAi Workforceに突っ込んで、所定のフォーマットに落とし込むという部分を、当社のクライアントに対してサービスとして提供できればと思っています」(瀧澤氏)
LayerXの中村氏は、AI技術の進化に伴い、より大きなビジネスインパクトを期待している。「OpenAIのo1モデルをはじめとする長く推論するモデルの普及」「ドメイン固有の推論能力の向上」「より高度な推論のための大規模投資」という3段階の技術進化を想定。
「長く推論するモデルを簡単に使える状況はすぐに来る段階と思います(※)。次に、いまのそうしたモデルは数学やプログラミングといったオープンなデータから学習しやすい領域で性能を発揮していますが、与信の業務や日本の製造業といった特定ドメインでの推論能力が伸びているわけではない。そのようなドメインごとの推論性能を上げていくことも考えられます」(中村氏)
※インタビューは2025年1月8日に実施
「そして、o1以降のパラダイムは『事前学習でなく毎回の実行にリソースをかけて実行する』というもの。ですので、お金をかければ2時間の業務どころか1カ月や半年かかるような知的な業務の課題も解決できる可能性があります。その単位で解決できるなら企業としては何百万円使ったっていいわけです。そういう使い道があり得るので、一度の実行にそれだけのコストがかかるようなものを使っていただくのが、次の大きなプロジェクトと考えています」(同)
AIによる業務効率化は「夢を追いすぎると前に進まず、やりやすいところから始めても次の展開がなくなる」リスクがあると中村氏は指摘する。MCCの事例は、具体的な業務課題から始め、段階的に拡大していくという「理想的なステップ」の一つかもしれない。
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