個人情報保護法、そして日本版SOX法などを背景に、各社が機密文書の保管法を模索している。これまでの大企業向けの一元管理されたシステムに続き、中小企業でも導入できる安価な電子キャビネットが現れ始めている。
この数年、社内の文書の扱いが見直しを迫られている。大きな転機となったのは、個人情報保護法、そして日本版SOX法だ。社内の機密文書を安全に保管するためのキャビネットは、当初大企業を中心に導入が進んだが、「今年はもう大企業だけではない。中小の企業からも引き合いが来ている」(イトーキ)という。
東京・ビッグサイトで3月7日に開幕した「SECURITY SHOW 2007」の岡村製作所ブースでは、新製品の「パーソナルロッカー」が展示されている。
従来の電子ロックキャビネットは、別途サーバを置いて権限などを一元管理できる大企業向けが多かった。同社のパーソナルロッカーは、キーとしてFeliCaを使いつつ、手軽さを追求した製品だ。
各ロッカーには、FeliCa読み取り機とボタンが付いている。荷物を入れた後、ボタンを押してFeliCa読み取り機にFeliCaをかざすと、そのFeliCaが登録されロックされる。FeliCaは事前登録の必要がなく、社員証やSuica、おサイフケータイでもかまわないところがポイントだ。開けるためには同じFeliCaをかざす必要があるが、次に使うときには別のFeliCaでもかまわない。
「登録も不要。単三電池で動作するので配線も不要」だと岡本製作所。シフト制を敷いている部署や、フリーアドレスのオフィスにも活用できる。ロッカー内部にはUSBポートも設けられており、内部的に保存してあるログを読み出すこともできるようになっている。
イトーキが出展しているのは、既存のキャビネットを後付けで電子化してしまうシステムだ。キャビネットが備えるラッチ(取っ手部分)を覆うように「カバーロック」を貼り付け、このカバーロックを電子的に施錠する。「イトーキ製だけでなく、他社のキャビネットにも取り付け可能。手軽さを求める声が多くなっている」(同社)
カバーロックを解除するには、専用のメモリキーが必要。普段メモリキーを置いておく「キーポケット」をPCにつなげ、まずPCがFeliCaなどのICで個人を認証し、権限情報をキーポケットに書き込むという手段を取ることで、メモリキーの使い回しを可能にしている。
メモリキーは充電池を内蔵しており、電子錠の電源として使われるため、カバーロック自体は電池がいらない。また開錠時にはメモリキー内にログを取り、キーポケットに戻した際にログがPCに保存される。メモリキーを介在させることで、キャビネット自体の改造はシンプルかつ安価に済ませるという仕組みだ。
参考出展として、メモリキーとなるICチップを身につけていれば身体を通して指先に信号が伝わり、開錠が行われる「手ぶら認証」も注目を集めていた。人体を使った接触型のシステムだ。また、電子錠ではなく「テンキータイプ」も参考展示。既存のキャビネットを暗証番号だけで開け閉めできるようにするものだ。「キャビネットの鍵の管理は大変だし、電子式はステップが多くて面倒というニーズが一部から出ている」ために開発を始めたという。
大企業向けのセキュリティキャビネットから、中小企業でも導入できる安価な電子キャビネットへ──。FeliCaに代表される非接触ICチップの普及により、オフィスでも“鍵の管理”が時代遅れになり始めている。
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