Innovative Tech(AI+)
「生成AIはむしろ仕事を増やす」──米UCバークレーの研究者が発表 AI依存は現場で何を引き起こす?
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2019年の開始以来、多様な最新論文を取り上げている連載「Innovative Tech」。ここではその“AI編”として、人工知能に特化し、世界中の興味深い論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X: @shiropen2
AIと機械学習の進化は、本来、定型業務から人間を解放し、より付加価値の高い創造的な仕事に集中させるためのものだと信じられてきた。しかし、米UCバークレーに所属する研究者らの調査結果では、AIが仕事を減らすどころか、むしろ仕事の激化を招いていることが分かった。
研究者らは、従業員約200人の米テクノロジー企業で8カ月にわたり生成AIが働き方に与えた影響を追跡した。週2日の現地観察と40件以上のインタビューから浮かんだのは、AIが仕事を軽くするどころか強度を増しているという現実だった。しかも経営者が押し付けたわけでもなく(ただし、AIツールのエンタープライズサブスクリプションを提供していた)、各従業員が自主的に行っていた。
変化は3つの形で現れた。1つ目は、業務範囲の拡大だ。AIが知識の穴を埋めてくれるため、プロダクトマネージャーやデザイナーがコードを書き、リサーチャーがエンジニアリングを引き受けるといったことが日常化した。AIがその気にさせ、小さなやってみようが積み重なり、以前なら外注や増員で対応していた仕事を個人が吸収するようになった。
しかしその副作用として、例えばエンジニアたちは、同僚がAIの力を借りて書いた不完全なコードのレビューや修正に追われるようになった。こうした負荷はSlackのやりとりやちょっとしたデスク越しの相談として非公式に発生し、じわじわと積み上がっていった。
「休憩が休憩として機能しなくなっていた」
2つ目は、仕事と非仕事の境界が曖昧になったことだ。AIは始めることのハードルを極端に下げるため、昼休みや会議中、ファイルの読み込み待ちといった隙間時間にプロンプトを打つ行為が常態化した。退社前に最後に1つだけとプロンプトを送り、自分が席を離れている間にAIに作業させるという人もいた。
プロンプトを打つという行為が会話に近い感覚であるため、それが仕事をしているという自覚なしに行われる。結果として、夜や早朝にまで仕事がにじみ出していく。多くの従業員が、振り返ってみて初めて、休憩が休憩として機能しなくなっていたことに気づいたと語っている。
3つ目は、マルチタスクの増加だ。自分でコードを書きながらAIに別バージョンを生成させたり、複数のエージェントを並行して走らせたり、長らく後回しにしていたタスクをAIに任せて復活させたりと、常に複数の作業を同時進行する新しいリズムが生まれた。自分がもう一人いるかのようにAIがバックグラウンドで処理してくれるからだ。
AIパートナーがいるという感覚が推進力になるが、実際には注意の切り替えが絶えず発生し、AI出力の確認作業が積み重なり、未完了のタスクが増え続ける。やがてこのリズムはスピードへの暗黙の期待を生み出し、AIによって時間が節約されたはずなのに、以前より忙しいと感じる従業員が増えた。
この3つの変化は、AIがタスクを加速させ、加速がスピードへの期待を高め、期待がAIへの依存を深め、依存が仕事の量と密度をさらに増やす。しかも従業員はこうした追加の努力を自発的にしているため、リーダーや経営側からは問題が見えにくい。
短期の生産性向上が仕事から離れにくくなるという感覚を増大させ、静かな認知疲労の蓄積による仕事の質の低下(判断力の低下やエラーの増加など)を招く。それらは、燃え尽き症候群のリスクや離職率の増加につながる可能性がある。
研究者らは対策として「AIプラクティス」の導入を提唱する。AIの使い方と止めどきについて、組織として意図的にルールを定めておこうという考え方だ。まず、立ち止まる仕組みを作る。重要な判断の前に確認のステップ(反論を1つ入れるなど)を挟み、スピードに流されるのを防ぐ。次に、仕事の流れを整える。
AIの出力が出るたびに反応するのではなく、通知をまとめ、区切りのよいところで確認することで集中を守る。最後に、人との接点を守る。AIと一人で向き合う時間が長くなると視野が狭まるため、同僚との短い対話や振り返りの場を日常に組み込む。これらを対策として掲げている。
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