第1回 「指示」「放任」「傾聴」「対話」 マネジメントの4タイプ今さら聞けないマネジメント&コーチングの基本(3/4 ページ)

» 2008年03月17日 16時19分 公開
[平本相武(構成:房野麻子),ITmedia]

 ところが、中長期的に見ると、コーチングは傾聴型よりも、指示型よりも時間はかかりません。コーチングの場合、質問は意図を持ってピンポイントでするため、傾聴型より話を聞くのは短時間で済みます。また、言われたままのことをする指示型に対して、コーチングは部下が自分で考えるようになり、そのうち自分で自分に質問できるようになります。最初のうちに時間をかけてでも、このスキルを身に付けることができると、部下は、うまくいかなかったり迷っていたりするところだけを上司に相談するようになるので、最終的には指示型よりも時間がかからなくなるのです。

成果が出るのは「対話」>「指示」>「放任」の順。「傾聴」は未知数

 次に、成果が上がるかどうかの観点で見てみます。できない部下に放任型で対応すると、成果は全く出ません。「キミに任せるよ、信頼しているよ!」といっても、部下としては「全然分からないのに教えてくれない」ということになってしまいます。

 反対に、できる部下に対しては放任型でかなりの成果が出ます。「来月までにこんな結果を出してね。僕のやり方じゃなくていいから」と任せると、部下は自分で工夫して取り組むので、結果が出ます。

 そこそこ成果が出るのが指示型です。能力の範囲で指示されたことをやるので、できる部下もできない部下もそこそこの成果を出します。

 慣れてくるとたいていの上司が、できない部下には指示を出し、できる部下は任せるという傾向になります。ところが、そうすると、できる部下が寂しさを感じることがあるのです。「上司はできない部下とばっかり一緒に動いている。私はこんなにがんばって結果を出しているのに、あまり注目されていない」と感じる。上司はあっぷあっぷなのに、部下は放っておかれていると感じる、そんな食い違いが出てきます。

 傾聴型に関しては、成果が出るかどうかは未知数です。カウンセリング・マインドを取り入れようとしている企業もあるようですが、あまり広まらないのは、成果が上がるとは限らないからだと思います。

 ただでさえ忙しいプレイングマネージャーが、時間を取って話を聞き、部下から感謝されても、「自分はカウンセリングをしに会社に来ているんじゃなくて、売り上げを上げるためにいるんだ」という気持ちになる。また、会社としても、上司がカウンセリング・マインドばかり学んで部下をいやしていても困ります。カウンセラーとして雇っているわけではなくて、売り上げを上げてもらうためですから。はっきり言ってあまり業績にはつながりません。

 そして、対話型のコーチング。この場合、できない部下に関しては、ある地点までは指示型よりも成果は低いです。しかも、コーチングで「キミはどうなればいい? 障害は何だと思う? できることは? できないことは?」などと部下に聞いているときに、部下の反応が良くないと、「この人はダメだ。自分がいちいち言ってやらないとダメだ」と思ってしまいます。これがつらい時期です。

 でも、2週間、3週間とやっているうちに、部下は「あの上司、ああいう質問をしてくるな」と、自分で考えるようになります。部下が自分で考えるようになると、指示型よりも成果が抜きんでる瞬間がやってきます。でも、多くの上司がここまで待てなくて、自分で手を出してしまうのです。

 できる部下に関しては、対話型のコーチングを使えば放任型より成果が出るのは間違いありません。対話の中で、部下は仕事のやり方のメリット/デメリットに気づかされます。何よりも、ほったらかしにされていない、注目されている、ということが分かります。

 また、上司にとっては時間が取れるのがコーチングのいいところです。対話型なら、指示型のように、できない部下をすべてチェックしないで済む分、余裕ができて、できる部下のために時間を取ることができます。

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