セミの“大合唱”から、鳴いている種類を特定するAI カエルやコオロギにも応用可能 国立環境研が開発
国立環境研究所は8月25日、セミが同時に鳴く“合唱”から、種類を識別するAIを開発したと発表した。コンピュータ上で数千パターンの仮想のセミの合唱を作成し、AIの学習に活用。コオロギやカエルなどの合唱にも応用でき、生態系のモニタリングに役立つという。
同研究所によると、AIで野生動物の鳴き声を解析する試みは、これまで鳥やコウモリを中心に研究が進んできた。一方、セミやコオロギなどの昆虫に関しては、複数種類の鳴き声が重なり合う合唱が発生。音声解析には、種類や個体数によって変化する無数の合唱パターンを学習したAIが必要だが、こうした学習データを野外で録音するには多大な労力が必要なため、研究が遅れていたという。
そこで今回の研究では、音響シミュレーションソフトウェア「Pyroomacoustics」を利用し、コンピュータ上に仮想の録音環境を構築。収集したセミの鳴き声からさまざまなパターンの合唱データを制作し、AIの学習データに活用した。
具体的には、同研究所が位置する茨城県つくば市で一般に見られる5種類のセミ(アブラゼミ・ミンミンゼミ・ニイニイゼミ・ツクツクボウシ・ヒグラシ)の鳴き声を、YouTube動画の音源や野外録音を組み合わせ、1種類につき約10音源収集した。録音した他の昆虫の鳴き声や車の走行音、雨風の音なども用意し、20秒間のセミの合唱3000パターンをコンピュータ上で作成。これを活用し、データから特徴を抽出・分類するアルゴリズム「畳み込みニューラルネットワーク」(CNN)を訓練した。
1回の合唱に最大20のセミの音源を含めて訓練した結果、識別の適合率と再現率を示すF1値で平均83%を記録。合唱に1つのセミの音源のみを利用した場合に比べて22ポイント性能が向上し、「実用的に十分な精度を達成した」(同研究所)。実際にこのAIを活用し、同研究所構内で、2024年7月から9月まで連続で録音したセミの鳴きを解析。鳴き声が季節によって変化するほか、1日の中でも時間的なパターンがあると確認できたとしている。
同研究所は、今回のAIの開発手法について、コオロギやキリギリス、カエルなど、セミ以外の合唱する生物の鳴き声識別にも応用できると説明。「従来、AIによる自動識別が困難だったこれらの生物に対しても高精度な自動観測が実現されれば、音による効率的かつ持続的な生物活動の観測が可能となり、気候変動などによる生態系への影響評価に大きく貢献することが期待される」(同研究所)
今回の研究は、同研究所生物多様性領域の岡本遼太郎研究員が主導した。研究成果は、7月9日に刊行された生態学分野の学術誌「Ecological Informatics」に掲載。
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