疑問6 寄付した100円、本当にCO2削減に使われる?カーボンオフセットのカラクリ(2/2 ページ)

» 2008年07月16日 17時30分 公開
[豊島美幸,ITmedia]
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プロバイダーや企業を信じるしかない

 そもそもCO2削減プロジェクトで削減できたとされるCO2量は、確かな数字なのだろうか。

 環境省の安田氏によると、CO2削減量は「国連が認める第三者機関」が計測したりして検証するという。わが国では日本品質保証機構などが行っている。はじき出されたCO2削減量は、国やプロバイダーなどが権利としておカネで買う。

 こうして見てみると、CO2排出権の購入からカーボンオフセット完了まで、常に実行するのはプロバイダー。ということは、プロバイダーが白と言えば白、黒と言えば黒――という事態に陥ったりはしないだろうか。

 これに対して安田氏は「現時点ではプロバイダーや企業を信用してもらうしかない」と回答。カーボンオフセットを信頼性のある制度として確立させるため、環境省では今秋をめどにカーボンオフセットのガイドラインを完成する計画を立てている。現在プロバイダーや企業、識者など各関係者からヒヤリング中だという。

 カーボンオフセットは見えないし手触りもニオイもない。だからこそ透明性が問われる。この点は、カーボンオフセットの前提となる温暖化説に懐疑的な武田教授も同じだ。「環境にいい、とアピールするのは現時点では企業のブランディングになるから有効」としながら、企業は「ウソだけは絶対ついてはいけない」とくぎを刺す。

 凸版印刷では今後、プロバイダーが発行するカーボンオフセットの証明書を公開するなど、カーボンオフセットに関する動向をWebで報告していく予定だという。商品購入者は、こうした企業発の情報を元に、自分が寄付したおカネがCO2削減に使われたかもしれない――と“確認”することになる。

 ガイドラインなきまま見切り発車で始まったカーボンオフセット制度。その透明性を保証する術はまだないようだ。

 以上から、疑問6への答えはこうだ。

疑問6への回答

  • CO2削減プロジェクトにはすべて固有番号を設定している。
  • 固有番号を追えば、カーボンオフセットの流れはつかめる。
  • CO2削減した実際の量は、国連の認める第三機関が検証する。
  • 透明性を保障する枠組みは、まだない。
  • プロバイダーや企業がをマメに情報開示することが、透明性につながるかもしれない。

※「疑問7」へ続く――。
左から興津世禄氏、安田將人氏、岡田俊二氏

左から秋山大氏、ビル・スネイド取締役、武田邦彦教授

疑問を解く8人の回答者(五十音順)
名前(敬称略) 所属等 カーボンオフセットとのかかわり等 関連Webサイト
秋山大(あきやま・だい) 凸版印刷
パッケージ事業本部
ITソリューション部
Web懸賞キャンペーンを展開 カーボンオフセット・Web懸賞キャンペーンサービスのリリース
明日香壽川(あすか・じゅせん) 東北大学
環境科学研究所教授
環境問題等の研究ほか 地球温暖化問題懐疑論へのコメント
岡田俊二(おかだ・しゅんじ) 近畿日本ツーリスト
団体旅行事業本部カンパニー
教育旅行課長
カーボンオフセット教育旅行の提案ほか カーボンオフセット旅行のリリース
興津世禄(おきつ・せいろく) リサイクルワン
環境コンサルティング事業部
マネージャー
カーボンオフセット事業のプロバイダー リサイクルワン
児玉千洋(こだま・ちひろ) エコテスト
代表取締役
環境分析ほか エコテスト
武田邦彦(たけだ・くにひこ) 中部大学
総合工学研究所副所長
工学博士
環境問題等の研究ほか 武田邦彦(公式サイト)
ビル・スネイド カーボンニュートラル
(イギリスの企業)
取締役
世界初のカーボンオフセット事業のプロバイダー カーボンニュートラル
安田將人(やすだ・まさと) 環境省地球環境局
地球温暖化対策課
市場メカニズム室
排出量取引係長
CO2排出の整備ほか 2006年度の温室効果ガス排出量について
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