気分がふさぎがちで治らない。でも病院に行く一歩が踏み出せない――そんな「プチうつ」時に気軽に参加できるのが、一般向けに開放されたアートセラピーのワークショップだ。最近では企業研修でも導入されるようになったアートセラピーに迫る。
「参加したのはなぜですか?」。とあるアートセラピーのワークショップ参加者たちに聞いてみた。
すると「自分がなにをしたいのか知りたくて」(女性会社員)「なにか発見できるかもしれない気がして」(休職中女性)「なんとなく面白そうだから」(女性会社員)。それぞれの答えが返ってきた。
アートセラピー(アートワークセラピー)とは、絵画を描く過程を通して、心をケアする心理学療法だ。といっても、堅苦しいものではない。参加者はクレヨンや色鉛筆を使い、真っ白な紙などに絵を描いていくだけ。絵には「自分とその周り」「大切なもの」などテーマに沿って描く場合と、テーマを決めない場合がある。
このワークショップは、イベント盛りだくさんの朝EXPOの一環で行われた。講師を務めたのは、クエスト総合研究所の柴崎千桂子さん。
セラピスト暦15年の柴崎さんは、「本来アートセラピーは、精神医療のフィールドで誕生したもの。この場合、患者にもよりますが、セラピー開始から数カ月〜半年ほどである程度は心が回復します。(患者ではない)一般に開放しているワークショップの場合は、数回セラピーを受ければ十分です」と話す。
セラピーを進んで受けに来るのは、普通「少しエネルギーダウンした人たち」だという。筆者が眠気覚めやらぬ早朝の会場で目にしたのは、絵を描くにつれ徐々にエネルギーに満ちていく参加者たちである。
就業前にすでにクレヨンで手や顔が汚れてしまったのも意に介さず、みな楽しそうに無我夢中で手を動かしている。なかには指示された2枚だけでは足らず、3枚の絵を描いた人もいたほどだ。柴崎さんによると、「絵を勉強している人や上手な人は構図を考えがち。知識がかえって邪魔してしまう」という。
セラピー終了後に「参加してみて、どうでしたか?」と参加者たちに尋ねたところ、「楽しかった」と異口同音の答えが、はつらつとした笑顔と一緒に返ってきた。開催時間わずか1時間にもかかわらず、心のエネルギーが充足したという点では即効性があるように筆者には見えた。
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