何かをしながら何かする──「ながら学」上級編は、正しい“ながら”を考える。3つのルールと9つのコンポーネントの組み合わせで、どれだけ生産性があがるのだろうか──。
何かをしながら何かする──入門編、中級編とお伝えしてきた「ながら学」。今回は上級編である。いま一度、ながらの良し悪しを考えてみたい。まず、間違った「ながら」だが、居眠りし「ながら」や携帯電話や、飲酒し「ながら」の乗り物運転、トイレや歩き「ながら」の喫煙などである。子供を自動車に残しながらパチンコをする行為は、最悪の悲劇を生んでいる。このように間違った「ながら」は、とんでもないことになる。
正しい「ながら」のルールと種類を身に付けておくことが大切だ。まずは、「ながら」のルールを確認する。
まず(1)と(3)はいうまでもない。(2)については、仕事をしている間は、仕事を犠牲にしてはいけないということだ。バランスの問題でもある。メインの効果が高ければ、組み合わせた作業の効果が多少低くなっても、許されることがある。
そうした「ながら」の要素となるコンポーネントを一覧表にした。参考にしてほしい。
NO. | 種類 | 例 |
---|---|---|
1 | 仕事・思考・学習系 | 仕事しながら……、考えながら……、勉強しながら…… |
2 | 体力系 | 歩きながら……、フィットネスしながら……、自転車に乗りながら…… |
3 | いやし系 | 散歩しながら……、酒を飲みながら……、風呂に入りながら……、眠りながら…… |
4 | 飲食系 | 食事をしながら……、飲みながら…… |
5 | 時間待ち系 | 一定の間隔でもらえるもの(お年玉やボーナスなど)をイメージして「早く時間よ過ぎろ」と願いつつ……、退屈な仕事が完了することをイメージしつつ…… |
6 | 手持ちぶさた系 | トイレしながら……、電車で車内広告を眺めながら…… |
7 | 娯楽系 | テレビ見ながら…… |
8 | 情報系 | ネットを見ながら……、ニュースを見ながら…… |
9 | 会話系 | 話ながら、携帯電話しながら |
「ながら」は流行と技術で進化していく。ただし、CPUがデュアルになっても、脳みそは1つだけ。デュアルコアがあってもデュアルブレインはない。思考系と思考系では干渉が生じる可能性がある。そうしたことを念頭に置きながら、コンポーネントを組み合わせていこう。
実際にどのようなことが“正しいながら”になるのか。二宮尊徳が薪を運びながら本を読んでいたのも、薪運びしながらという「仕事系」、本を読みながらの「思考系」、退屈な仕事を進めつつという「時間待ち系」といった組み合わせかもしれない。
駅で待たされている間、キオスクで新聞や文庫のタイトルを眺めながら、お茶を飲むのも「時間待ち系ながら」の典型だ。さらに10分もあれば予定を見直し、思いついたアイデアを書くこともできる。携帯で必要な会話をして、後はメールを続けることも可能だ。ポケットから文庫本を出すこともできる。会話の単語帳を出して勉強はどうだろうか。
筆者は泳ぎながら音楽が聴ける完全防水のラジオやMP3プレーヤーが欲しかった。音楽を聞きながらであれば、泳げる距離は3倍になりそうだ。
いつだったか、タクシーの運転手で客待ち時間を、司法試験の勉強に充ててきた人に出会った。筆者はたまたま第二次論文試験の結果の日に乗車した。こちらが尋ねもしないのに、「合格しましたよ」と運転手は上機嫌だった。他人事ではあったが、「ながらの完成形だ」と感慨深かった──。
ながらコンポーネントの組み合わせで、パラレル仕事術の達人に――。
前回、読者のみなさんから募集しました「ながら」ですが、続々応募がありました。びっくりしたのは、風呂場でのPC作業です。写真入りで臨場感もあります。トイレで勉強という「ながら」もありました。トイレの扉の裏に貼る暗記物。筆者もやっていました。「覚えるまでは、出さない、でない、出てこない」。そんな覚悟で、考えに考えていたものです。
ご応募いただいた方々には、抽選で8月末に発売予定の2008年版「ポケット・アイデアマラソン手帳」(技術評論社)をお送りいたします。2007年版同様、1000件の発想を書き入れることが可能です。
連載・樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」では、皆さまからの面白い“ながら”アイデアを募集します。ご応募いただいたアイデアで、優れているものは記事中でご紹介するほか、2008年版「ポケット・アイデアマラソン手帳」(技術評論社、8月末発売予定)をプレゼントさせていただきます。奮ってご応募ください。
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1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら。
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