第6回 楽しい出来事か、目を覚ましてくれる出来事か「成功の時期」と「成長の時期」

通常はpleasantとunpleasant、つまり楽しいと嫌が対になります。でも、「楽しい出来事」とawakening happening、つまり「目を覚ましてくれる出来事」しかないと考えてみたらどうでしょう?

» 2007年08月02日 11時23分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 私は、世の中には「pleasant happening」か「awakening happening」しかないと思っています。

 pleasant happeningというのは楽しい出来事ですね。普通は、楽しい出来事と嫌な出来事が対になります。仕事がどんどん来たら楽しいし、仕事を切られたら嫌な出来事だし。報酬が倍になれば楽しいし、報酬がカットされたら嫌だ──というように、通常はpleasantとunpleasant、つまり楽しいと嫌が対になります。でも、私はそれを対にしません。私は世の中に、楽しい出来事とawakening happening、つまり目を覚ましてくれる出来事しかないと考えます。

 目覚まし時計がありますね。目覚まし時計は自分にとって敵対していますか? 自分に悪さがしたくて朝の6時半に鳴っていると感じることがあるでしょうか。「なんで鳴るんだよ!」と思うことはあるかもしれませんが、その目覚まし時計は誰がかけているのでしょう。自分ですね。

 鳴った瞬間はムカついたり腹が立ったり、ショックだったり悲しんだりするかもしれません。でも自分が朝しっかり起きたいという理由でセットするのです。それが例えば仕事にいかなきゃいけないから起きたいのか、ジョギングしたいから起きたいのか、散歩したいから起きたいのかは人それぞれですが、自分でセットするんですね。それと同じように、自分がこんな人生を生きたいな、という無意識の思いはたぶんあって、それに基づいて目覚まし時計がセットされているはずなのです。

 目覚まし時計って、朝、眠ければ眠いほど辛いし、不快だし、ムカつくし、壊してやりたいくらいですね。なくなればいいのにと思いますよね。少なくとも、もう少し静かにしてほしい。ところが、6時半にセットしていて6時頃眼が覚めたらどうでしょう。鳴る必要がないですね。憎いでしょうか。6時半にセットしていたのに6時20分に起きてちゃってコンチクショーとはなりませんよね別に憎くとも何ともないはずです。

 結局、私は世の中にはすごくハッピーな出来事か、今ここでちゃんと目覚めるように起こしてくれる出来事しかないんだ、と考えるのです。

 pleasant happeningは、どちらかというと「成功の時期」に該当するような出来事だし、awakening happeningは「成長の時期」に該当するような出来事なのです。これにはもちろん、数年の周期があるものや、1日の中であるものがあります。すべてがハッピーになるような出来事、というのも本当はあり得るのですが、それは目覚ましの力を借りなくても起きられるときだけです。宇宙か神様か、なんだか分からないけれど、大きなものがちゃんと「朝だよ、起きなさいよ」と起こしてくれる。そして、目覚ましのベルを止めたとしても、またやってくれる。

 この考え方はちょっとスピリチュアルなので違和感を持つ方もいるかもしれません。でも、カウンセリングやコーチングをやってい中での1つの世界観として、私はそんな風に物事を考えています。私自身も、毎日がいい感じで進むと、自分では気をつけているつもりでも調子に乗って、天狗になったときにポキンと鼻を折られるときがあります。折られて初めて「ああ、そうか。天狗になっていたんだ」と気が付くのです。折られていなかったら、たぶんどんどんヤバイ方向に進んでいたはずなんですね。「あれぐらいで折られていたから、また謙虚さを取り戻せたんだ。これからはもうちょっと大事にしていこう」と感じられます。

 企業でも同じようなことがあります。「売れるんだからバンバン出せばいいんだよ。不良品でもあいつら分からないよ」みたいにやってしまうと、ある時パチッと眼を覚ましてくれる出来事がある。そこで眼を覚まして「やっぱり1人1人のお客さんを大事にしよう」となった会社は立ち直ります。でも、それも1回じゃないですね。何年に1回、何年に1回と目を覚ましながら、そのときそのとき気づいている会社は、30年、50年経っていい会社になる。でも目を覚まさずに、「いいよ、いいよ、まだ分からないから」──みたいになってしまうと破滅です。人間もそうかもしれませんね。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本相武(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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